メタボリックシンドロームとダイエット
来年からの新健診制度を見据えた製品展開
保健指導の委託基準は人員・施設・指導内容・記録の取扱・運営の5つ
素材別・アプローチ別、MS対応ダイエット
シルク、チアシードなど新たなMS対応素材も登場
MSの本質を捉えたEBM有る製品
来年度から特定健診・特定保健指導が導入される。これまでの健診・保健指導は、健診の受診率を上げることに重点が置かれ、保健指導はどちらかというと付加的なサービスという位置づけであった。
しかし、来年からはメタボリックシンドローム(以下MS)のリスクを有する人に対して、生活習慣改善を支援する形の保健指導へとシフトしていくと予想される。そのため、これまでのように保険者が行なってきた保健指導ではマンパワーが不足が目に見えているため、保健指導のアウトソーシングが必要となってくる。
そのアウトソーシング先の基準について、今年の4月に厚労省健康局が「標準的な健診・保健指導プログラム」の確定版が発表された。それまでの暫定版では、保健指導のアウトソーシング先の委託基準が検討中であったが、確定版では委託基準として具体的な部分まで決定している。その基準内容は、大きく5つに分かれており、①人員に関する基準、②施設又は設備等に関する基準、③保健指導の内容に関する基準、④保健指導の記録等の情報の取扱いに関する基準、⑤運営等に関する基準、となっている。これら5つの基準を満たしていれば、あとは保険者とアウトソーシング先との話し合いで決まるのだという。厚労省のほうに現段階でアウトソーシング先が決定している所はあるのかと質問したところ、正式な報告は受けていないが、何件かは決まったようだとのコメントもあり、来年までに続々とアウトソーシング先が決まっていく流れになりそうだ。
痩せている方がリスク高い?
先日発表された、厚生労働省研究班の調査では、高血圧・高血糖などのリスクを同時に抱えると脳卒中や心筋梗塞を起こす危険が高まるが、その程度は太っている人より痩せている人のほうが高くなりやすいという内容であった。
来年から特定健診・特定保健指導の導入が決定していることは本紙でも何度もとりあげている。国内ではMS対策が盛んに叫ばれており、将来的な医療費削減を見据えて、社会的な課題となりつつある。MSは医療的な知識の無い人でも分かりやすいように、腹囲を最初の目安として、男性では85cm以上、女性は90cm以上ということで、内臓脂肪型の肥満にならないようにと注意を喚起していた。ところが、今回の厚労省研究班の発表で、痩せている人のほうがリスクが高いのなら、太ったままでもいいのではと曲解する可能性が出てきてしまったのである。
厚労省研究班では90年に全国の保健所で健診を受けた約7200人の男女を10年もの間追跡し、死亡原因などを調べたのだという。BMIが25以上のいわゆる太った人が循環器病で死亡するリスクは、肥満でなく他のリスクもない人と比較すると、リスクが肥満以外に2つの場合は1.5倍であり、3つ以上だと2.4倍であった。
一方、BMIが25未満の人で同じ内容を比較した場合には、それぞれ2倍、2.8倍となり、BMI25以上の肥満の人よりも高かった。
この結果に対し、「痩せている人のほうが太っている人よりMSのリスクが高い」という見出しの報道があり、“太っていても大丈夫”、“太っているほうが安全”など誤解を招く捉え方になりかねない。発表をしっかりと見れば、現在のMSの診断基準では、痩せた人たちのリスクを見逃してしまう可能性があると、警鐘を鳴らしている内容だと分かる。
日本のMS診断基準では特に肥満が重視され、腹囲が一定以上であることが必須条件であるとは先述した。ウエストサイズの数値については、現在も議論が行なわれているが、そこに厳密な意味があると考えるのはナンセンスではないだろうか。一般の生活者が将来的な疾病リスクに対し危機感を持ち、予防を意識してもらうように理解しやすい腹囲を基準にしていると考えるべきである。
