睡眠学会で受賞 両親媒性抗酸化物質「E6」 血液脳関門の移行と中途覚醒抑制作用
7月徳島で開催された第39回日本睡眠学会学術総会で渡辺オイスター研究所・渡辺 貢代表(医学博士、畜産学博士)に対して、「ベストプレゼンテーション賞」が授与された。総会には医学部・医療機関が約8割、2割を研究者が占め2日間を通じて1500名の参加を得ている。主な研究機関は、筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構をはじめ、京都大学 医学研究科、九州大学、東京医科大学、慶応大学 医学部ほかそうそうたる医療・研究機関が名を連ね、あわせて346題の演題を数えたが、
本賞は6題に与えられ、そのうちの一つとして称えられた。9月28日、29日開催される第5回JAAS東京ライブフォーラムでは、この受賞講演「マガキ軟体部から同定された新規抗酸化物質の血液脳関門移行性と同抗酸化物質含有分画の睡眠に与える影響」を渡辺代表にお願いした。本稿ではその要旨を掲載する。
マガキ軟体部から同定された新規抗酸化物質の血液脳関門移行性と同抗酸化物質含有分画の睡眠に与える影響
渡邉 貢1、福嶋 和代1、上間 美穂1、三木 恵美子1、裏出良博2
1株式会社渡辺オイスター研究所
2筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構分子生物学研究室
不眠症などを惹起させる脳酸化ストレスの予防には、脳内移行性の良い抗酸化物質の摂取が望まれる。我々は新規抗酸化物質3,5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol(以後、E6)をマガキ軟体部より発見し、合成、同定した。E6は、分子量170と低分子であり、親水基と疎水基を有する両親媒性であることより血液脳関門(BBB)の移行性が推察された。
そこで、E6の脳内移行性検定とE6含有分画食(以後、被験食)投与によるヒト睡眠時脳波に及ぼす影響を検討した。
【方法】
脳内移行性検定には、BBBキットTM(ファーマコセル(株)製)を用いた。E6添加の後、血液側と脳側のE6濃度をHPLC(島津製作所)で測定し、血液脳関門の透過係数(Papp)を算出した。
9週令のC57BL/6NCrslc雄性マウス、平均体重21±1gにE6を生理食塩水に溶解しE6 30 mg/mLを調製し、マウス体重20gに対して0.2mLを 経口投与した。E6経口投与直前、E6経口投与後10分、30分、1時間、2時間、6時間に採血、全脳を摘出した。LC-MS/MS(島津製作所)を用いて、血漿と脳中のE6濃度を測定した。
ヒト睡眠時脳波試験は、アテネ式不眠尺度が6点以上で不眠感を有する28名(44.0±7.2歳)を選択し、 医療機器認定を有する携帯型脳波計(SleepWell㈱)を用いて睡眠時脳波を二重盲検プラセボ対照比較試験にて検討した。
被験食を1日に50cc(E6含有量0.21mg)を4週間連続摂取とし、摂取開始日1週前、摂取1、2、4週目のデータを解析した。
【結果及び考察】
BBB機能の健全性は経内皮電気抵抗値で確認された。
E6のPapp値は、4.84±2.41(×10-6cm/s)と算出され、細胞培養の段階でE6の脳内移行性が認められた。
E6経口投与前の血漿、脳中からE6は検出されず、マウス生体内にE6が存在しないことが示唆された。
E6投与10分後に血漿、脳試料よりE6が検出され、E6の消化管吸収性と脳内移行性がin vivoで確認された。脳内のE6の半減期は脳内で28.9分、血漿中で12.4分であった。
睡眠時脳波測定より睡眠時間に対する覚醒時間の割合は、プラセボ群は、摂取開始時6.2±2.0(%)から4週目で8.5±4.3(%)と覚醒時間(中途覚醒時間)が有意に増加したが、被験食群では、有意な変化は示されなかった。
プラセボ群では、携帯型脳波計の装着がストレス要因となり、中途覚醒の増加を生じたと推察された。一方、被験食群では、同様に脳波計を装着しているが中途覚醒が増加しなかったことより、被験食の中途覚醒抑制作用が示唆された。
【結語】
E6の脳内移行性が確認された。
E6含有分画である被験食の中覚醒抑制作用が示唆されたが、その中覚醒抑制作用の要因の一つとして脳内でのE6の抗酸化作用が推察された。
(JHM122号より)