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アレルギー疾患対応と現況

[ 2007/8/6 ]

 

“国民の3人に1人がアレルギー症状”

 

ニーズが高まるアレルギー対応食品

 

免疫素材がアレルギー対応に参入

 

花粉の飛散量と一致しない罹患数

 

アレルギー対応素材は医療との係わりが重要

 

 

 厚労省の平成15年保健福祉動向調査において、国民の3人に一人が何らかのアレルギー様症状に悩んでいることが明らかとなった。この調査は国民生活基礎調査の調査地区から無作為抽出した300地区内におけるすべての世帯員約4万人を調査対象とし、皮膚、呼吸器及び目鼻にアレルギー性疾患でよく見られる症状がある人の状況を調査したもので、アレルギー性疾患の有無ではない。アレルギー性疾患対策への要望としては、専門医の配置やその情報を訴える人が多く、次いで医薬品の開発、それに続く形でアレルギー対応食品の開発をあげる人が多かった。こうした背景から、除去食品などアレルギー対応の食品や、昨今注目される、アレルギー低減機能を持つ食品に対しての消費者の注目は高い。さらに最近多く見かけるようになった外部からのケアと、抗がん免疫素材からの参入。本特集では、医療と連動した食品などによるアレルギー対応の状況を探る。

 

 

アレルギーとは

 

一般的にアレルギーには4つの型がある。即時Ⅰ型、即時Ⅱ型、即時Ⅲ型、遅延Ⅳ型の4つがあり、アトピー性皮膚炎や花粉症などはⅠ型に分類されている。即時Ⅰ型とは、IgE抗体と結合したマスト細胞や好塩基球の脱顆粒現象により、放出されたヒスタミン等の化学物質がアレルギー反応を起こしているのである。

 

アレルギー疾患の代表格、花粉症とアトピー性皮膚炎

 

 表を見てわかるように、花粉症には発症する過程がある。現在アレルギー、特に花粉症対策としては、医薬品や健康食品など、様々なアプローチがあるが、花粉症患者の発症ステップがどの段階なのかを見極め、ピンポイントで投与することが求められてきている。

 平成10年に発表された東京福祉保健局による「花粉症総合対策報告書」によると、都民の花粉症罹患数は年々増加しているのに対し、花粉の飛散量は年によって多かったり少なかったりと、比例しているわけではないことが分かる。

アトピー性皮膚炎の治療はステロイド外用療法をメインに、保湿外用剤などのスキンケアと、掻痒に抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤を併用することが基本とされている。

 しかし、子供に対してステロイドを使うことに対する親の偏見が強く、患者と医療従事者との充分な信頼関係が成り立っていない。ステロイドは経験豊かな医師の処方どおり用いていれば切れ味は鋭い。しかし、ステロイドに対する不安から使わなかったり、量が不十分であったりすると、医師は効いていないと診断し、より強いステロイドに切り替えてしまうため、副作用が悪化するという悪循環がある。患者の不安感を払拭するインフォームドコンセントが重要視されている。

これらのことからも、いかに症状を和らげることが出来るのかが、今後のアレルギー対応食品の果たす役割となるであろう。さらに最近では、抗がんを対象としていた免疫素材もアレルギー対応を打ち出してきていることから、アレルギー対応食品の競争は激化すると思われる。競争が激化するからこそ、エビデンスが重要視される。そこで、エビデンスを重視した抗アレルギー食材を以下に紹介していく。

 

花粉症に特化したEBMのある素材

 

 メディエーター遊離抑制薬の代替として期待されている植物エキス。植物のなかでも生理活性で抗炎症作用や抗酸化作用を持つシソ科のペパーミント。ミントリーフから精油を蒸留した残渣に含まれる有効成分を調査したところ、残渣にはポリフェノールが大量に残っていたという。

 残渣からの抽出エキスである「ペパーミントポリフェノール」を原料として販売する小川香料では、この抽出エキスにヒスタミン遊離抑制作用があることを発見し、アレルギーの中でも花粉症に特化している。

 同社では抗アレルギー薬の薬効評価にも使われるモデル動物を用い、くしゃみ反応や鼻かき行動、血管透過性亢進反応を調べたところ、有意に抑制することが確認された。これは、ミントポリフェノールに含まれる「ルテオリン-7-O-ルチノサイド」という成分がマスト細胞からのヒスタミン遊離を強力に抑制したことであるという。次のステップとして、ヒトでの臨床試験に臨む前に安全性試験も実施している。遺伝毒性、急性毒性、4週間反復経口投与、13週間反復経口投与試験の全てにおいて、安全性が確認されている。特に13週反復投与試験において、13週という期間は、花粉の飛散量とほぼ同じであることからも花粉症に特化していることが窺える。

 これら安全性試験を踏まえ同社では2003年にヒトでの臨床試験を実施している。成人ボランティア50名に対するダブルブラインド試験で、11300mgをエキスとして摂取した。試験開始1週前で診断し、群わけした。試験開始時と8週目に採血し、開始から2週ごとに診断を行なった。摂取4週目から鼻粘膜の腫脹に対し、有意差が図のように表れている。

