サプリメントを用いた代表的な補完代替医療 [JHM]
[ 2010/8/18 ]
がん治療
先述したように補完代替医療が広まるきっかけとなったのは、がん治療においてである。がん治療にはワクチン療法、養子免疫療法、温熱療法、高濃度ビタミンC点滴、IPT療法など様々な補完代替医療があるが、ここではサプリメントを中心に解説する。多くの治療法はサプリメントと併用されているのは間違いないし、クリニックに最も導入しやすい補完代替医療の手法がサプリメントであることから、まずはサプリメントでの補完代替医療を知ることは、決して回り道ではない。
がん治療におけるサプリメントの最右翼はアガリクスと言っていいだろう。ただ、厚生労働省のミスリードともいうべき誤報によって、医療機関での使用はかなり減少したといわれている。しかし、アガリクスにかけられた嫌疑は厚生労働省によって払しょくされたことから、需要は回復するとみられている。
ただ、アガリクスのサプリメントを使用するうえで注意しなければならないのは、その産地と抽出方法である。アガリクスに限らず、土壌で栽培されるキノコには、有害ミネラルが蓄積しやすい。土壌のミネラルを分析し、なおかつそれが抽出段階で濃縮されないように、品質に配慮してあるサプリメントの選択が重要である。こうしたサプリメントの一つがエス・エス・アイの仙生露であろう。
メシマコブやシイタケ菌子体なども根強いキノコ系のサプリメントであることは間違いないが、近年、これらキノコの有効成分と言われているβグルカンを酵母によって作らせた、酵母由来のβグルカンも一般化している。
がん治療には海藻由来のフコイダンも良く用いられるが、最近では糖鎖と呼ばれることが多い。
近年、高濃度ビタミンC点滴と共に、併用されるサプリメントには、タイムリリースの経口のビタミンCや、米国で良く併用されている、マイタケ由来のDフラクションなどがある。Dフラクションは、高濃度ビタミンCが日本でブームになる以前から、点滴のビタミンCとの併用効果が高いことが、米国のエビデンスとして知られている。
がん治療に限ったわけではないが、B&Sコーポレーションのアルベックスな
、乳酸菌生成エキスも、がん治療を含めた補完代替医療全般に広く用いられている。
循環器領域
循環器系の補完代替医療では、スタチン系の高脂血症薬の使用に併用するCoQ10が良く知られている。
動脈硬化予防という観点で言えば、医薬品ともなっているEPAなどのω3系の高度不飽和脂肪酸、特にエル・エスコーポレーションのDPAが良く使用されているし、マイルドキレーターとして、EDTAキレーションにα-リポ酸サプリメントも併用されている。
α-リポ酸はメタボリックシンドローム改善のダイエットサプリ的にも使用されているし、そのような使い方では、L-カルニチンが代表的なサプリメント素材だ。また、L‐カルニチンはCoQ10とともに、米国で心疾患の治療サプリメントとしても使われている。
また、欧米では脳機能サプリとして認知されているイチョウ葉エキスは、日本の補完代替医療では、冷え症や肩こりの血流改善のためのサプリメントとしての利用が大きい。
整形外科・眼科
整形外科領域では、変形性膝関節症に対して使用されているグルコサミンがあまりにも有名だ。最近ではピーエスのDAAC-01もクリニックで良く使用されている。
眼科では、富士化学工業のアスタキサンチン、アスタリールACTがエビデンスの豊富さもあって、よく使用されているし、コンタクトレンズメーカーであるボシュロムのオキュバイトという抗酸化ビタミンを組み合わせた専用サプリメントもある。
ビルベリーやルテインのサプリメントも眼科では使用されているように、整形外科や眼科は、サプリメントの機能が認知されている標榜科目と言っていいだろう。
婦人科領域
婦人科でよく利用されているサプリメントには、更年期治療のための、ホルモン補充の代替医療として、大豆イソフラボンが、不妊治療の一環としてマカなどが利用されている。
また、子宮内膜症など、婦人病に関してはトレードピアなどが扱うピクノジェノールが良く使用されている。
先日、世界中のピクノジェノールの研究者や臨床医が研究や臨床結果を持ち寄って検討する第8回アジア地区ミーティングがタイで開催された。その中には、医薬品としても例のない、耳鳴りの改善効果を報告したイタリアの研究者の講演が注目された。
また、ドイツの研究者からは、ピクノジェノールのNO産生に対する興味深い研究発表が行われた。
ヒト体内のNO生合成には3つの異なったNOシンターゼが知られており、ピクノジェノールから抽出した画分が酸化的破壊や炎症反応に関与するNOシンターゼであるiNOSを容量依存的に抑制し、一方で血管における中心的な抗炎症や抗動脈硬化の役割を担うeNOSのたんぱく発現量を増加させているのだという。
生理機能に重要なすぐなる伝達分子であるNOについて、サプリメントでこれほど研究されている例は稀であろう。
認知症外来
近年、認知症治療では、まさしく補完医療としてフェルガードというサプリメントが使用されている。認知症治療の第一人者として知られる、名古屋フォレストクリニック院長の河野和彦MDが、アリセプトやその他の医薬品と組み合わせてフェルガードを使用し、認知症治療に成果を上げ、その使用法をコウノメソッドとしてまとめたものが、東海圏の認知症外来を中心に活用されている。
こうした疾病に対して使用されるサプリメントの他に、食生活を補う意味や、不定愁訴への対応にさまざまなサプリメントが使用されている。日本における補完代替医療において、サプリメントの存在はなくてはならないものといって良いだろう。
