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西洋医療と代替医療を「統合」、臓器別ではない「ホリスティック医療」へ [JHM]

[ 2010/8/16 ]
本紙1面でも紹介したように、7月18・19日に第16回日本がんコンベンションが開催される。また、昨年米国からマイケルB.シャクターMDが招かれ開催された国際統合医療ワークショップが、今年も7月16日に開催される。これらに限ったわけではなく、補完・代替医療や統合医療に関連するイベントは、もはや毎月のように開催されており、一般患者のみならず、医療従事者からも高い注目を集めている。本稿では改めて補完代替医療・統合医療について、考察して見る。

補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine:CAM)は、通常の医療を補完する医療、通常の医療を代替する医療である。具体的には、漢方や鍼灸などの東洋医療、ホメオパシーやリフレクソロジー、アロマテラピーやハーブ、アーユルヴェーダやカイロプラクティックなど、伝承医療や民間療法、サプリメントなどを用いた栄養療法などを、通常医療の補完、代替として行う医療である。 日本において、通常医療は、保険診療を指すと言って良いであろうから、保険診療の代替もしくは補完するために用いる医療であることは説明するまでもないであろう。

また、近年はそれら全てを統合し、通常医療の良い所と組み合わせて行う統合医療(Integrative Medicine)という言葉が主流となりつつある。また、統合医療という言葉は、これらの医学的手法を統合するという意味に加え、臓器別に細分化し過ぎた日本の医療に対して全人的に診るという意味合いで、ホリスティック医療に近い意味で用いられることもある。

近年では、補完代替医療という呼び方よりも、統合医療のほうが、好意的に用いられているように感じられる。

これらの概念は、欧米から伝わったものであり、公的保険制度のない米国において、予防的に低価格で疾病にアプローチするために発達してきたといわれていたが、近年のCAM医療に対しての調査では、高収入で高知識層ほどCAM医療を選択していることが判明している。民間保険によって、通常医療が存分に受けられる患者の多くが、米国ではCAM医療を選択しているのである。


日本での補完代替医療

日本において、補完代替医療が認知され始めたのは、古くはプロポリスやクロレラに始まり、その後、がん治療に漢方薬やアガリクス、メシマコブ、マイタケなどのキノコ系のサプリメントなどが用いられ始め、それらを研究するために、日本補完代替医療学会などが設立され、広まっていった。

また、メガビタミンに代表されるように、分子矯正医学(orthomolecular  Medicine)や、ゲルソン療法などの食事療法も、補完代替医療の日本での認知の立役者といってよいだろう。

このように日本では、通常医療で治癒の難しいがんなどの疾病に対し、補完代替医療が行われることが多かった。しかし、近年では、通常医療に対しての疑問から、補完代替医療を選択するニーズも多い。

現在、日本で通常医療として行われている西洋医療は、対処療法が考え方の中心にある。例えば、糖尿病であれば、投薬によって血糖値がコントロールされていれば、治癒したとみなされる。膝関節症の痛みには消炎鎮痛剤が処方されるのみである。根治療法ではないことが多いのだ。

それゆえ、漢方薬などによって、長期間、体質改善を行うことで、病気を根治しようというニーズや、さらに病気になる前段階、未病状態のうちにケアしようというニーズが生まれている。

疾病の治療を行う西洋医療では、これらの状態には対処のしようがなく、補完代替医療や統合医療によって、健康になろうという患者も増加している。

これらの考え方をさらに進め、いつまでも若々しく健康でいようという考え方で行われている医療がアンチエイジング医療である。

また、現在では様々なクリニックで目にするようになった、サプリメント外来なども、日本に定着した補完代替医療であろう。

一時期ブームとなって、現在も盛んに行われているデトックスも、欧米ではがん治療と組み合わされる、補完代替医療の大きな分野であり、日本のがん治療においても、もっと注目されて良い医療であろう。


補完代替医療のエビデンス

補完代替医療にはエビデンスがないとよく言われる。当然ながら先進的な通常医療と比較したら、確かにエビデンスは少ない。しかし、先述したように補完代替医療は伝承医療や民間療法なのである。経験として病を治療してきた実績がある。

その一方で、新発見でもなく単一の化学物質で治療するわけでもないこれらの医療について、製薬会社が新薬としてエビデンスを構築するわけはないし、それにかかる費用と時間を考えれば、エビデンスを求めるのは酷な要求ではないだろうか?

また、漢方薬ですら保険適用から外そうという日本において、今後、補完代替医療の手法が、通常医療として認められるとは考えにくい。未病治療や予防のためのエビデンスなど、全く不可能といってよい。

では海外での論文発表のからエビデンスは求められるのだろうか?海外論文のメタアナリシスなども、試験の条件設定がばらばらで、統一した目的のための研究を集めるのが難しく、正確な分析が出来ないのが現状である。

効果測定が難しいのは当然なのだから、これをやればがんは治る、という固執は危険である。様々な方法や検討を重ね、通常医療も常に視野に入れながら、治療を行うべきであろう。それゆえ、最近では統合医療という呼び方が最も好まれるのである。

そんな中、本紙は、08年の診療報酬改定において、乳がんに伴う浮腫に対して、リンパドレナージュのための弾性着衣が保険適用となったことに対して、大きな評価をしている。




(JHM95号より)
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