JAASアカデミー
TEL
お問い合わせ
一般社団法人 JAAS日本アンチエイジング外科学会

JAASアカデミー

一般社団法人 JAAS日本アンチエイジング外科学会

TEL

お問い合わせ

医療ツーリズムのツケ?韓国で規制かかる

[ 2015/3/13 ]


一昨年、昨年そして今年と、アジアの美容整形大国を自負する韓国が逆風に晒されている。
海外需要を取り込むため韓国政府の医療ツーリズム政策によって、業界への保護政策「治療収入に対する非課税の恩恵」が昨年撤廃され、いわゆる「ぜいたく税」とも言われる付加価値税が導入された。これによりすべての「美容医療」に対して10%の課税を課すことになった。

さらに、追い打ちをかけるように、美容整形の広告に対して韓国ソウル市当局による規制のメスが入った。市営地下鉄の駅構内に掲示される広告物を当面ターゲットに置き、全広告のうち「美容整形」に関わる宣伝物を20%以下に抑え、とりわけBeforeAfter写真など内容にも検閲を入れ取り締まりが強化された。 
そして今年、公正取引委員会が年末、年始から韓国の正月(ソルラル)や中国の正月(春節)にあたる2月中旬までの〟整形需要〟のピーク中に「虚偽・誇張による美容整形の広告」を集中的にモニタリングすることが明らかになった。すでに保健福祉部では医療法尊守事項公文書により、違反事例が確認されれば医療法第89条により懲役もしくは500万ウオンの罰金が科されることになる。

一連の規制、摘発の背景には国内需要もさることながら、中国などからの医療ツーリズムによって需要が喚起されたことから、勢いクリニック間の競合が激しさを増し、虚偽や扇情的な広告宣伝が目につくようになったためだ。ひるがえって、こうした結果を招いた遠因の一つには医療ツーリズムを政府あげて推進してきた結果だとする声もあり、そのツケが回ってきた感は否めない。
先述のとおり保健福祉部の公文書では「患者の治療経験談の広告は禁止しており、ネット上やブログでも掲載は禁ずる。とくにこうした治療経験談には、クリニックから業務委託として、広告代理店が虚偽の体験談を掲載するケースが少なくなく、医療法上虚偽広告に該当するため禁止する」とした通達も出ている。

一方、取り締まりを強化したソウル市営地下鉄に関わらず、ネットやSNS、ブログなどにまで違法な美容整形広告が今でも氾濫しており、保健福祉部など関係行政機関からの検閲だけでは一向に追いつかない。違法とされる広告の多くが「同一条件で撮影されていない術前術後の写真」「治療期間、副作用情報が掲載されていない」などで、なかには「副作用なし!満足度100%」などとした過剰な広告も堂々と掲載されているという。
とりわけ取り締まり強化の網を潜り抜けて露出度が高いのがネットとSNS、ブログで2014年に実施した韓国消費者院による「美容整形広告の媒体調査」でそれぞれ41%、23%、15%の割合でユーザーが利用している実態が浮かび上がった(複数回答)。
 さらに同院によれば、消費者からの苦情、被害は過去4年間で1万7596件にのぼっている。
韓国美容整形の最大の魅力が治療費であることはいうまでもない。二重瞼(切開)11~14万円、同埋没法9~11万円、下眼瞼脱脂9~11万円、鼻尖形成14~16万円、隆鼻11~14万円、鷲鼻矯正18~27万円、口唇ヒアルロン酸注入7~14万円、豊胸46~55万円、バストアップ36万円、陥没乳頭治療9~14万円、脂肪吸引27~45万円、へそ整形14万円、大腿部脂肪吸引32~45万円、ふくらはぎ痩身23~27万円、両顎修正120~136万円と日本に比べ治療費は圧倒的に割安だ。
しかし一方で、医療事故、クレームが絶えないのも事実で、中国など海外からの患者がトラブルに巻き込まれるケースも少なくない。本紙でも報じてきたとおり、侵襲性の低いヒアルロン酸注入でさえ、失明事故が起こっており、「報告されていない有害事象は相当ある」と先の症例報告をした仁済大の眼科医師は警鐘を鳴らすほどである。

医療事故を隠蔽しながらも宣伝合戦に明け暮れる韓国のクリニック(もちろん高い技術と安全性を担保した良心的な美容形成クリニックは韓国にも多い)だが、日本でも対岸の火事と見過ごさず、反面教師と捉え、襟を正していくことを願ってやまない。

(JHM125号より)

Copyright (C) JAAS ACADEMY. All rights reserved.