美容医療今どきの「集患事情」
美辞麗句の自社サイトを敬遠するユーザー
供給側(クリニック)の体験口コミから需要側(患者)が判断材料!?
多発する医療事故受け
「美容整形の失敗・修正の共有」テーマの講演がYouTube再生回数増やす
JAASアカデミーの技術研さんライブ動画もアクセス伸びる
新しい美容クリニックが次々と開設する中、クリニックにとって「集患」は、スキルの研さんと同じくらい重要だ。看板を出してWebサイトを作れば自然と問合せが来る時代ではない。〟今どきの美容医療の集患〝の実情を探った。
クリニックにおける集患は、もっとも重要な経営課題である。どんなに技術力が優れていても、設備が整っていても、患者が来なければ意味がない。
先日開催されたJAAS(一般社団法人 日本アンチエイジング外科・美容再生研究会)の第5回ライブフォーラムで講演した、クリニックFの藤本幸弘医師は「美容クリニックにおける経営強化学」の中で、「院長自身がミッキーマウスのようにキャラクター化・マスコット化し、自らがお客様を集められるような体制にすることが大事」と述べた。
確かに、技術力があっても相談しにくい雰囲気の医師や、治療法を一方的に提示してくる医師では患者も次第に不満が生じてくる。専門知識や技術力とあわせて、医師自身の性格や人柄を伝えていくことで、共感してくれる患者が自然と集まり、集患へとつながっていく。
ではユーザー側はどうやって魅力的な医師を見つけているのだろうか。実はユーザー側でも、クリニックを選ぶ基準に変化が起きている。
今までは、クリニックのWebサイトや雑誌・ネットに掲載された広告など、いわゆる公共の情報によって比較検討をすることが多かった。そのため、きれいな外人モデルを使った豪華なデザインのWebサイトや、美辞麗句が記載されている広告のクリニックに対し好印象を持つケースが少なくない。
だが今は、SNSなどを使い個人が自由に情報を発信するツールが増えたため、実際に治療を受けた体験者の声も比較的容易に入手することができるようになってきている。このような、体験者の口コミで実情を把握することができるようになったのはここ数年の新しい動きだ。
「施術した医者の対応が悪かった」「受けるつもりもない施術を強引に勧められた」のようなコメントがあれば、Webサイトや広告がどれだけ綺麗でも施術を躊躇するだろう。多くの情報を事前に知りえるようになった今、建前だけではなく実情までを知った上でクリニック選びをする目の肥えたユーザーが増えている。
とはいえ美容医療サービスはまだまだ公にしにくい情報のため、一般的に行われているfacebookやtwitter等のSNSから発信されることはまだ多くない。現状では匿名性で投稿できる掲示板や口コミ投稿サイト、個人のブログ等が多く利用されているようだ。
いずれにせよ、パブリックな部分でいかに装っても、治療結果や日々の患者への対応といった部分が、クリニックも知らないうちにWebを中心に拡散される可能性があることは肝に銘じておくべきであろう。
大手クリニックなどでは、低価格なトライアルキャンペーンによって新規患者を多数集めているところも増えている。廉価なサービスは魅力的ではあるものの、残念ながら医療事故や訴訟の問題が起きている点は否めない。
こういった情報も、大手メディアによる情報発信だけではなく、実際に施術を受けた患者らによる投稿や情報発信によって、より広く知られるようになってきた。見かけではない、医師やクリニックの日々の真摯な対応が、美容医療業界でもやっと問われるようになってきたのかもしれない。
なお、これらの医療事故の報道を受けてか、JAASアカデミー主催のライブ講習会や先述のライブフォーラムの動画がYouTube動画再生の回数を増やしている。
とりわけライブフォーラムの録画映像の中で、講演テーマの1つとして「美容整形の失敗・修正の共有」を掲げたため、アカデミーで行われる関連のライブ講習会の映像や動画のアクセス数も伸びている。指導医が参加するドクターに手術、治療術を伝授していくライブ供覧・参加型では、技術研さん、技術の共有を目的としていることはいうまでもない。
そんな供覧する医師たちが真剣に技術を学ぼうとする姿勢が、視聴ユーザーにも伝わっているようだ。
キャンペーン等による過度な価格競争や見かけ重視の広告戦略ではなく、技術力は当然として、クリニックにおける日常の何気ない対応もよりしっかり行っていく必要があるだろう。
(JHM124号より)