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血圧、コレステロールなど薬漬け医療が死亡率を高める!?

[ 2015/3/16 ]

月刊「文芸春秋」の昨年11月号の近藤誠医師の記事が話題を呼んだ。
近藤先生といえば、慶応大学医学部講師で「乳がんは切らずに治る」(文芸春秋)を出版後、一躍脚光を浴び、手術、抗がん剤、放射線などの現代療法にあり方に一石を投じた医師として知られている。
この近藤医が今度は健康診断を「命を縮める」などとして、血圧、コレステロール、血糖値の医療介入に疑問を投げかけている。
日本人の平均寿命は2013年には男性が80.21歳、女性が86・61歳で、ともに世界一となっている。 
ところが健康寿命との間に男女ともに10年近い差がある。この間、人は不健康な状態であり、生活習慣病やボケや寝たきりになる人も多い。
そして健康診断がこの健康寿命を短くし、死亡率を高める可能性があることを、近藤さんは研究データを上げて指摘する。人間ドックなどの健康診断を受けた大半の人は血圧やコレステロール、血糖値に異常が見つかる。

この検査で異常値が見つかった人でなにもしない「受けっぱなしの人(放置群)」と病院にかかり「医者があれこれ指示し、薬を処方(医療介入群)の人」の比較試験(フィンランド)を紹介している。
対象となった人は40歳~55歳の元気な男性で、総コレステロールが270以上、中性脂肪150以上、血圧の上が160~200、下が95~115の明らかに高い値を示した1200人で、試験はこれらを2つのグループに分けて行われた。
試験開始15年で年間の総死亡率は医療介入群が、放置群を総死亡率で46%も上回っている。つまり健康診断で血圧などの異常が見つかって、医者に罹って薬を飲んだ人の方が健康を害して死ぬ確率が明らかに高いことになる。

なかでも近藤先生は薬の問題を指摘する。
例えば血圧では上が140~159、下が90~99という軽度の高血圧症の人を対象にした比較試験で、高血圧の薬を使った人の総死亡率は使わない人と比べて減らないばかりか、血圧がさらに高い中程度の高血圧の人では薬で血圧を下げると死亡率が高くなる傾向がある。80歳以上の高齢者では明らかに死亡率が高くなるとの研究を紹介している。
コレステロールでも薬を摂っても総死亡率の減少は認められない。薬でコレステロールを180未満に下げると心筋梗塞が増え、総死亡率が跳ね上がるという。総コレステロール値が高いと身体に悪いという証拠はないし、むしろ高い方が良いとの考えを示している。 

このコステロール問題は日本脂質栄養学会が示している見解と同様だ。数年前に日本医師会や動脈硬化学会と論争になって、マスコミをにぎわしたことがあるが、日本脂質栄養学会によると、コレステロールは高い方が健康的で、家族性高脂血症の家系はみな長寿で健康だという。
逆に薬(スタチン)を使って下げると、心臓病死が増加することを指摘している。
2010年には同学会で「コレステロールは高い方が長生き」とするガイドラインを公表している。また昨年には現行のコレステロール低下医療を変更するように緊急提言を日本動脈硬化学会に対して行っているほどだ。
話を戻すが、近藤医師はさらに糖尿病でも指摘する。血糖値の検査値でHa1cが使われるが、7~9の糖尿病の人を薬で正常値の6.5未満にすると総死亡率が上がるとの研究もあるようだ。
血圧、コレステロール、血糖も異常値に薬を使って下げると、ボケにつながることも指摘している。

原理は簡単のようで、血圧を下げると脳に血流が行きづらくなる。コレステロールは脳に必要で、脳へのエネルギー供給で血糖も下げると危ない。ところが日本の高齢者の多くがこうした薬を処方されている。このため日本の高齢者のボケの原因になっている可能性があるとも指摘されている。

 健康診断の検査値は長い間、健康づくりに使われてきたが、今年は人間ドッグ学会が血圧やコレステロールがもっと高い値でも健康だとの発表をして物議をかもした。
さらにこの数値をわざわざ引き下げて薬を使うようにしていると指摘する声もあり、薬漬け医療の問題もあって、薬中心の医療は見直しが迫られている。


(JHM125号より)

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