医療側から見たMSでは、痩せている人でもMSリスクを説明できるような、より専門的な見方が求められる。では、MS診断とその予防について、何が重要なのか?そこにはMSの本質を見据えることが必要となってくる。
MSを予防するということは、高血圧や高血糖、高脂血漿などを予防するということであり、これらは医療側からであれば、詳しく説明できる。これまでも運動指導や食事指導を行なってきたのにもかかわらず、中高年の男性2人に1人が対象や予備軍という現状では、これまでのような運動指導や食事指導だけでは限界があることは明白であり、何か一手を加えないと対応出来ないのではないだろうか。そこでMSの本質を捉えた更なる一手として、サプリメントや機器によるMS対応が医療機関で必要となってくるのである。
208名もの臨床データのあるサプリ
MSの本質を捉えた予防を行なうのであれば、腹囲以外のリスクも低減させることが必要となってくる。リスクを一つでも減らすことで発症率が大きく下がることから、中性脂肪・HDL、血圧、血糖値について悪い数値が出ているor出る前からの予防がプロフェッショナルなMS対策となってくる。
発売前に208名によるヒト臨床を行なった製品がある。それがドクターセラムの「シルクフィブロイン」。
シルクフィブロインとはシルクに含まれるフィブロインというタンパク質のみを特殊な製法によって抽出したものである。シルクフィブロインは吸脂性多孔質をもち、体内の余分なコレステロールや脂肪を吸着し乳化した状態で排出する。体内に入ったシルクフィブロンの50%は血中に入り血中のコレステロールなどを吸着し、残りの50%は腸で吸収されずに体内の脂肪を吸着し排出するというメカニズムなのである。
先述したように発売前に208名のヒト臨床を行なったが、非常に効果のあった項目は糖尿病とも関係の深いHbA1cであった。薬剤でもなかなか改善しないといわれているHbA1cが、1ヶ月の試飲で208名の95%が改善したという驚きの数値が出ている。
効果が表れたのはHbA1cの数値だけではなく、総コレステロールや中性脂肪、LDLやHDL、血糖値、GOTやGPTなど肝機能についてなど9項目で有意な結果が出た。このヒト臨床では食事制限や喫煙、飲酒など全く制限をかけていないということも付記しておく。
現在ではエステティックサロンや整骨院、漢方薬局からの引き合いも多いとのこと。製品説明がしやすいから売りやすいという声が多く、今後はクリニックにおいての販売チャネルの拡大にも力を入れていくとのことだ。
医療機関で生れた低GI代替食
最近、「低GI」という言葉がTVコマーシャルなどでも良く耳にするようになった。GIとはグリセミック指数の略で、食物摂取の際の糖分吸収の度合いを示す。このGI値が高いと食後に糖分が早く吸収されるので、血糖値が高くなる。そのため、低GIだと食後血糖値の上昇を抑え、インスリンの急激な分泌を抑制し、脂肪の蓄積を防ぐのである。
この低GIを主眼に置いた代替食ドリンク「インゾーン」を販売するイノバティスファーマでは、製品を医師向けにシフトしつつある。
このインゾーンは、スウェーデン大のスティーン博士が臓器移植や心臓・胸部外科手術後に患者の体力を回復するために考案した栄養食品をもとに、改良した製品。
体に必要とされる5大栄養素や必須アミノ酸、ω3・6といった必須脂肪酸も含有され、原料は自然素材というこだわりの配合となっている。
医療向けにシフトするだけあって、EBMも豊富だ。スウェーデンでは血糖値だけでなく、血圧や体重、腹囲においても改善効果が確認されている。さらに日本型のデータを蓄積するため、6月からは30名3ヶ月間の臨床を開始するのだという。
もともと医療機関から生れた低GIドリンクなだけに、MSが声高に叫ばれているなか、医療機関での活用はすごく自然な流れである。
代替食としては、満腹感を促すことでMS予防にも繋げるという考え方もある。
