フォーラム講演 その二 第7回JAAS東京LiveForumから
[ 2016/11/29 ]
一般社団法人 JAAS日本アンチエイジング外科学会の「第7回東京ライブフォーラム」(9月25日、26日品川インターシティホール)は、盛況のうちに幕を閉じた。本稿では、第7回ライブフォーラムでの講演の中から、とくに話題をさらった発表をダイジェストで紹介するズームイン フォーラム講演のその二は、「眼瞼下垂治療による視機能のトラブル・異常について」(愛知医大大学院の眼形成・眼窩・涙道外科教授柿崎裕彦医師)をピックアップしてみた。
柿崎教授講演のセッションでは、海外演者として韓国からChoi医師、Park医師も招きフォーラム最大の中心演目となった。また午後からのライブ中継では、池田医師らによる(瞼の裏側から挙筋短縮する) 「切らない眼瞼下垂術(NILT法)」の供覧もクリニックと会場を結び行われた。 (以下、ダイジェストで発表要旨を報告するが、演者の発言をもとに語り口調として再現するが、口語調を文章にするため多少の修正があることをお許し願いたい)
美容外科で行うことも多い治療として眼瞼下垂術がある。自由診療のため整容面に重きを置いた手術を行うことであり、実際に二重のラインや左右対称性等を求める多くの患者が自由診療で眼瞼下垂治療を行っている。比較的メジャーな手術ではあるが、眼瞼は眼球に接しているため手術によって視機能に影響を与えないようにする必要がある。
もともと大手美容クリニックで3000症例以上の目元の手術を行ってきたが、当時は、毎日多数の目元の手術を行っており、特に苦情もなかったため自分の腕に安心していたが、改めて今、自ら大学の眼科に勤務してみて分かったことは、「美容外科で行った手術に対するトラブル・合併症の相談やリオペは、美容外科ではなく眼科に来ているという事実」だった。
美容外科医として目元の治療に関連して絶対覚えてほしい基礎的な知識として「上眼瞼の解剖」と「涙腺とドライアイ」の2つが挙げられるだろう。解剖については、日本人の目元の特性をきちんと理解することが大切で、例えば白人の場合、眼窩隔膜合流部と眼窩脂肪の先端は同じところに位置するが、日本人の場合、眼窩隔膜合流部は常に瞼板よりも上方にあり、眼窩脂肪は合流部よりも前方まで突出している点を理解してほしい。また、Muller筋の起始については一般的に上眼瞼挙筋の後面と考えられていたが、日本人の場合は上眼瞼挙筋から直接起始しているケースが多く、挙筋腱膜とMuller筋は相補的に上眼瞼の挙上に関与しているということが分かっている
さらに上眼瞼挙筋腱膜外角については構造的・機能的優位性を理解する必要がある。この部分は筋が20度外方へ向かって走行しているため、腱膜の中央を瞼板の中央に固定すると外法が吊り上がってしまう。そのため、瞼裂の中央は瞼板中央から約2㎜鼻側に、また腱膜の中央は牽引時の二等辺三角形の頂点にするなど構造と機能を理解した上で手術を行うことが重要です。
ドライアイは、コンタクトレンズ装用、点眼薬、糖尿病、外傷、手術、知覚定価、ムチン異常、結膜弛緩など様々な要因があるが、まぶたは眼表面の恒常性を維持する働きがある。 そのため術後も「いかに自然で意識しない状態にするか」が大切になるのだが、実際には術後に副涙腺障害や開瞼時の肌露出面積が増大し過ぎることでドライアイになるケースが多いという。対策として副涙腺は瞼板直上のミュラー筋内もしくは少し前方にあるためこの部分を損傷しないよう注意することと、瞼を挙げすぎないように調整することが大切です。なおPC端末を常に見ている患者さんは特にまぶたが空いている状態が長くドライアイになりやすいため、事前に確認するほうがよい。
特に最近は60歳以上のトラブルも増えている。高齢者の場合、涙液が減少しているため手術によって上瞼を挙げすぎるとドライアイや見にくさを訴えたり、下眼瞼の弛緩によって閉瞼不全,夜間兎眼となることもあるため上瞼を挙げすぎない配慮などが必要になる。
その他のトラブルとしては、術後の角膜形状変化によって乱視や角膜障害を起こすケースだ。角膜障害によって中には視力が0.7から0.01にまで落ちてしまい、眼瞼下垂治療どころか失明に近い状態になってしまっている患者もいることを理解し、より安全で丁寧な手術を心掛ける必要性もでてくる。
また、トラブル症例として最近多いのが糸の露出で、術後すぐには何も問題がなかったものの数年経ってからまぶたに違和感があるとして来院した患者に多い。原因は瞼板を貫くナイロン糸で、10年程度経過したナイロン糸が加水分解によって異物肉芽腫を形成するケースがある。しかしプロリン糸などではこのようなケースは起きず、また挙筋法で手術を行った場合も同様の事例は起きてないため、ナイロン糸による瞼板法での手術の場合、こういった可能性があるため、眼瞼下垂治療を行う際には特に注意すべきだろう。
