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新しい抗老化『アドレナル・ファティーグ』

[ 2009/11/10 ]

アドレナル ファティーグを診断するために測定するホルモン。
色の付いた部分のホルモンはすべて測定する。



翻訳中の書籍を前に取材に応じてくれた本間良子MD

Adrenal Fatigue ”アドレナル・ファティーグ”という言葉をご存知だろうか?アドレナル=副腎が ストレスにより ファティーグ=疲弊してしまっている状態のことを指す。症状を見ると、一見うつ病にも見えるこの状態、日本でも潜在患者数は多数入るのではないかと本紙は見ている。このアドレナル・ファティーグにいち早く着目し、米国でのトレーニングを経て、日本での診療に生かしてるのが、川崎スクエアクリニックの本間良子MDだ。11月22・23日の第7回臨床抗老化医学会議・展示・東京アンチエイジング・フォーラムにおいても報告が行われるアドレナル・ファティーグについて、本間MDにお話をうかがった。


アドレナル・ファティーグとは、どのような状態なのか?「不眠や気分の落ち込み、楽しい気分になれない、めまい、性への興味の低下、易感染性、記憶力の低下や感情の起伏が激しくなるなどのうつ病に似た症状がありますが、アドレナル・ファティーグの特徴の一つに、朝は元気がなく、夕方近くになると、元気になるという症状があります。」と本間MD。
これは、ストレスが過剰になることで、副腎からコルチゾルなどのストレスホルモンが過剰に分泌された続けた結果、疲弊した副腎がホルモンを分泌できない状態で、本来、朝には分泌されるコルチゾルが分泌できない状態にあるのだという。

また、コルチゾルが常に分泌過剰になっている状態では、不眠症状となって現れる。そうした状態が長く続けば、副腎は疲弊してくる。
このように副腎の疲弊によるホルモンの分泌異常によって、うつ様の症状を呈する状態がアドレナル・ファティーグだという。
原因としては慢性的なストレスや事故や死別など大きなストレスが引き金になるが、その一方で、エネルギッシュに活動する、仕事中毒のような、ストレスホルモンが常に高い状態で生活しているタイプの人にも発症する。
また、Salt Cravingと呼ばれる塩辛いものへの渇望や、逆に甘い菓子などの過剰摂取の症状が見られることも特徴である。さらにはコーヒーなどによるカフェインの過剰、運動不足が、増悪因子となる。

ではどのように対処していくのであろうか?「アドレナル・ファティーグか否かの判断は、ライフスタイルなどの問診に加え、唾液や尿によるホルモンの測定によって行います。」ただ、これらは単純に唾液や尿に含まれるコルチゾルなど、ストレスホルモンのみを測定するものではなく、唾液は朝・昼・夕・就寝前の4回採取、尿については24時間の蓄尿によって、ストレスホルモンの日内変動や、ステロイドホルモンから性ホルモンへ代謝されていく段階の各ホルモン量、その代謝副産物などによって、詳細な分析が行われる。
場合によっては慢性の感染症や慢性食物アレルギーについての検査も行われる。こうした状態が、アドレナル・ファティーグの原因となることもある。
その後「分析結果にもとづいて、副腎のトラブルの状態が、どの段階にあるのかを判断し、その段階に応じたナチュラルホルモンやサプリメントを処方します。」

使用されるホルモンは2.5〜5mgのハイドロコルチゾンやDHEA、その他にもAdrenal Glandularと呼ばれる副腎抽出物やビタミンB群、バイオフラボノイドとビタミンCを組み合わせたサプリメントやドーパミンの材料となるチロシン、酵素の活性中心となるマグネシウムや亜鉛なども使用される。
また、コーチングやコグニティブ・セラピーなどの手法を用いた、ストレス・コントロールについても、指導していく。
なぜアドレナル・ファティーグに興味を持ち始めたのだろうか?「実は夫や自分が同様の症状を抱えていたのがきっかけです。」と本間MDは語る。サプリメントなどの栄養療法は以前より行っていたが、自分に対しては、大きな改善がみられなかったため、様々な情報の中から、アドレナル・ファティーグに辿り着く。米国より関連の書籍を取り寄せ、自分に試してみると、的確に症状が軽減していくことを経験する。
また、食物アレルギーやカンジダ感染のケアなど、本間MDがそれまで行ってきた、自閉症治療のアプローチと共通するものも多く、本格的な技術の習得を目指す。

その後、渡米しアドレナル・ファティーグに関しての医師向けの研修を1週間受けた後、自身のクリニックであるスクエアクリニックで、患者に対しての適用を始める。

現在、多くのアドレナル・ファティーグの患者のケアに当たる本間MD「早い人では、1ヶ月〜3ヶ月で改善します。」とその言葉には自信がみなぎる。
ただ一方で、「Salt Cravingや低血糖症、カフェイン中毒など、アドレナル・ファティーグ特有の症状を持ちながら、うつ病を併発しているケースもあって、そのような状態の場合には、対応は難しくなります。」という。
うつ病大国といわれる日本、8人に1人は、患者予備軍ともいわれている。隠れうつ病や仕事中のみ症状が見られる新型うつ病など様々な形態のうつ病も報告されているが、その対応は、精神科医や心療内科での、抗うつ薬の処方に頼ったものがほとんどだ。

一方、アドレナル・ファティーグは、うつ病と同様の症状を呈しながら、その状態の原因は副腎にある。患者からうつ様の症状を聞いて、副腎の疲弊を疑う医師は、日本にはほとんどいないであろう。

こうした現実は、患者と医療のミスマッチを招いている可能性がある。本間MDは今、全米でもベストセラーとなった、アドレナル・ファティーグの書籍を翻訳中だ。多くの人にアドレナル・ファティーグという状態を知ってもらい、適切な治療に踏み出してもらいたいというのが、本間MDの望みだ。
自身も悩まされ、そして回復したアドレナル・ファティーグに対する、本間MDの取り組みは、日本人にとって国民病といっても良い、うつ病治療に、一石を投じるものになるに違いない。




(JHM88号より)
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