ケミン・ジャパンの「Slendesta(スレンデスタ)」は米国市場で販売しているポテトから抽出した活性成分である“PI2”が含まれた食品素材。血中のCCK(コレシストキニン)濃度を上昇させ、自然な満腹感を与えることがヒト臨床でも証明されている。満腹感だけでなく、食後血糖値の抑制効果や、エネルギー摂取量を減少させるという効果もヒトで確認されている製品である。
医師の使用率が高く認知度も高いL-カルニチン
弊紙が行なったDrアンケート(ダイエットサプリ・クリニックの差別化のためのサプリ)で、多くのDrが使用しているL-カルニチン。医薬品でもありサプリメントでもあるからこそ、Dr使用率が高いともいえる。
L-カルニチンは長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶためには必須なため、身体全体のエネルギー代謝に関わり、MS予防との関連も深い。
エネルギー代謝における脂肪代謝の調節酵素であるCPT-1(カルニチンパルミトイル転移酵素-1)にも“カルニチン”が入っていることからも、エネルギー代謝とL-カルニチンとが深い関係にあることが分かる。
L-カルニチンの大手サプライヤーであるロンザ社の日本法人であるロンザジャパンでは、同社製L-カルニチンである「カルニピュア」を展開している。先述したアンケートでDrが使用しているL-カルニチンは、カルニピュアを原材料に用いた製品がほとんどである。学術データをベースにマーケティング展開するほどなので、EBMは数え切れないほどある。
前号では少量摂取でも脂肪酸輸送に関わる酵素が顕著に増加したという内容を紹介したが、MS対応のEBMとして脂肪酸分解促進効果のデータもある(表参照)。18〜30歳12名に対し10日間摂取させ、安定同位体でラベルした遊離脂肪酸を経口摂取させ、被験者ごとにL-カルニチン摂取前後の体内燃焼量を呼気中の標識化炭酸ガスの量で経時的に測定した(測定中は特別な運動は行っていない)。結果は表のとおりで、L-カルニチン摂取後に経口摂取した脂肪燃焼量の有意な増加が見られた。
南米の伝統食でα–リノレン酸リッチなチアシード
南米の先住民が愛用していたというチアシード。食物繊維とω-3脂肪酸であるα–リノレン酸を多く含有しており、米国FDAも食餌療法サプリメントとして認めるほどの素材である。
ラティーナではチアシードオイル・ソフトカプセルを「Benexia(ベネキシア)」シリーズとして展開している。
ベネキシアはチアシードを低温圧搾することで、有効成分をそのまま引き出し、αリノレン酸が63%も含有する(自然界では最高の含有量)製品なのである。
安全性や有効性のデータとして、安全性では毒性試験、マウスによる血中中性脂肪への影響実験、チアシード配合飼料のブロイラー鶏肉・鶏卵でのコレステロールバランスへの影響などを行なっており、確認している。
さらに、ヒト臨床として、男性健常者8名に対しての二重盲検を行なっている。このヒト臨床により、血糖値吸収遅延作用とインスリン過剰分泌作用が確認されているのである。
同社ではチアシードをMS対応素材として、ドレッシングやソフトカプセル用にとOEM供給や原料バルク供給にも対応しているのである。
糖質と脂質両面でリスク軽減できるサプリメント
MSでは糖質をいかに減らすのかが鍵となるが、そのためには小腸のα–グルコシターゼの働きを阻害することが重要となってくる。
トヨタマ健康食品が販売する桑葉「DNJ®」は、α–グルコシターゼを阻害し、グルコースの生成と体内への吸収を抑えることができる。この結果は動物実験とヒト臨床で明らかにされており、さらには糖尿病ラットの実験では、空腹時血糖値の上昇を抑えたということも明らかにされている。
これは桑特有の成分であるDNJがグルコースによく似た構造を有しているからである。「DNJ®」はお茶、タブレット、顆粒と用途にあわせた3タイプ
さらに同社では、リパーゼの働きを阻害する「カシアノール」も販売している。カシアノールはカワラケツメイ(河原決明)から抽出したポリフェノール。このポリフェノールに強いリパーゼ阻害作用がある。カシアノールはSD系ラットの実験により、体重増加抑制、脂肪蓄積抑制、血中脂質低下作用が確認され、ヒト臨床で体重抑制、脂質抑制効果が確認されているのである。
