美容外科クリニックが 地方(宮崎)で成功するワケ? [JHM]
[ 2011/1/14 ]
口蹄疫で揺れた宮崎県、そこに追い打ちをかけるように「宮崎県のセールスマン」の名物知事が勇退したことは記憶に新しい。
そんな意気消沈の宮崎県ではあるが、美容医療の世界でいま最も勢いづくところがある。そこは城本クリニック宮崎院、その原動力はもちろん院長の堀 美慧医師である。宮崎市の中心地、橘通りの一角にある同院は、院長を中心に看護師、エステティシャン、受付のスタッフすべてを女性で占める。
「女性だからこそ、きれいになりたい、若返ってみたいという美容、アンチエイジングに対する願望に親身になって応えてあげられる」と話す院長。
美を求める患者でも美容整形の門をたたくには少し勇気が必要だろう。しかしそんな気持ちを同じ女性として共有しながら、一歩前に押してやるのだという。口コミから今では、ここ城本・宮崎院の敷居は低い。
宮崎市は人口40万余り、全国の中でも、総人口に占める女性比率が九州が高いことは意外と知られていない。中でも宮崎は人口比率で「女性上位」県の一角にはいる。そして宮崎市は、男性に比べおよそ10万人も女性が多い。しかし美容医療のコア・ユーザーとなる女性が多いとはいえ、都会と違いそこはやはり地方という集客上のハンデがある。
全国展開する城本クリニックの名称を掲げるが、経営母体は完全独立、いわゆるフランチャイジーである。
屋号などの版権そして施術に関わる主たる資材などは本部一括で共同仕入れを行ってもらい、宣伝広報も東京の本部が統括する。常に新しい治療メニューを全国に発信し、エリア毎の患者がそれぞれの城本クリニックに足を運ぶことになる。
こうしたフランチャイズの有利さをしっかりと享受しつつ、あとは「いかに受診した患者さんをリピータにしていくか、またご紹介の輪を広げていくか」が、腕の見せどころに。技術、雰囲気、サービスで高い満足度を患者に提供できるかがカギになるといえよう。
宮崎の県民気質を物語る方言で、「よだきい」という言葉だ。のんびり、ゆっくりと生きていくという意味だという。そしてのんびり気質ではあるが、新しいものにはすぐに飛びつく県民性でもあるという。欠点は「熱しやすく冷めやすい」こと、いわゆる九州人気質なのだろう。そんな宮崎で開業した堀医師のもとに当初は、美容医療の受診で入門コースともいわれる「医療用脱毛レーザー」に患者が集中した。当時としてこの施術が始まったばかりで、新しいものに飛びついた。しかしやがて“新しもの好き”が一段落して、今では受診のメインユーザーは、もっぱら多くの治療メニューを受けるVIPいわゆるリピーターが少なくない。農業県宮崎の土地柄、農家を営む人が結構多いという。また九州でも東部3県の大分、宮崎、鹿児島は、福岡など都会へは治療に行く人が少ないため、商圏は宮崎県外も含まれる。
「市場が小さい分、競合も少ない。皮膚科などのクリニックが一般診療の傍ら美容皮膚の治療を行うケースがほとんどで、美容外科、形成を専門にするクリニックはほんの数えるほどです。
だから当院はじめ専門クリニックに患者さんが集中するんです」
とはいえ安心はできない。自由診療ゆえ、保険医療と違い常に競争の波にさらされる。日々、安全で最良の治療術を行うために努力していることは言うまでもない。現在、同院の美容外科メニューは眼瞼形成、鼻形成、豊胸、脂肪吸引などの部分痩身、ワキガ・多汗症治療、スレッドリフティング、輪郭形成術、医療レーザーによる美肌、脱毛、刺青消し、さらには女性器の治療などほぼオールラウンドにこなす。そして都会と同じようにこうした需要は決して低くない。
たとえば、夫婦間のセックスレスで悩む女性のリクエストから、膣縮小術のオペをやることに。「女性は女性にしか話せないことがある。Vaginal Plastyはその好例でしょう」と堀医師。
堀医師、久留米大医学部卒業ののち外科医として勤務、そして美容整形へと進んだ。外科医として長時間の手術を数多く経験しただけあってご本人曰く体力には自信をみせる。何事にも挑戦していく積極果敢な姿勢が持ち味だという。
