「厚労省および消費者庁による美容医療への要望と今後の規制について」森上医師が提言
[ 2016/11/29 ]
厚生労働省・消費者庁が、美容医療業界の広告規制へより本格的に動き出すー
ーその理由は、消費者委員会が美容医療のトラブルが減少していないことを強く指摘してきたからだ。この「消費者委員会」とは、各庁の消費者行政全般に対して管理機能を持つ独立した第三者機関で、より積極的に消費者トラブルに対して目を光らせている機関だ。調査の結果、実際に問題が認められた場合は、内閣総理大臣や関係省庁の主任の大臣、消費者庁長官へその内容を建議する権限を持っており、特に、内閣総理大臣に対しては、消費者安全法に基づき報告する権限と、その後の措置について報告を要求する権限が与えられている。消費者委員会では現在、美容医療サービスの広告や勧誘、施術前の情報提供それぞれに課題があると指摘しており、特定商取引法専門調査会、消費者契約法専門調査会によって、それぞれ規律の在り方が検討されているという。先ごろ開催された第7回JAAS東京ライブフォーラムの講演で、冒頭こう概説した城本クリニック 森上和樹医師は、早晩、美容医療の広告や医療サービスに関わる一歩踏み込んだ規制が打ち出されると話し、「業界には危機感をもってもらいたい」と警鐘を鳴らした。
美容医療サービスにおける規制は、2011年に「美容医療サービスに関する消費者問題についての建議」が消費者委員会から厚生労働大臣及び内閣府に提出され、2012年には厚生労働省から「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針」(ホームページガイドライン)が策定された。しかしその後も消費者トラブルは増え続け、2014年には2011年の1.5倍以上の相談件数へと増加した。これらの現状を受け、消費者委員会は改めて医療情報の提供内容について厚生労働省へ再建議を行っている。
森上医師からは、こうした経緯と共に美容医療ユーザーからの具体的な相談について述べられ、「直近2016年4月には、相談にきた患者に対してしわ伸ばしの治療を30分で終わるからと即日施術を勧め、治療後に1300万という高額な請求をしてきた」、また「リフトアップ注射を800万円のものなら20年持続すると即日施術を勧められ断ったところ、徐々に値段を下げ400万円の治療なら5,6年は持続すると説明され、訳も分からず最初よりも安いので施術をしてしまったが、価格も法外だし、術後に効果を感じない」など、規制後も変わらず消費者相談が増えていることが報告された。
そして「残念ながら、今でも一部の美容クリニックの間では、このようなやりたい放題の営業トークで半ば押し売りともいえる治療を行っている」と指摘したうえで一部の悪質なクリニックによって業界全体に非が及んでいることを憂いた。
そもそも美容医療業界に広告規制がある理由は、医療は生命・身体に関わるものであるため、不当なサービスを受けた場合の影響が大きいこと、また専門性が高く、提供されるサービスの質を事前に一般消費者が判断しにくいことなどが挙げられる。
2012年のホームページガイドラインでは、虚偽や客観的事実と証明できないものの掲載(症例写真の加工、「絶対治る」などの表記、「○%の満足度」「○○研究所を併設」など)、優良性のアピール(芸能人の利用、「日本一の医師数」など)、過度なキャンペーンや早急な治療をあおる内容(「○○し放題」、「キャンペーン5千円」など)、さらにプレゼント企画や過度な体験談の掲載といったものを対象としてきた。
しかし、今回の新たな法令改正によって、医療機関のHPも場合によっては広告の範ちゅうに含めることになる可能性も否定できない。
「仮にHPも医療法の対象となれば、記載事項が大きく制限されクリニック概要、院長紹介、開院時間、施術内容など一般的情報のみしか掲載できなくなる」として、美容医療だけが例外扱いとされないことも想定できると森上医師は話し、そうならないためにも業界関係者には「危機感をもっともってもらいたい」と語気を強めた。しかし一方で、医療法そのものの改正には踏み込まないとして、ホームページガイドラインの範ちゅうで規制強化が図られる方向で進むとしている。