DNJで糖質を、カシアノールで脂質を抑えることができるので、両方使用することでMSのリスクが大幅に軽減することが出来るのである。
食後高血糖にも対応、総合的“予防”サプリ
MSの大きな要因である血糖値。これまでは空腹時血糖が糖尿病の所謂指標であったが、近年では食後血糖が動脈硬化の促進因子という考え方に変化しつつある。
カキ肉エキスのパイオニアである渡辺オイスター研究所では、この食後血糖値が下がったというデータがある。食後高血糖の病態生理は、門脈に流入したブドウ糖を肝臓が十分に取り込むことができない状態である。糖尿病で肝臓が酸化ストレスの状態にあるとインスリン抵抗性を惹起し、食後の肝臓でのブドウ糖の取り込み率を低下させ、食後高血糖のひとつの要因となるのである。
そこで同社では、肥満2型糖尿病モデルマウスを用い、肝臓におけるオイスターの抗酸化作用と食後血糖に対する影響を検討したのだという。オイスター投与28日後の尿中8-OHdG濃度は、プラセボ投与群(n=16)43.66ng/mg crea、オイスター投与群(n=16)30.44ng/mg creaと有意に低下し、オイスターの抗酸化作用が再確認された。また、オイスター投与量と肝臓中過酸化脂質との間で、相関係数−0.4065で有意な逆相関が認められ、肝臓におけるオイスターの抗酸化作用が確認され、それと共にプラセボ投与群の食後血糖は、479.4mg/dlでオイスター投与群は360.4mg/dlと有意な低下が認められ、オイスターによる食後血糖低下作用が認められた。
最新の論文では、血糖値の落差が大きいほど血管内皮細胞にマクロファージが付着するという発表もされていて、薬剤による食後高血糖の管理は低血糖の危険性もあるため、食品による管理が望ましいとまで言われている。
オイスターには他にも血糖に関する研究内容が多くあり、MSだけでなく総合的な“予防”を意識したサプリメントとなっている。
脂肪は溶かさない・インディバ・ジャパン
近年、メタボリックシンドロームケアという訴求を積極的に行なっているインディバ・ジャパン。インディバ『CRet SYSTEM』のメタボリックシンドロームケアとはどのようなものなのか?
エステティックサロンやクリニックで、様々な用途に用いられているインディバ。そうした施設でその用途を取材すると“痩身のため”という答えが返ってくる。こうしたイメージが定着している故か、近年他社製のエステ用高周波やRFには、“脂肪を熱で溶かす”というようなイメージ戦略をとる機器が多い。
しかし、インディバの『CRet SYSTEM』は、”深部加温“はするが、その熱で脂肪を溶かしているわけではない。施術によって細胞に発生するジュール熱が、深部の温度を上昇させるが、それによって脂肪が融解するわけではない。温度が上昇することによる、細胞の代謝や血流が促進されることで、脂肪が消費されると考えられている。
図○はインディバの施術を行なったサーモグラフィーだが、背中への30分の施術で、頭部・胸部・腹部などが発熱していることが分かる。しかも、それは施術直後だけでなく、4時間後まで継続して上昇していることが分かる。これはインディバが単純に外部から温めているのではなく、細胞の代謝を促し、その結果発熱させ(当然その発熱にはエネルギーが必要であり)、脂質や炭水化物などのカロリーを消費していることが示唆される。
こうした施術を続け、食事指導や運動指導などを適切に行なうと、顕著な“痩身効果”を得ることができる。その結果を捉えて、一般的に、高周波・RF=脂肪を溶かすというイメージに繋がってしまっている。サーモグラフィーを見ていただければ、脂肪を溶かしているのではなく、代謝させているということがお分かりいただけることと思う。それによって腹囲を減少させ、結果的にメタボリックシンドロームの抑制に繋がるのである。