(JHM95号より)
先述したように補完代替医療が広まるきっかけとなったのは、がん治療においてである。がん治療にはワクチン療法、養子免疫療法、温熱療法、高濃度ビタミンC点滴、IPT療法など様々な補完代替医療があるが、ここではサプリメントを中心に解説する。多くの治療法はサプリメントと併用されているのは間違いないし、クリニックに最も導入しやすい補完代替医療の手法がサプリメントであることから、まずはサプリメントでの補完代替医療を知ることは、決して回り道ではない。
がん治療におけるサプリメントの最右翼はアガリクスと言っていいだろう。ただ、厚生労働省のミスリードともいうべき誤報によって、医療機関での使用はかなり減少したといわれている。しかし、アガリクスにかけられた嫌疑は厚生労働省によって払しょくされたことから、需要は回復するとみられている。
ただ、アガリクスのサプリメントを使用するうえで注意しなければならないのは、その産地と抽出方法である。アガリクスに限らず、土壌で栽培されるキノコには、有害ミネラルが蓄積しやすい。土壌のミネラルを分析し、なおかつそれが抽出段階で濃縮されないように、品質に配慮してあるサプリメントの選択が重要である。こうしたサプリメントの一つがエス・エス・アイの仙生露であろう。
メシマコブやシイタケ菌子体なども根強いキノコ系のサプリメントであることは間違いないが、近年、これらキノコの有効成分と言われているβグルカンを酵母によって作らせた、酵母由来のβグルカンも一般化している。
がん治療には海藻由来のフコイダンも良く用いられるが、最近では糖鎖と呼ばれることが多い。
近年、高濃度ビタミンC点滴と共に、併用されるサプリメントには、タイムリリースの経口のビタミンCや、米国で良く併用されている、マイタケ由来のDフラクションなどがある。Dフラクションは、高濃度ビタミンCが日本でブームになる以前から、点滴のビタミンCとの併用効果が高いことが、米国のエビデンスとして知られている。
がん治療に限ったわけではないが、B&Sコーポレーションのアルベックスな
、乳酸菌生成エキスも、がん治療を含めた補完代替医療全般に広く用いられている。
循環器領域
循環器系の補完代替医療では、スタチン系の高脂血症薬の使用に併用するCoQ10が良く知られている。
動脈硬化予防という観点で言えば、医薬品ともなっているEPAなどのω3系の高度不飽和脂肪酸、特にエル・エスコーポレーションのDPAが良く使用されているし、マイルドキレーターとして、EDTAキレーションにα-リポ酸サプリメントも併用されている。
α-リポ酸はメタボリックシンドローム改善のダイエットサプリ的にも使用されているし、そのような使い方では、L-カルニチンが代表的なサプリメント素材だ。また、L‐カルニチンはCoQ10とともに、米国で心疾患の治療サプリメントとしても使われている。
また、欧米では脳機能サプリとして認知されているイチョウ葉エキスは、日本の補完代替医療では、冷え症や肩こりの血流改善のためのサプリメントとしての利用が大きい。
整形外科・眼科
整形外科領域では、変形性膝関節症に対して使用されているグルコサミンがあまりにも有名だ。最近ではピーエスのDAAC-01もクリニックで良く使用されている。
眼科では、富士化学工業のアスタキサンチン、アスタリールACTがエビデンスの豊富さもあって、よく使用されているし、コンタクトレンズメーカーであるボシュロムのオキュバイトという抗酸化ビタミンを組み合わせた専用サプリメントもある。
ビルベリーやルテインのサプリメントも眼科では使用されているように、整形外科や眼科は、サプリメントの機能が認知されている標榜科目と言っていいだろう。
婦人科領域
婦人科でよく利用されているサプリメントには、更年期治療のための、ホルモン補充の代替医療として、大豆イソフラボンが、不妊治療の一環としてマカなどが利用されている。
また、子宮内膜症など、婦人病に関してはトレードピアなどが扱うピクノジェノールが良く使用されている。
先日、世界中のピクノジェノールの研究者や臨床医が研究や臨床結果を持ち寄って検討する第8回アジア地区ミーティングがタイで開催された。その中には、医薬品としても例のない、耳鳴りの改善効果を報告したイタリアの研究者の講演が注目された。
また、ドイツの研究者からは、ピクノジェノールのNO産生に対する興味深い研究発表が行われた。
ヒト体内のNO生合成には3つの異なったNOシンターゼが知られており、ピクノジェノールから抽出した画分が酸化的破壊や炎症反応に関与するNOシンターゼであるiNOSを容量依存的に抑制し、一方で血管における中心的な抗炎症や抗動脈硬化の役割を担うeNOSのたんぱく発現量を増加させているのだという。
生理機能に重要なすぐなる伝達分子であるNOについて、サプリメントでこれほど研究されている例は稀であろう。
認知症外来
近年、認知症治療では、まさしく補完医療としてフェルガードというサプリメントが使用されている。認知症治療の第一人者として知られる、名古屋フォレストクリニック院長の河野和彦MDが、アリセプトやその他の医薬品と組み合わせてフェルガードを使用し、認知症治療に成果を上げ、その使用法をコウノメソッドとしてまとめたものが、東海圏の認知症外来を中心に活用されている。
こうした疾病に対して使用されるサプリメントの他に、食生活を補う意味や、不定愁訴への対応にさまざまなサプリメントが使用されている。日本における補完代替医療において、サプリメントの存在はなくてはならないものといって良いだろう。
(JHM95号より)