しかしながら、夏前より特定商取引法専門調査会、消費者契約法専門調査会でそれぞれ規律の在り方が検討されていることから、業界としてもすでに要望を出しつつ経緯を見守っているとして、だからこそ早急に「業界がさらに襟を正さなければならない」と、森上医師の講演に聞き入る参加医師らに呼びかけた。 また、森上医師からは、「厚生労働省では、このHP規制の監視強化のために来年度は4000万円以上の予算を投じ外部委託業者に依頼し、美容医療クリニックのHPを巡回する方向でいる。またPIO-NETという苦情相談収集システムを導入し、国民生活センターと全国の消費生活センターをネットワークで結び、情報を一元管理する方向で動いている」と指摘したことからも、こうした監視強化の流れは間違いない。
さらにセンターからは、施術を受ける患者向けの対策としては「消費者教育の推進」として、患者の理解・同意をきちんと得た上で施術を行うように即日施術を慎むよう徹底させるのとあわせ、医療機関や役所等に即日施術を思いとどまらせるようなチラシを据え置くなどで注意喚起を行うようだ。
講演終盤にはいり、「その他、脱毛やレーザー治療など長期契約の治療についてはクーリングオフの導入、薬監証明発給の適正化なども同時に行われる」と述べ、美容医療サービスを取り巻く消費者との契約、諸手続きなどが厳しくなることを強調した。
このような行政の動きを受けて美容医療業界では、「形成外科・美容外科の学会が主導して広告やHPの自主規制を設ける他、節度ある勧誘を行うようにインフォームドコンセントを徹底すること、さらに手術時の手技・質の向上、そして術後の返金や示談などの相談にも十分に応える体制を整備するなどが必要だ」と森上医師は提言した。
そして、森上医師からは、業界に対する規制が厳しくなっていることは懸念事項であり憂慮すべき問題ではあるが、大前提として、まずは消費者に対し真摯に医療サービスを提供することが我々の義務であることを履き違えずに、安全で安心できる適正な美容医療サービスの提供を徹底していく必要があることも付け加えた。
ーその理由は、消費者委員会が美容医療のトラブルが減少していないことを強く指摘してきたからだ。この「消費者委員会」とは、各庁の消費者行政全般に対して管理機能を持つ独立した第三者機関で、より積極的に消費者トラブルに対して目を光らせている機関だ。調査の結果、実際に問題が認められた場合は、内閣総理大臣や関係省庁の主任の大臣、消費者庁長官へその内容を建議する権限を持っており、特に、内閣総理大臣に対しては、消費者安全法に基づき報告する権限と、その後の措置について報告を要求する権限が与えられている。消費者委員会では現在、美容医療サービスの広告や勧誘、施術前の情報提供それぞれに課題があると指摘しており、特定商取引法専門調査会、消費者契約法専門調査会によって、それぞれ規律の在り方が検討されているという。先ごろ開催された第7回JAAS東京ライブフォーラムの講演で、冒頭こう概説した城本クリニック 森上和樹医師は、早晩、美容医療の広告や医療サービスに関わる一歩踏み込んだ規制が打ち出されると話し、「業界には危機感をもってもらいたい」と警鐘を鳴らした。
美容医療サービスにおける規制は、2011年に「美容医療サービスに関する消費者問題についての建議」が消費者委員会から厚生労働大臣及び内閣府に提出され、2012年には厚生労働省から「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針」(ホームページガイドライン)が策定された。しかしその後も消費者トラブルは増え続け、2014年には2011年の1.5倍以上の相談件数へと増加した。これらの現状を受け、消費者委員会は改めて医療情報の提供内容について厚生労働省へ再建議を行っている。
