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公開講座講演 その二 JAASアカデミー第1回春季公開講座

[ 2014/9/12 ]

美容整形のトラブル訴訟 
「増える医療クレームと低侵襲術の対応と判例」
(京橋法律事務所 鈴木 英之弁護士)

121号2面 写真盛況のうちに幕を閉じたJAASアカデミー第1回春季公開講座(5月25日)の中から、話題をさらった講演をダイジェストで紹介してみたい。前号の中間 健医師「ヒアルロン酸注入による視力消失の報告」につづき、第2回目は「増える医療クレームと低侵襲術の対応と判例」(京橋法律事務所 鈴木 英之弁護士)をピックアップしてみた。

 以下、発表のポイントを鈴木弁護士の発言をもとに語り口調として再現してみる(話し言葉ではあるが文章化の際、多少の修正があることはお許し願いたい)。
アカデミー学長の山本 豊先生から与えられたテーマは、患者さんに訴えられたらどうする?訴えられないためのリスクマネージメントとして手術、施術の承諾書について具体的な判例をもとに話してほしい、とのことでした。時間の関係もあるので、要約しつつしかし、できるだけその宿題にお答えできるようにお話ししてみたい。


「過失」には、「手技・医療行為義務違反」そして「説明義務違反」の二つ

ご存じのように昨今、美容医療に対するトラブルの受け皿として皆さんが必ず耳にするところが、(独)国民生活センターでしょう。年々、消費者トラブル、クレーム件数は増加しており、今回のテーマでもある低侵襲術に限らず、エラ削り、豊胸、リフトアップなど内容もさまざまです。
公表される内容とは別に、センター側ではもちろん、そのクリニック、医師名、クレーム件数、詳細な被害状況などをつぶさにレイティングしていることは容易に推察できます。
では、こうしたクレームに対して医師が法的責任を問われる分水嶺がどうなのか?その「過失」とは、大きく分けて2種類しかないといっても差支えありません。「手技・医療行為そのものの過失・義務違反」そして「説明義務違反」の二つです。
前者は、手技の失敗ですがただし結果責任ではありません。医療水準から逸脱し、水準を下回る技術に対して責任が問われるということで、わかりやすくいうと『世界で唯一の技術をもった医師の水準ではなく、誰もが普通にできる技術を下回る』ことに対する過失・義務違反ということになるでしょう。
後者は一般的な用語として先生方が使われるインフォームドコンセントのことで、手技そのものについて失敗はなくても、事前の説明内容が不十分であれば、責任を問われるというものです。もちろん事案や患者さんごとにかなり異なることはいうまでもありません。


過去の判例そしてこれからの訴訟で避けられないのは「説明義務違反」

ここで一つ、わかりやすい事案をスライドでお見せしたい。これは10年前の判例で、いわゆる男性の陰茎を大きくするあるいは長くするという男性器の形成術に関する裁判記録です。
ここでは、当該美容形成手術の具体的な内容、成功の見通し、患部が治癒するまでのダウンタイム、患部の変化、術後の管理、起こりうる副作用など適切な情報を提供する、丁寧かつ具体的な説明の法的義務があるとされました。ここにご参加されている先生方も知っておられる「近時の美容医療における集団訴訟」でも、患者側についた弁護団の論点は、手術の失敗ではなく、説明義務違反で戦っています。
つまり、患者そしてその弁護団は必ず、美容医療の訴訟では「説明義務違反」で戦ってくるといってもいい。ここがこれからの美容クリニックと先生方が押さえておかなければならないポイントといっていいでしょう。

しかしどうでしょう。私の素朴な実感として、先ほどの判例のように丁寧でしかも十分に患者さんを納得させるために、口頭で長い時間を要して説明していくことが果たしてできるのか?ということです。なかなか難しいと思われる先生方が大半なのではないでしょうか?
そのためにどうするのか?という私の今回の宿題は最後にご説明するとして、もう一つのテーマである低侵襲のクレームとその判例をお示ししたい。
平成19年の判例です。結果は医師側の勝訴に終わりました。実はこの裁判では、患者さんが治療義務違反を主張したため、原告側の敗訴になったといえます。
(講演後の質疑応答の中で鈴木弁護士はこの際の損害賠償額が1200万円だったことを明らかにしている)
 この判例を逆説的に言い換えれば、説明義務違反で争われていれば、この裁判がどうなったかはわからないということです。


「訴えられないための」「訴えられた時の」心得は、日頃の手術承諾書の提示

さて訴えられないために、それではどうするか?訴えられた時のためにどう準備するか?
私の提言として、術前に患者さんにできるだけ十分な説明をして、その上でカルテに加えて、具体的な手術承諾書をつくっておくということです。
ここでお示した13項目に私なりに7項目を加えて20項目ほどのポイントとなる説明文章、場合によってはイラストも加えて承諾書をぜひ、お勧めしたいと思います(具体的な内容は会場内の医師らに配布されたが、ここでは差し控えたい)。



(JHM121号より)

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