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エステの顧客を誘引 「脱毛」で集患、「他施術」で追加契約

[ 2015/5/22 ]

美容医療マーケットは今年も順調に推移すると本紙では予想する。その根拠には何よりも需要層のすそ野の広がりがあり、いまや若年層よりむしろシニアさらには60歳以上の元気なシルバー層へと患者の年齢幅が広がっているといっていい。かつての「美容整形・美容外科」時代から「美容アンチエイジング」市場へと変わりつつあるマーケットニーズの転換期を迎えている。
受診動機の多くが、コンプレックスからより「若返り」「自然美」へと移り変わってきたからだ。しかしそんな楽観的な市場予測にも落とし穴は潜む。一般医療とは違い、美容治療では医師と患者との委任契約に近い関係性をもつため、説明義務を医師側が怠れば、患者(消費者)からのクレームを抱えることになる。昨年大々的にマスコミに報じられた大手美容クリニックに対する損害賠償を求める「集団訴訟」はその例にもれない。また、ネット広告の規制がさらに強まる傾向にあり、集患対策は美容医療業界にとっては喫緊の課題といえよう。本稿では2回にわたり、2015年の美容医療を占う、その二は医療脱毛の行方を追った。




 いま、安価な医療脱毛が広がっていくことで美容クリニックのあり方に変化が起きてきている。
脱毛は毛周期に合わせて5回程度の施術が必要なため、露出が増える夏に向けて脱毛を開始する消費者が多い。消費者のニーズ拡大にあわせてサービス提供側も年明けから広告展開を強化しているようだが、今まではエステサロン中心だったプロモーション活動に、昨年頃からクリニックによる医療脱毛広告がかなり増えてきている。
「エステの脱毛は安い」。「医療脱毛は高いけど、効果がある」―。
今まではそのような棲み分けがあった気がするが、この壁も今や、すでになくなりつつあるようだ。
「両わき脱毛5回1000円」。脱毛関連ワードでネット検索をすると出てくる広告文のひとつだ。
驚くのは、それがエステサロンの広告ではなくクリニックの広告であるという点だろう。
ホームページの医療広告規制が厳しくなり、昨年からgoogleやYahoo!のリスティング広告のリンク先において、大々的なキャンペーン告知や明らかな虚偽の症例写真・体験談の掲載がNGとなった。この広告規制に則り、クリニック側も様々な知恵を絞り対策を取りながら広告展開を行っている。

そんな中で目に飛び込んできたのは、エステサロンと間違いそうな価格体系の医療脱毛の広告文だ。「両わき脱毛5回コースが1000円」。広告文のリンク先は、広告規制を意識しているからだろうか、ランディングページの下方にそれほど目立たない形でこの金額が記載されている。
わき脱毛が5回で1000円というと、1回あたり200円ということになる。医療脱毛は、当然医師による診察等が伴うと思われるが、この料金でのサービス提供が可能なことに驚きを隠せない。
様々な美容医療の治療の中でも、このように医療脱毛を集客の目玉としているクリニックが増えてきている。理由はエステ脱毛の定着によって脱毛をする女性が増え、さらに低年齢化しマーケットが拡大したことによるところが大きい。
ヒアルロン酸、ボトックス、糸によるリフト術など様々な美容医療の技術が話題になってはいるが、それでも「医療脱毛」ほど裾野が拡大した施術はない。さらに、最近は幅広い年齢層でスマホが浸透したこともあり、消費者が手軽に様々な情報を得る機会が以前よりもぐんと増え、中にはエステサロンの脱毛効果に不満を持ったり安全性に疑問を持つユーザーも増えてきており、医療脱毛が注目されつつあるのは確かだ。
このような取り巻く環境の変化に適応すべくクリニック側は、消費者の信頼もある「医療脱毛」を集客の目玉とすることで、比較的容易に新規顧客を集めることに成功しているところも増えている。
前述のような、「両わき脱毛5回1000円」といった目玉企画で新患を獲得し、そこから他部位の脱毛や別の美容医療施術を勧めることで追加の契約を取る。トータルで見るとしっかり利益がでる構造になっているのだろう。

一方で消費者も情報を自在に収集できる時代だ。彼女たちを見ると、部位ごとに通うクリニックを替えているケースが多いことに気づく。ワキ脱毛はAクリニック、顔脱毛はB美容外科、VIOはエステなど…。
ヒアルロン酸等の注入術やリフトアップなど、医師の手技が重要な施術の場合はクリニック選びのためにかなりの下調べを行う消費者も増えているが、「脱毛は機械が悪くなければどこもそれほど変わらない」という認識のためか、クリニックやドクターにそれほどこだわりを持っておらず、価格重視で選択するユーザーが多い点も特長だ。

患者との信頼関係や医師の技術力が求められる美容医療だが、安価な医療脱毛が拡大することで、この方程式に変化が起きそうだ。ただ看板を構え待っているだけでは競争に勝ち残れない今、医師としての倫理感とあわせて、独自の経営判断が求められている。



(JHM126号より)

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