森上医師からは、こうした経緯と共に美容医療ユーザーからの具体的な相談について述べられ、「直近2016年4月には、相談にきた患者に対してしわ伸ばしの治療を30分で終わるからと即日施術を勧め、治療後に1300万という高額な請求をしてきた」、また「リフトアップ注射を800万円のものなら20年持続すると即日施術を勧められ断ったところ、徐々に値段を下げ400万円の治療なら5,6年は持続すると説明され、訳も分からず最初よりも安いので施術をしてしまったが、価格も法外だし、術後に効果を感じない」など、規制後も変わらず消費者相談が増えていることが報告された。
そして「残念ながら、今でも一部の美容クリニックの間では、このようなやりたい放題の営業トークで半ば押し売りともいえる治療を行っている」と指摘したうえで一部の悪質なクリニックによって業界全体に非が及んでいることを憂いた。
そもそも美容医療業界に広告規制がある理由は、医療は生命・身体に関わるものであるため、不当なサービスを受けた場合の影響が大きいこと、また専門性が高く、提供されるサービスの質を事前に一般消費者が判断しにくいことなどが挙げられる。
2012年のホームページガイドラインでは、虚偽や客観的事実と証明できないものの掲載(症例写真の加工、「絶対治る」などの表記、「○%の満足度」「○○研究所を併設」など)、優良性のアピール(芸能人の利用、「日本一の医師数」など)、過度なキャンペーンや早急な治療をあおる内容(「○○し放題」、「キャンペーン5千円」など)、さらにプレゼント企画や過度な体験談の掲載といったものを対象としてきた。
しかし、今回の新たな法令改正によって、医療機関のHPも場合によっては広告の範ちゅうに含めることになる可能性も否定できない。
「仮にHPも医療法の対象となれば、記載事項が大きく制限されクリニック概要、院長紹介、開院時間、施術内容など一般的情報のみしか掲載できなくなる」として、美容医療だけが例外扱いとされないことも想定できると森上医師は話し、そうならないためにも業界関係者には「危機感をもっともってもらいたい」と語気を強めた。しかし一方で、医療法そのものの改正には踏み込まないとして、ホームページガイドラインの範ちゅうで規制強化が図られる方向で進むとしている。
しかしながら、夏前より特定商取引法専門調査会、消費者契約法専門調査会でそれぞれ規律の在り方が検討されていることから、業界としてもすでに要望を出しつつ経緯を見守っているとして、だからこそ早急に「業界がさらに襟を正さなければならない」と、森上医師の講演に聞き入る参加医師らに呼びかけた。 また、森上医師からは、「厚生労働省では、このHP規制の監視強化のために来年度は4000万円以上の予算を投じ外部委託業者に依頼し、美容医療クリニックのHPを巡回する方向でいる。またPIO-NETという苦情相談収集システムを導入し、国民生活センターと全国の消費生活センターをネットワークで結び、情報を一元管理する方向で動いている」と指摘したことからも、こうした監視強化の流れは間違いない。
さらにセンターからは、施術を受ける患者向けの対策としては「消費者教育の推進」として、患者の理解・同意をきちんと得た上で施術を行うように即日施術を慎むよう徹底させるのとあわせ、医療機関や役所等に即日施術を思いとどまらせるようなチラシを据え置くなどで注意喚起を行うようだ。
講演終盤にはいり、「その他、脱毛やレーザー治療など長期契約の治療についてはクーリングオフの導入、薬監証明発給の適正化なども同時に行われる」と述べ、美容医療サービスを取り巻く消費者との契約、諸手続きなどが厳しくなることを強調した。
このような行政の動きを受けて美容医療業界では、「形成外科・美容外科の学会が主導して広告やHPの自主規制を設ける他、節度ある勧誘を行うようにインフォームドコンセントを徹底すること、さらに手術時の手技・質の向上、そして術後の返金や示談などの相談にも十分に応える体制を整備するなどが必要だ」と森上医師は提言した。
そして、森上医師からは、業界に対する規制が厳しくなっていることは懸念事項であり憂慮すべき問題ではあるが、大前提として、まずは消費者に対し真摯に医療サービスを提供することが我々の義務であることを履き違えずに、安全で安心できる適正な美容医療サービスの提供を徹底していく必要があることも付け加えた。