2015年エステ市場はさらに「価格戦争」
海外展開するミス・パリ
2014 年度のエステティックサロン市場規模(事業者売上高ベース・矢野経済研究所)は、エステティックサロン市場規模は3611億円で、前年度比で101.6%の微増となった。微増とはいえ市場拡大を牽引したのが、大手脱毛エステサロンの売上の伸びである。本紙でも何度か取り上げている通り、大手脱毛エステサロンは数百円程度のキャンペーン価格で若い女性を集客しており、エステ脱毛に通うターゲット層を広めている点が全体の市場規模拡大へ拡大につながった。逆に痩身、フェイシャル、メンズエステ等脱毛以外のエステについてはほぼ横ばいで、それほどの伸長を示していない。2015年エステティック業界はどうなるか。業界動向や各社の動きをもとに考察してみた。
消費税増税などの影響もあり消費者の財布の紐は固くなっている傾向にある。特にエステは生活において必須のものではないためその影響を受ける可能性も大きいが、現状では横ばいという結果になっている。
矢野経済研究所によると、脱毛以外の分野でも前年程度の売り上げを維持している要因としてはアンチエイジング関連のサービスや物販が好調であることを上げている。
エステ脱毛は若い女性の取り込みを行っているが、それ以外のエステサロンにおいては30代以降の女性のアンチエイジング欲求をサービスに取り込んでいるところが多い。
コラーゲン、ヒアルロン酸等の美容成分を使ったマッサージケアやパック、さらに美容用LEDライトを使った幅広いアンチエイジング関連の施術を展開している。日本の人口も若年層が減少していく中、今後ますます30代以降のアンチエイジング・若返りニーズを取り込んだ施術は盛り上がりを見せてくると思われる。昨年ノーベル賞を受賞した青色LEDやフォトフェイシャル等の最新機種を使用した施術が注目されそうだ。
2015年も引き続きの伸びが想定されるのは、やはり脱毛エステ業界だ。低価格戦略ですでにかなりのユーザーを取り込んでいるように思うが、脱毛の場合、「施術対象部位」が多数ある点が他のエステサービスと少し異なるビジネスモデルになっているようだ。
ユーザーも賢くなっており、ひとつの脱毛サロンで全ての部位を脱毛するわけではなく「ワキは●●エステ、でも顔は○○エステ」など、部位ごとに最低価格のエステサロンで施術を行っていることも増えている。キャンペーンやクーポンを活用して複数のサロンを転々としているユーザーもいるが、彼女たちにとって脱毛エステは「どこでもそんなに変わらない」という意識があるようだ。痩身、フェイシャルの場合は施術者の技術力や使用する機械によって結果が変わることもあるが、脱毛は「毛がなくなる」という目標を達成するのであればそれほどサロンにこだわりを持っていないのかもしれない。
このためサロン側は、逆に全部位の脱毛を自社で取り込むために施術以外に会員の囲い込み施策を行っている。会員専用の美容グッズや化粧品やサプリメント等の関連商品の販売を通して、他サロンとの差別化を図っている。
また、エステサロンにおける脱毛(エステは本来減毛、除毛が正しい)は、以前から指摘している通り医療行為とみなされる可能性も高く、危険なグレイゾーンのサービスである点も否めない。多くのユーザーが手軽に脱毛を行っている反面、「脱毛の際に火傷した個所の傷が消えない」「脱毛したけど一向に毛がなくならない」等のクレームや相談が多くある点も事実だ。
ここまでエステ脱毛市場が拡大すると、関連する商品・サービスが増えるため厚生労働省等も摘発を躊躇している可能性がある。しかし、とは言えここまで成長してしまった以上、何かしらの指導を与えない限りますます価格競争が激化し(すでに0円という謡い方をしているサロンもあるが…)苦情やクレームも増えてくるだろう。
2015は、脱毛エステの業界において行政からの規制や摘発など何か動きがありそうな気配もある。
エステサロン全体としては、施術だけではなく関連商品やサプリメント等の物販を強化する動きは今年も続きそうだ。大手サロンを中心に昨年話題となった酵素やミドリムシを使ったサプリやゼリーの販売を開始したり、エステサロンにヘアサロン、ネイルサロンも併設した新しい店舗展開を行うなど、施術以外の様々なサービスを一緒に提供する流れはますます強っていく。
さらに、ミュゼプラチナムやミス・パリ、ソシエグループなど大手を中心に海外展開する例も増えてきている。日本の技術力や質の高いサービスを海外でも同様に提供するのが目的ではあるが、海外の場合、費用や施術内容などエステへ求める内容が日本とは少し異なっていることも多く、現地のサロン以上の集客ができている会社はまだないように感じる。
海外展開においては、店舗をオープンするだけではなく継続した安定売上を上げる面で多くのサロンが悩んでいるようだ。
2015年は、引き続き「脱毛エステブーム」、「アンチエイジングニーズの取り込み」、さらに「物販」や「既存サービスの多角化」がキーワードになりそうだ。
(JHM125号より)