再生医療新法、美容業界は追い風に
クリニック内委員会で審査、届け出に
再生医療新法に関わる2法「安全性確保法案」と「改正薬事法」は、03年11月20日の参議院本会議で可決成立し同27日に公布されたが、今年11月27日に予定どおり施行された。それに伴い運用ガイドラインも正式に定められ、再生医療のリスクに応じた三段階の提供基準と治療計画の届け出などの手続き、さらには細胞培養加工施設の基準、許可などについても盛り込まれた。これによりiPS細胞や体性幹細胞などの細胞加工物を用いた再生医療を実施する医療機関に対しては、ガイドラインに準じた治療をしているかどうかを第三者機関が審査し、厚労相に再生医療提供計画書の提出を義務付けることになった。再生医療を目的として細胞治療をリスクに応じて第1種、第2種、第3種と分類し、レベルに相応した審査と実施手続きが進められるが、懸念されていた脂肪細胞注入やPRPなど美容医療で多用される再生医療技術は相同利用(厚労省課長通知 省令第3条第4号)であれば第3種のリスクに分類され、厳しい審査が課せられる第2種への分類から免れた。また幹細胞については培養細胞を用いた「治療目的」の再生医療については第2種に組み込まれたが、培養を用いない幹細胞で「美容分野」での治療は予想どおり第3種のカテゴリーで決着した。手続きは、1年の猶予期間が与えられ、来年05年11月25日に完全施行される。
運用ガイドランを発布した政令ではまず、再生医療技術の範囲を定めており、(1)細胞加工物を用いた輸血、(2)造血幹細胞移植、(3)精子や未受精卵を培養その他加工を施す生殖補助医療などを除外した上で、細胞加工物を用いた再生医療をすべて対象にした。
iPS細胞はいうまでもなくES細胞、体性幹細胞、培養表皮、軟骨さらにはリンパ球活性化療法や樹状細胞療法などその対象範囲は広い。そして懸念されていた濃厚血小板血漿PRPや幹細胞培養液などの細胞加工物でない範囲にも今回の規制枠を設けている。
ただ、当初想定されていたPRP治療の第2種分類では、相同利用であれば第3種に振り分けられることになったことで、美容医療業界はひとまずは胸をなでおろした格好だ。この「相同利用」という言葉は医療人であっても馴染みがあまりない。行政特有の言い回しで、『細胞もしくはその技術が、再生医療を受ける患者の再生医療の対象となる部位の細胞と同様の機能をもつ細胞の投与方法』だ。
わかりやすくいえば、腹部から脂肪細胞を採取し当該細胞から脂肪由来の幹細胞を分離して、皮膚、頭皮、乳がんなどの再建、美容再生を目的に患部に投与することが「相同利用」である一方、糖尿病の治療目的で経静脈などに投与したりする脂肪細胞の再生、再建目的ではない場合は「相同利用」に該当しない。同じことはPRPにも該当し、末梢血を遠心分離し培養せずに用いる場合、皮膚や口腔内への投与は「相同利用」となり、関節腔内や血流の乏しい組織に投与すれば「相同利用」に該当しないことになる。
最も関心がもたれてきた幹細胞による再生医療については、培養細胞を用いた「治療目的」の再生医療については第2種に組み込まれたが、培養技術を用いない幹細胞の「美容分野」の治療は第3種のカテゴリーに分類された。
第1種2種で義務付けられる審査申請機関である「特定認定再生医療等委員会」は、再生医療の技術や法律、専門家などの有識者で構成され、その委員は厚生労働省が認定、付託する。委員には高度な審査能力や第三者性をもつものとなっており、第1第2種に分類される再生医療は厳しい審査基準を課せられるため、認可されにくい。受け皿には東大、千葉大など5大学機関になるという。
一方、第3種の「認定再生医療等委員会」はその委員や審査基準も緩やかで、クリニックの開設者いわば理事長、院長が独自に施設内に委員会をつくり、申請および審査を行う。その履歴と必要となる書式4枚(治験計画書など)を作成して各地方厚生局に提出(届出)し、厚労相への届け出制となる。
構成される陣容は、男女両性を基本として、所属機関の異なる2名の医師、1名の法律(または行政書士)もしくは生命倫理に見識のある者そして一般の立場をもつ者と規定されている。これらの委員は複数の認定委員会の委員を兼務しても構わない。
つまり「委員は重複ができるため人的な手配をJAASアカデミーが相談役になってもいい。また申請書類は決して難しくない。この点でもアカデミーが相談窓口になることも可能だ」と、12月7日開催された幹細胞(SVF)若返り術ライブ講習会で今回のガイドラインを解説した中間 健・JAASアカデミー副学長は受講者に投げかけている。
また猶予期間は1年間あるが、5月くらいまでに厚生局に届け出申請することがベストだという。05年11月25日完全施行日に押し迫ったころになると、申請も駆け込みを迎え担当官も多忙を極めることもあってチェックが厳しくなることが予想されるからだ。
なお届出を怠って、第3種の当該再生医療を行った場合は、3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科が課せられる。
前述の中間医師曰く
「申請、手続きを踏んで堂々と治療、施術をしていくことでかえって幹細胞、PRPの美容医療技術に対する信頼性が増すはず。今回の規制はかえって追い風になることは間違いない」と断言した。
(JHM124号より)