 ミントポリフェノールの花粉症における作用点として、マスト細胞から花粉症刺激によるメディエーターの出現を防ぐということが、確認されたのである。

 現在同社では、作用点が他の素材と組み合わせることで有効なものはないのかと検討中だという。

 さらに昨年12月より、機能性素材のデータベースを発表。同社ホームページで会員登録をすることで、閲覧が可能となっている。味や臭いが扱いにくい素材に対して、それらを消すためにはどうしたらいいのかや、飲料に入れた際の臭いや味など、新規製品を考える際に非常に役立つデータベースとなっている。

 

即時Ⅰ型アレルギー対応素材「ローズクリスタ」

 

バラ花びら抽出物には先述した即時Ⅰ型アレルギーに対する素材として注目を集めており、表のように花粉症対応の医薬品では抗IgE抗体の代替品として用いることができる。

 東洋発酵では「ROSE CRYSTA(バラ花びら抽出物)」として原料販売を行っている。

同社において、各種植物熱水抽出液による酸素免疫法でヒトIgE-IgEレセプター結合の阻害作用を調べた結果、バラに濃度0.1%100%、濃度0.01%41%という結果が得られた。さらには有効成分として「オイゲニイン」を業界で初めて規格化。オイゲニインはタンニンの一種で、ヒスタミンの遊離抑制作用が確認されている。その他、ヒト培養マスト細胞を用いて、即時反応としてのプロスタグランジンD2PGD2)遊離率、遅発反応としてのサイトカイン(IL-8)遊離率の測定も行っている。それによると、PGD2は同位体希釈法を用いたGCMS法にて、IL-8ELISA法にて定量。各々の実験結果から、対照実験の値を100とし、各成分を加えた反応を百分率で求めた。結果として、PGD2IL-8の遊離率抑制が確認され、予防的に摂取しても、発症時に摂取してもアレルギーを抑えることが期待できるという。

 同社では今後、ローズクリスタを用いた化粧品と食品で皮膚の評価を行ないたいのだという。

 

SOD値の高い免疫素材であるチャーガ

 

 チャーガとは和名をカバノアナタケといい、現在ではロシアの白樺に寄生するキノコである。主要な生理活性としてはβグルカンであるが、βグルカンを主成分とする所謂免疫素材と呼ばれる素材の中では、圧倒的にSOD値が高いことが特徴。

 そのチャーガをティーバッグ化した「サンクト・チャーガ」を販売するパシフィック・サプリメンツでは、臨床データの取得・発表に力を注いでいる。

 昨年3月に行なわれた日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会でポスターセッションとして2題臨床データを発表した。1題は動物試験によるⅠ型及びⅣ型アレルギー試験を行い、マスト細胞からのヒスタミン遊離に対する抑制効果を確認。もう1題ではヒトでのプラセボ対称試験を行ない、花粉症症状軽減を見たところ、くしゃみ・目の痒みに関し、有効性が示唆されたという。同社では免疫素材としてはもちろん、抗がん作用についての臨床も行なっており、今年の日本薬学会でも放射線照射マウスに対しチャーガを与えた結果が報告される予定であるという。

 

スウェーデン発、血液を作るサプリメント

 

医療機関での活用がすすむビューティーポーレンの「ポーレンリフ」。スウェーデンで採取されるタンポポ・パセリ・キク・トウモロコシ・ライ麦・マツの花粉エキスであり、その成分は各種アミノ酸やペプチド、各種のビタミン・ミネラル、ω3、ω6系の脂肪酸、そしてグルタチオンペルオキシターゼをはじめ、厳しい環境での受粉に適応した、活性の高い酵素が含まれている。そのほか胚種細胞を成長させるための成長促進物質やホルモンなど、遺伝子を運ぶ花粉には、その発現のために必要な様々な物質が含まれている。ポーレンリフは自律神経やホルモンバランスを整えることで、赤血球が蘇るという、トップインタビューでもあるように“血液を作る”サプリメントである。

スウェーデンでは、赤血球脆弱度を測る100名以上のヒト臨床が行なわれ、国内でも認知症に対するヒト臨床が行なわれており、どちらも有意な結果が出ているという。

 

厚労省助成で効果が検証されているシジュウム

 

厚生労働省の助成によって、長年研究が続けられ、その効果が検証されているシジュウムは、平成9年から15年まで継続して研究の助成を受けており、エビデンスが充実している。お茶としても活用されるが、販売元のOSインターナショナルでは、スキンケアを重要視して、乾燥ケアと湿疹ケアの2種にクリームに加え、保湿するが使用感がべたつかない新製品「シジュウム・スキンクリーム ホワイト」の開発を行い、ユーザーの需要に応えているのだという。

 

このように、エビデンスを重視したアレルギー対応素材は多い。先述したように抗がん免疫素材が続々とアレルギー対応へ旗頭を変え、競争が激化してきている。アレルギーは、患者側が独学により治そうと思っても治るものではない。医師による適切な治療を受けなければ、治るものも治らなくなってしまう。しかし、医薬品ではどうしても副作用の問題があるため、患者側としては、医薬の使用にためらいを感じてしまうのである。そこで、エビデンスのある素材・商品であれば、副作用を気にすることなく飲用できるのである。

アレルギーという、いわば“重い”症状であるからこそ、医療との係わりが非常に重要となってくるのである。

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