最後に、解剖写真や症例写真で美容外科だけでは把握できない眼瞼下垂治療後のトラブルについて詳細を解説していきたい(フォーラムの性格上、詳細は控えさせていただく)。
柿崎教授講演のセッションでは、海外演者として韓国からChoi医師、Park医師も招きフォーラム最大の中心演目となった。また午後からのライブ中継では、池田医師らによる(瞼の裏側から挙筋短縮する) 「切らない眼瞼下垂術(NILT法)」の供覧もクリニックと会場を結び行われた。 (以下、ダイジェストで発表要旨を報告するが、演者の発言をもとに語り口調として再現するが、口語調を文章にするため多少の修正があることをお許し願いたい)
美容外科で行うことも多い治療として眼瞼下垂術がある。自由診療のため整容面に重きを置いた手術を行うことであり、実際に二重のラインや左右対称性等を求める多くの患者が自由診療で眼瞼下垂治療を行っている。比較的メジャーな手術ではあるが、眼瞼は眼球に接しているため手術によって視機能に影響を与えないようにする必要がある。
もともと大手美容クリニックで3000症例以上の目元の手術を行ってきたが、当時は、毎日多数の目元の手術を行っており、特に苦情もなかったため自分の腕に安心していたが、改めて今、自ら大学の眼科に勤務してみて分かったことは、「美容外科で行った手術に対するトラブル・合併症の相談やリオペは、美容外科ではなく眼科に来ているという事実」だった。
美容外科医として目元の治療に関連して絶対覚えてほしい基礎的な知識として「上眼瞼の解剖」と「涙腺とドライアイ」の2つが挙げられるだろう。解剖については、日本人の目元の特性をきちんと理解することが大切で、例えば白人の場合、眼窩隔膜合流部と眼窩脂肪の先端は同じところに位置するが、日本人の場合、眼窩隔膜合流部は常に瞼板よりも上方にあり、眼窩脂肪は合流部よりも前方まで突出している点を理解してほしい。また、Muller筋の起始については一般的に上眼瞼挙筋の後面と考えられていたが、日本人の場合は上眼瞼挙筋から直接起始しているケースが多く、挙筋腱膜とMuller筋は相補的に上眼瞼の挙上に関与しているということが分かっている
さらに上眼瞼挙筋腱膜外角については構造的・機能的優位性を理解する必要がある。この部分は筋が20度外方へ向かって走行しているため、腱膜の中央を瞼板の中央に固定すると外法が吊り上がってしまう。そのため、瞼裂の中央は瞼板中央から約2㎜鼻側に、また腱膜の中央は牽引時の二等辺三角形の頂点にするなど構造と機能を理解した上で手術を行うことが重要です。
ドライアイは、コンタクトレンズ装用、点眼薬、糖尿病、外傷、手術、知覚定価、ムチン異常、結膜弛緩など様々な要因があるが、まぶたは眼表面の恒常性を維持する働きがある。 そのため術後も「いかに自然で意識しない状態にするか」が大切になるのだが、実際には術後に副涙腺障害や開瞼時の肌露出面積が増大し過ぎることでドライアイになるケースが多いという。対策として副涙腺は瞼板直上のミュラー筋内もしくは少し前方にあるためこの部分を損傷しないよう注意することと、瞼を挙げすぎないように調整することが大切です。なおPC端末を常に見ている患者さんは特にまぶたが空いている状態が長くドライアイになりやすいため、事前に確認するほうがよい。
特に最近は60歳以上のトラブルも増えている。高齢者の場合、涙液が減少しているため手術によって上瞼を挙げすぎるとドライアイや見にくさを訴えたり、下眼瞼の弛緩によって閉瞼不全,夜間兎眼となることもあるため上瞼を挙げすぎない配慮などが必要になる。
その他のトラブルとしては、術後の角膜形状変化によって乱視や角膜障害を起こすケースだ。角膜障害によって中には視力が0.7から0.01にまで落ちてしまい、眼瞼下垂治療どころか失明に近い状態になってしまっている患者もいることを理解し、より安全で丁寧な手術を心掛ける必要性もでてくる。
また、トラブル症例として最近多いのが糸の露出で、術後すぐには何も問題がなかったものの数年経ってからまぶたに違和感があるとして来院した患者に多い。原因は瞼板を貫くナイロン糸で、10年程度経過したナイロン糸が加水分解によって異物肉芽腫を形成するケースがある。しかしプロリン糸などではこのようなケースは起きず、また挙筋法で手術を行った場合も同様の事例は起きてないため、ナイロン糸による瞼板法での手術の場合、こういった可能性があるため、眼瞼下垂治療を行う際には特に注意すべきだろう。
最後に、解剖写真や症例写真で美容外科だけでは把握できない眼瞼下垂治療後のトラブルについて詳細を解説していきたい(フォーラムの性格上、詳細は控えさせていただく)。