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09年~14年で相談件数は2倍へ(独)国民生活センター取材で

[ 2015/5/22 ]

前号(本紙インタビュー・東京都消費生活総合センターに聞く)に引き続き、消費者からの美容医療への苦情・相談の状況について報告する。2回目となる本稿では、独立行政法人国民生活センターへの取材で明らかになった統計値を示したい。同センターは全国の消費者生活センターと連携しており消費者問題における中核的機関を担っている。

とくに専門的な知識が必要な医療やIT等の分野は、売り手側の知識と買い手側が保持している情報に大きな差が出てしまい、双方で情報や知識の共有ができない「情報の非対称性」という状況が生じることが多々あるという。今回は美容医療分野で起きている問題点についてヒアリングをした。

2013年から顕著に増加
「危害」「治療効果」の相談件数6年で2倍

2009年度から2014年度までの6年間の相談件数の推移を見ると、美容医療に関する相談は1740件から2414件(平成27年4月8日現在)へと139%程度の増加となっている。2012年度までは微増傾向だが、とくに2013年度から増加傾向になっているようだ。相談内容の大半は契約方法や契約内容に関する相談が中心だが、この数年でとくに「治療結果」や「危害」に関する相談が増えているという。実際の数字で見ると、術後での危害に関する相談は、2009年度から2014年度までの間に293件から593件と、増加率202%と相談件数が約2倍に増えている。

さらにプチ整形や二重整形といった美容医療だけではなく、アンチエイジング・若返り治療が目立っている。2009年度は39歳以下の相談件数が157件、40歳以上の相談件数が117件だったのに対し、2014年度は39歳以下が274件、40歳以上が293件と中高年からの相談数が逆転した。この年齢の逆転現象も、全体の相談数が増えたという2013年から顕著になっている点は特筆すべきだろう。

なお、危害に関する相談件数ワースト10の常連組として毎年ランクインする業界としてエステ、化粧品があるという点も見逃せない。

 

しわ、たるみ、シミのアンチエイジング治療が上位
来院のきっかけは「ホームページ」が3割

2012年6月の報道発表によると、同センターに届く様々な治療相談の中でも、しわ・たるみ・しみなどアンチエイジング治療の相談が上位を占めている。また危害関連で最も多い相談は「しみができた」「痕が残った」「傷跡が目立つ」等の皮膚障害や熱傷で、これらで半数近い件数にのぼっている。

クリニックを選んだきっかけは「ホームページ」が最も多く32%、「雑誌広告」が18%、「フリーペーパー」15%と続く。さらに「明確な料金表示をしているクリニック」を選択したという消費者が24%、「治療方法や学会等の表示」や、「マスコミに取り上げられていたり広告を出稿している」クリニックを選択したというのが15%と続く。

さらに契約に関しては即日契約・即日施術を行っている消費者が58%と大多数を占めている。中には「当日契約なら割引する」という勧誘を行っているクリニックもあるようで、この部分も注意が必要だ。

 

最新の相談事例

実際にセンターに届いている相談内容についていくつか具体的に伺った。

「顎のたるみが気になり美容外科でヒアルロン酸注入を行ったが、左右差が出た」(2015年1月 70代女性)

「折り込み広告を見てフェイスリフトのプチ整形にクリニックを来院。カウンセリングを受けそのまま施術を行ったが、術後に顔が腫れて、アザができた」(2014年11月 70代女性)

「額のしわが気になりクリニックでヒアルロン酸を注入した。術後、治療した部分が化膿して別の病院で治療を受けた(2014年12月 50代女性)

「ネットで広告を見て、レーザー治療のトライアルをやってみようとクリニックに行ったが、6回コースを勧められその場で施術を行うことになった。術後に腫れが出ており、解約したい」(2014年12月 40代女性)

「ボトックス注射によるリフトアップを希望して美容外科にカウンセリングに行ったところ、ボトックスとあわせて顔のリフトアップを勧められ両方の治療を受けた。施術後、特に効果を感じず、また説明と異なる痛みがあった」(2015年1月 20代女性)

「ネット広告で見つけた美容クリニックにカウンセリングに行く。フェイスリフトの施術をしたが痛みが取れない」(2015年1月 20代女性)

 

センターが指摘する問題点
―煽り広告、説明不足、そして医師の技量

美容医療相談が増加する理由として同センターでは以下のような点を挙げる。

1.不安を煽る、割引を強調する勧誘方法―美容医療サービスは通常の疾患と異なり、緊急性は低いケースが多い。だがクリニックに行ったその日に施術を行う「即日施術」のケースが半数以上だった。強引な勧誘や当日限定の割引を行っていることが原因のひとつにある。

2.施術内容、リスクへの説明が適切ではないー自由診療が高額な治療であることが多い。また美容目的のため治療結果に対してもしっかりとした結果を求めている。十分な説明がない場合は特に、結果に対して不満につながるケースが多いようだ。

3.医療の質、危害に関するトラブルー「効果がない」など医療の質を問題視する相談も多い。提供する医療技術に問題があると思われるケースも寄せられている。

その他にも様々な問題点があるが、同センターでは、2013年から危害関連を筆頭に美容医療の相談件数が増加した理由として、2012年に厚生労働省の「ホームページの医療広告ガイドライン」が更新されたことによって、国や行政の啓蒙活動が活発化したことも関係しているのではないかと話す。

2012年のガイドラインの改正では、「誇大、過度な広告」「優位性の強調」「費用の過度な強調」といった内容のホームページ掲載を慎むよう指針を提示した。これにあわせ内閣府などの行政も、この指針に沿って美容医療に関する様々な情報発信や啓蒙する提示を発表した。その後、大手美容外科に集団訴訟が起きるなど、関連するニュースが多く出てきたことも関連しているだろう。

これらによって一般消費者へより多くの美容医療関連の情報が届くようになり、知識や関心が高まった結果、「潜在的なクレーム」が相談となって顕在化したのではないかと思われる。

同センターに寄せられる相談の中には、数年前の治療についてのものもある。「相談したくてもどうすればいいかわからない」消費者が、これらの情報によって消費者生活センターや国民生活センターに気づき、相談件数が増加した可能性は否めない。

国や行政、そして団体が正しい情報を消費者に発信していくことの重要性を改めて感じるとともに、美容医療の正しい情報を業界自らが提供していくべきであると再度確認させられた。

 

(JHM126号より)

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