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ビタミンC誘導体に特化した注目のメーカー

[ 2016/12/1 ]
ビタミンC誘導体に特化し、様々な研究・臨床試験によって蓄積したエビデンスを基に開発した自社化粧品を、医療機関専売品として販売している化粧品メーカーがある。原料販売も行っている東京都清瀬市に本社・工場を構えるアイ・ティー・オーだ。同社が大変興味深い点は、自社製品販売やOEM商品の企画・販売を行うだけではなく、化粧品の基礎知識を学べる専門サイトの運営や、専門誌の発行等を行い、医師に対して化粧品への啓蒙活動を行っている点だ。さらに同社では、医師限定企画として「オリジナル化粧品作りセミナー」までをも実施している。この手作り化粧品作りセミナーでは、様々な原料を自ら調合し、自身の肌にあったカラーのクリーム、化粧水等を参加者全員で作ることができるという。


高い抗酸化作用を持つビタミンCは、美白、しわ・しみの改善、ニキビ改善など様々なアンチエイジング効果があるが、化粧品として取扱いにくい成分としても知られており、ひとたび紫外線を浴びてしまうと肌に対して活性酸素に似た悪影響を与える可能性さえもある。
そんな厄介なビタミンCの欠点を改善する目的で開発されたのがビタミンC誘導体で、この成分なら肌浸透後にビタミンCに変換される特性を持つ。
アイ・ティー・オーはビタミンC誘導体の研究に特に力を入れており、成分特性を活かした化粧品や原料開発を行っているが、実は同社代表の伊東忍氏は、1990年代のビタミンC化粧品ブームを作り上げ牽引した張本人で、医学博士としてビタミンに関連する多数の論文や研究成果を発表している。同氏は上智大学卒業後に大手化学メーカーの昭和電工生化学事業部に勤務する中で、1988年に経口投与によるアスコルビン酸リン酸Mgが通常のアスコルビン酸と比較した際に10倍以上の生理活性を発揮することを発見し、論文発表した。
その後もビタミンC誘導体分野で活性酸素抑制の研究を重ね、リン酸型ビタミン誘導体であるAPM、APS、APPS、TPNaなどで多くの特許を取得した。医科向け化粧品分野に特化するために2001年に独立し現在のアイ・ティー・オー社(ITO社)の代表取締役に就任した。その後も同分野の研究を継続し、共立薬科大学客員研究員、東京女子医大非常勤講師(法医学)、東京女子医大先端医科学研究所(岡野教授、再生医療)で学位(医学)を取得、現在は慶応大学薬学部創薬物理化学研究室にて抗酸化ビタミン誘導体の基礎研究を継続している。 2006年にフレグランスジャーナル社から発売された「プロビタミンC – 分子デザインされたビタミンCの知られざる働き -」では、日本の活性酸素研究の第一人者である二木鋭雄工学博士(産総研名誉リサーチャー)、畑隆一郎博士(日本結合組織学会理事)などと共にビタミンC誘導体の知られざる効果について紹介し、現在でもビタミンの研究・開発に特化した化粧品メーカーや医療機関など専門家に幅広く利用されているという。
2001年にAPS配合のニキビ用VCローションを池野宏医師、大森喜太郎博士らと開発、2003年には、昭和電工と協力しAPPS(両親媒性VC誘導体)とTPNa(水溶性VE誘導体)の2剤配合のニキビ用ローションを開発、2004年には、新規活性酸素抑制物質であるフラーレンのバイオベンチャー会社を三菱商事に協力して立ち上げ、ビタミンC60バイオリサーチ社の開発の基礎を築いた。2005年にはVCIP(オイル状ビタミンC) 配合ジェルを寺島洋一医師らと開発した。現在美容医療で汎用されているビタミンC誘導体、フラーレン配合の化粧品の多くはITO社の製品が基礎になっている。
ITO社では、医療機関向けにビタミンC誘導体原料を中心としたスキンケア製品や原料開発を行っており、ビタミン誘導体を中心に、エビデンスに基づいた開発された医療機関専売品「AP5シリーズ」、「STIシリーズ」や各種OEM製品の製造販売を行っている。AP5シリーズでは洗顔・メイク落とし、化粧水、保湿、日焼け止め・スペシャルケアが販売されており、国内外の多くの病院・クリニックで利用されている。 原料販売も充実しており同社が取り扱う原料は多岐に渡り、ビタミンC誘導体ひとつでもグリセリルオクチルアスコルビン酸(GO-VC)、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(APPS)、リン酸アスコルビンNa(APS)、リン酸アスコルビンMg(APM)、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(VCIP)、各種ナノスフィアなど多数揃えている。
さらにビタミンC誘導体以外の原料では、ビタミンE誘導体、各種フラーレン、天然育毛原料、リポソーム原料、ラメラ乳化原料、ナノスフィア(ナノカプセルの膜がビタミン誘導体で構成されたDDSカプセル原料)などのユニークな原料を多数取り扱っている。最近力を入れている、医療用メイク顔料分野では、ITO社が世界を飛び回り探し出したブラジル産の天然ミネラルクレイパウダーがあり、11種の色調(合成色素・着色料不使用)と2つの異なる粒子サイズの原料を用意している。いずれもメイク顔料としての用途に加え、抗酸化、保湿効果、皮脂分泌抑制、皮膚弾力改善などの機能性を持つことが実証されており、使用することでしわ・たるみ・ニキビ・紫外線ケアなどの用途に使用できる。
多様な化粧品原料等とミネラルクレイパウダーの組み合わせにより、医師の要望に沿ったオリジナル化粧品の実現を可能としている。
同社によると、特に皮膚科医や女性医師は取り扱うスキンケア商品や美容商品にこだわりがあるため、院内治療や効果・目的にあわせてエビデンスが十分にある成分や商材について知りたいといった問合せが来ることも多いという。エビデンスがある幅広い原料群から、目的・用途にあわせてオリジナル化粧品を開発できる点が、同社のOEMが人気の理由といえよう。
・・・とはいえ、「どんな成分をどんな風に配合すればいいのか?」という点について、我々にはそれほど詳しい知識はない。そんな点をカバーするのが、同社が定期的に開催しているオリジナル化粧品作りの教室だ。 ビタミンをはじめとする化粧品成分の特性や機能を医療機関関係者にもっと知ってほしいという伊東氏の想いからスタートした企画で、2016年開催の企画では、自身の肌色に合ったサンスクリーン機能付きのBBクリームをオリジナルで調合作成した。医療機関関係者限定・しかも日曜午後の開催でありながら、大阪、東京とも満員となる大盛況のセミナーになった。
同社商品は全国各地の皮膚科・内科・美容クリニック・小児科などの医療機関に導入されており、OEM供給は1000本程度から可能だ。同社代表の伊東氏は、今後も勉強会やセミナー等を開催し、エビデンス豊富でオリジナリティあふれる商品の提供をより多くのクリニックに行っていきたいと話す。
3クリニック以上が集まれば日本各地(一部離島を除く)での出張セミナーも可能という。来年度(2017年)の日本皮膚科学会総会、日本形成外科学会総会では化粧品のUVケア用ナノ原料についてのセミナーを開催する。
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