現状には満足せず、常に新たな治療法を学び習熟することが信条でもある。
”論より証拠、理論よりも実践”を貫くことから、暇さえあれば、最新の美容医療を求めて実技講習そして海外でのトレーニングに参加する。昨春発足したJAAS日本アンチエイジング外科・美容再生研究会が開催するLiveSurgeryコースにも意欲的に参加、宮崎から足を運ぶ。
ソウルで開かれた下眼瞼の脱脂術を学ぶLive講習には、知人を連れて参加。徹底的に技術を学ぼうと、指導した美容外科医に頼み込みその知人をモデルにして、施術の要所を習得、帰国してまもなく同院の一押し治療術「経結膜脂肪除去」
としてデビューさせた。
今年さらに普及が進むと思われる「ミラクルリフト」では、いち早くソウル、釜山と2度にわたり韓国でトレーニングを受けるほどの熱の入れようで宮崎という立地条件にも関わらず症例数は多い。
新たな治療法を、都会と同じようにいち早い情報収集と導入スピードを心がける。場合によっては、その展開は都会に負けず劣らない。そして地方のハンデをハンデと捉えず、逆に生かす。堀医師の攻めの姿勢が実を結んでいるのである。
また地方だからこそ価格設定は安めに。しかし市場競争で起こる、いわゆる価格破壊というレッルをここ宮崎では張られない。ハンデはむしろ優位性に変わる。否、同医師だからこそ変えることができた。
一方、同院では美容皮膚診療にも力を入れている。
ヒアルロン酸などのフィラー注入やPRPはもちろん、頬などにボリウム感を出せるフフィラー法として最近、注目されてきたPPPプラズマフィラーなども、同じように実技講習から学び、間髪を置かず導入した。
もともとサーマクールなど美容クリニックでは定番と言われるレーザーやRFなどの美容医療機をもつ宮崎院だが、昨秋、新たな美容医療機を揃えた。レーザーや光治療器そして部分痩身のマシンは、患者が美容医療に関心を持つきっかけとなる。切開に対する恐怖感、また痛みをできるだけ抑えたいという患者の心理がその理由のようだ。
そんな需要に、コストパフォーマンンスに優れなおかつ治療効果が高い機種を求めていた院長が出会ったのが、国産の専門メーカーであるARTISTICの4機種。
脂肪吸引の手術前に活用できる部分痩身マシン「EXPLODE-MD6」、メディカルダイエット用としの「EMS」、光治療とRFの機能を兼ね備えた「STAR LIGHT」そして卓上型で治療効果を発揮するフラクショナルCO2レーザー「ESPRIT F-02」(輸入代行)である。
ともすると従来の美容医療機は1台に一つの操作機能のみを搭載するだけで価格も高い。また光源を照射するチップも消耗品として交換しなければならなかった。その点、この4機種は共にこうした点を解決している。
「1台に多くの操作機能をつけているから、コストパフォーマンスがいい。だから患者さんに治療費の負担を少なくできる」と院長の評価は高い。
すでにこうした美容医療機を使った治療コースが始まっている。
美容内科、エステ部門では、女性スタッフのアイデアがところどころに生かされる。いま流行りの「女性会」ではないが、女性が求めるニーズを女性から提案しているため患者からの受けはいい。たとえば美容点滴でも、そのメニューとコースはきめ細かい。
美容内科では、今年血液オゾンクレンジングの導入を検討しているようだ。同じようにJAASの講習を昨年受講し宮崎では初!の治療として露出していく。
また、院内化粧品も「NAVISION」はじめ数種類を揃えるが、城本クリニックオリジナルの医療用化粧品では自らが共同開発者として名を連ねる。さらに昨年、その才能を買われてもうひとつの化粧品を共同開発した。紫イペの優れた抗酸化力を生かしたアンチエイジングのための化粧品シリーズ「Dr.IPEA」がそれで、院長そして女性スタッフのモニタリングを経て、クリニックに来院する患者に薦めはじめた。
「宮崎県内初!というよりむしろ都会にも負けないスピードで、これからも新たな治療技術を学んでいきたい。そして宮崎から発信するアンチエイジング美容医療術をつくっていければうれしい」
(JHM97号より)