アンチエイジング歯科にフィラー注入を-こいで歯科医院院長 小出 一久DDS [JHM]
[ 2009/12/16 ]
こいで歯科医院院長 小出 一久DDS
フィラー注入療法は、術式も簡便で、侵襲も少なく、日常的に注射を行っている歯科医師であれば技術的な障壁も大変低いものとなっています。
歯牙の喪失や咬合高径の低下、リップサポートの喪失など口腔における変化および、不適合、不良な義歯、補綴物が要因となり、口唇周囲のシワが顕著になります。口元、口唇は加齢的な変化が現れやすく、改善の要望はとても多いと思われますが、旧来の歯科治療のみからのアプローチでは、術者も、患者も期待するようなシワの改善、アンチエイジングの効果を十分に実現することはできませんでした。
フィラー注入を応用することで機能的にも、審美的にも満足度の高い歯科治療を提供することが可能になると考えます。
そこで、歯科の診療範囲に関する情報を収集し、法令を遵守し、歯科医師の裁量権の範囲内で、歯科領域へのフィラー注入療法の応用が可能であるかを検証しました。平成8年の当時の厚生省において行われた「歯科口腔外科に関する検討会」の議事内容と結論でした。
結論として、口唇は口腔外科の診療範囲であり、結果として歯科の診療範囲であるということを再確認することになりました。この結論から、アンチエイジングの取り組みを行う上では、口唇へのフィラー注入を歯科において積極的に取り組むべきであると考えます。
フィラー注入療法は、ヒアルロン製剤などを皮膚に注入することで、皮膚陥凹部、延いてはシワの改善を可能にする治療方法として、すでに広く認知、応用されています。侵襲が少なく、治療時間も短く、術式も簡便で、安全性も高く、即時に効果が認められなど、術者側、患者側双方に多くのメリットがあります。
医院におけるアンチエイジングの取り組みの中でも、いわゆる見た目のアンチエイジング治療の導入では、初期に選択するべき治療例と考えます。
歯科治療において、歯牙の喪失や咬合高径(咬み合わせ)の低下、リップサポート(歯が口唇を支える作用)の喪失など、口腔、歯科分野における身体的変化に対し、補綴(ほてつ)治療、義歯(入れ歯)治療により、口元のアンチエイジングを意識した顔貌の改善を行ってきました。
しかし、歯科のみからのアプローチでは、術者も、患者も期待するアンチエイジングの効果を実現することはできませんでした。
そこで、旧来の歯科治療に加えて、フィラー注入を応用することで機能的にも、審美的にも満足度の高い歯科治療を提供することが可能になりました。
顔貌におけるシワの形成は、皮膚の加齢変化に因るものと、繰り返される表情筋の収縮に因るもの(表情ジワ)とを考えます。後者は、個人の生活環境や性格、習慣などにより、同じ表情を繰り返し行うことで、顔貌の同じ部位にシワを作ります。このシワは、表皮の変化のみでなく、真皮、結合組織の偏在などの変化を引き起こし、シワが皮膚の折り目となり、このことがさらに同じ部位にシワを作り、固定化していくと考えます。
フィラー注入を行うことでシワは改善されますが、注入したフィラーが分解、吸収、排泄されると、シワが再び現れ、その効果の持続期間は一般的には半年から一年程と理解されています。運動性の高い部位、代謝が高い場合、体重の減少がある場合などでは、フィラー注入の効果の持続期間が短縮し、早期に後戻することが知られています。
しかし、額や眉間では、ボトックス(ボツリヌス菌A毒素)注射を併用することで、シワを作る筋の収縮を阻害することで原因を除去し、フィラー注入の効果を高め、効果の持続期間は延長することが知られています。
口唇およびその周囲においては、口腔、歯科分野における身体的変化、口腔機能がシワの原因となりうるので、この原因の除去においては、歯科治療の役割がたいへん大きいものとなってます。
歯科では、これまでは先天性異常、外傷を除くと、積極的に口唇に対する治療、アンチエイジングの取り組みを行ってきませんでした。口唇は、歯科の診療範囲であり、今後、アンチエイジングの取り組みを行う上では、口唇へのフィラー注入を歯科において積極的に取り組むべきと考えます。
口唇周囲のシワの改善においては、その原因の除去が歯科治療により行えることを医科の先生方にもご理解いただき、より高い患者満足度のために、医科・歯科が連携して取り組むことが必要でることをご提案いたします。
(JHM89号より)