知らぬではすまされない 院内物販のための薬事法講座 最終回
サプリ販売はクリニックだからこそ強みとなる
規制改革「医業のサプリ販売と機能性表示解禁」が追い風に
NR・サプリメントアドバイザー(日本臨床栄養協会)
石関 剛
前号までの2回の連載は、サプリ販売における薬事法と広告表現に関するルールやコツ等について紹介してきましたが、今回はクリニックでのサプリ販売と今後のビジネスチャンスについてお知らせしたいと思います。
1面で報じられているように、政府の規制改革会議は6月13日に「規制改革に関する第二次答申」を安倍首相に提出し、6月24日に閣議決定され、規制改革実施計画が発表されました。健康・医療分野において掲げられた重点事項のうち、注目するのは「医療機関の経営基盤の強化」という部分です。
この中で「医療機関における業務範囲の明確化」として「医療機関において、患者のために、医療提供又は療養の向上の一環としてコンタクトレンズ等の医療機器やサプリメント等の食品の販売が可能であることを明確化し、周知を行う。」という規制改革内容がはっきり明記され、2014年度上期の措置という実施計画が出されました。
今までも医業の付随業務としてサプリメントを扱うケースがなかったわけではないですが、今回の発表は、国が正式に医療機関にサプリ販売を許可したといっても過言ではありません。
これは来年4月以降に予定されている機能性表示解禁と合わせてビジネスチャンス、販売拡大に繋がるであろうことは間違いないでしょう。
では、なぜクリニックにとってチャンスになるのか?
現在、検討されている機能性表示については、米国のDSHEA(栄養補助食品健康教育法)を参考にし、構造・機能強調表示を可能にするといわれています。日本では薬事法上、脳や関節など身体の部位を示す語句を使った表示、表現は一切できませんが、機能性表示が認められると、例えばルテインを配合している商品に関して、「目の健康を増進する」ということが書けるようになる。もちろん、単純にルテインがある一定量配合されていれば良いのではなく、原材料の安全性に関するエビデンスはもちろん、機能性に関するエビデンスも求められるようになります。
問題は求められるエビデンスレベル、質です。ここで必要になるのはシステマティック・レビュー/メタアナリシスという取り組みです。
簡単にいうと、より多くの適切な原著論文を収集し、統計的手法(メタ分析)も時折用いながら、総合的に精査・評価していきます。但し、これは誰が行うかによって偏った傾向で結論づけられる可能性があるので注意が必要です。なお、これらは医薬品の世界ではよく行われていることですが、サプリメントの販売の世界では馴染みの薄いものです。よって、今後サプリメント販売会社の中で人材をどうするか?といったことも議論に上がってくるでしょう(個人的には、アドバイザリースタッフを上手く活用できる仕組みを作ればよいと思うのですが)。
このシステマティックレビューの文献検索データベースには、PubMedやMEDLINE等が有名ですが、日本医師会、日本薬剤師会、日本歯科医師会が総監修している「ナチュラルメディシン・データベース」が今注目されています(日本の医師会員全員は、このデータベース上の原料成分の安全性、有効性エビデンス、医薬品との相互作用等といった情報を自由に閲覧可)。
機能性表示可能な原料(商品)とこのデータベースは密接にリンクしてくることが予想されるので、クリニックにとって、このデータベースに掲載されている原料(商品)は安心して扱える1つの拠り所になると推察されます。
また、機能性表示が認められたとしても、国が認めた商品という従来のトクホのようなスタンスではなく、あくまで企業の自己責任のもとに表示することになります。そのため、顧客への情報開示・提供、説明等より一層高いレベルのものが要求されることになるでしょう。
その点、クリニックという販売チャネルを考えたとき、対面での説明の場が設けられているという点では、非常に有利と考えられます。もちろん、その前提としてメーカーとクリニックの間のコミュニケーション、信頼関係が重要であることは言うまでもありません。
また、「クリニックでのサプリ販売が可能」と明確化されたことで、今まで医薬品を処方してもらう程でもないけれど、何とか現状より良くありたいと願う多くの顧客、患者に対して医師がいかに関わっていくか?サプリメントの果たす役割と潜在的なニーズは想像以上に大きいような気がします。
従来も医療機関専門のサプリメントは多数ありましたが、ある程度標準化されたものであったり、既にメーカーによって処方設計がなされた商品のものが多かったのも事実です。いわゆる卸商品です。医療機関といっても、診療科目から顧客層などバラバラであり、よりきめ細かい顧客のニーズに応えるためには、よりカスタマイズされた設計の商品が必要になってきます。
時代は少量多品種です。最も注目するカテゴリーは、やはり機能性表示可能なものとリンクしてきますが、おそらくかなり厳選された少数の原料(商品)からスタートすることになるでしょう。売れるサプリメントを作るためには、シンプルに欲しがられるサプリメントを作ること、つまり既存の顧客、患者が求めているものは何か?プロダクトアウトではなく、マーケットインのアプローチで商品開発をするのが最もハズレがなくお勧めの方法です。
顧客が、患者が求めているサプリメントは何か?そのリサーチを十分に行うことが一番の鍵となるでしょう。
そのリサーチを踏まえて、ハードカプセルならば3万粒程度と極小ロットでのクリニック専用、オリジナルのサプリメント開発、販売が可能です。極論をいうと、1本からのカスタイムメイド商品を作ることも可能ではありますが、単価を考えると現実的ではありません。
サプリ業界には素材のトレンドというものがありますが、流行にとらわれず、安心して摂取でき、よりニッチな細かいニーズも見落とさずに、1本(1ヶ月)以内で実感できる商品を提供していきたいと考えています。 (了)
◎ご質問はこちらまで。
(JHM121号より)