社説 ドイツの旅路で思う 「移民と美容医療」
7月初旬、つかの間のドイツの旅路のさなか思うことがあったので、紙面を借りて綴ってみたい。
年齢を重ね、もはやアラカン(around還暦)の世代となったものの趣味という趣味もなくこの年代お決まりのセリフ「仕事こそ趣味」と言いたいところだが、唯一サッカーへの愛着捨て難く、いまなおプチサッカー(フットサル)を仲間と楽しんでいる。そしてもちろんTV、ビデオの試合観戦やスタジアムに直接観戦しに行くことも趣味の延長にあることはいうまでもない。
そんな折、W杯開催の真っ只中、ブラジルではなくドイツに行くことになった。思えば2年前、ロンドン五輪の最中にロンドンに立ち寄るも競技会場にさえ入らなかったシーンが蘇った(ちなみに過去,アメリカW杯期間中も現地に仕事で滞在していたにも関わらず観戦できず帰国)
サッカー好きの読者の方々ならおわかりのように、欧州4大リーグの一つドイツブンデスリーガもシーズンオフであることは容易に想像がつくだろう。唯一の救いは、渡独直前、ドイツ代表が地元ブラジルを破りW杯決勝に勝ち残ったため、ドイツ滞在4日間は現地の人々の対応もすこぶる良かったことだろうか(帰国便の機中でドイツ代表はアルゼンチンに勝利、W杯トロフィーを手中にした)。
さて、ドイツ代表の中に移民二世が少なくないことをご存知だろうか?FW、MF、DF各ポジションにチームの主力選手がいる。彼らの活躍なくしてW杯優勝はなかったといってもいい。
翻って、戦後(第二次世界大戦)、ドイツは移民国家として発展を遂げてきたという歴史がある。帰還移住者を積極的にドイツ領土に呼び寄せ、70年代からの「ドイツ奇跡の経済復興」を支えた要因のひとつとして、トルコなど外国人労働者が移民としてドイツ経済成長の担い手となったことは知られるところだ。
現在移民率は人口比の20%といわれ、統合ドイツ総人口およそ800万人のうち実に160万人が移民かその家族ということになる(ちなみにドイツでは海外留学生を受け入れる割合もアメリカに次いで高い)。
そして今なお移民二世、三世は増え続けており、ドイツ人そのものの出生率の低下や高齢化に伴って、移民の割合もさらに高くなっているようだ。
しかし一方で、国民の間でこうした移民の是非を問う論争も巻き起こっており、その背景に移民系の失業率の上昇(その逆に、労働機会を移民者によってドイツ人が奪われるケース)、それに伴う犯罪、治安の悪化などの社会問題が顕在化してきたからだ。また弱者への保護政策はここドイツでもみられ、いわゆる生活保護によって連邦政府、地方政府の財政負担を押し上げていることも議論の火種になっている。
移民による国家そして経済に及ぼす多様性(ダイバーシティー)は、いま日本でも、今後の国家像や経済発展をめぐり、賛否両論があることも事実だ。
しかしドイツ代表チームにおいて、移民二世たちが優勝の原動力となり、チーム全体に大きな影響を与えたと分析するサッカー関係の専門家も少なくない。そのキーワードもまた多様性である。「移民融合の勝利」と称えている。
一連の論争の是非は識者に委ねることにして、旅で出会った移民たちは紛れもなくおもしろい。立ち寄った旧西独の首都ボンで出会った移民一世チュニジア人のタクシードライバー、そして友人となったギリシャ移民二世で名門ダルムシュタット工科大卒で大手IT会社で活躍するNicoなどその出会いと語らいは忘れられない。
彼らの人間としての多様性は5分、10分でも接していればわかる。また、彼らは一様にして、多言語を操る。生活のために身につけた才能といっていい。アラビア語、チュニジア語、ギリシャ語などの母国語に加え、流暢にフランス語、英語そしてドイツ語を話す。
そして、思ったことがある。
いま美容医療の世界には他科診療の専門医が次々入ってくる。そもそも美容医療そのものが保険診療のなかで診療科として認められた専門科目ではないのだから当然といえば当然だ。
いいかえれば、美容医療というニューフロンティアを求めて、医師たちは移民し、その世界にはまさに多様性ある人材が集まり、それぞれの専門診療という知識、スキル、経験という「言語」と、各科出身という「国籍」をもちながら、美容医療という新たな言語をもつ「国」に移住していく。
まさに、美容医療は他科からの移民を受け入れてきた歴史がある。これからも多様な人材によって美容医療業界がますます発展、成長していくことを願ってやまない。
前半の文中に多くの私事を割いたことをお許し願いたい。そして余談のついでにもうひとつ、フットサルチームJAASサッカー愛好会を紹介させて頂きたい。年齢、男女、経験未経験に関わらず、気軽にそしてムキにならず楽しんでやるフットサルの集まりです。月一回ウイークデイの夜1時間、給水タイムも兼ねた休憩を15分間隔でとりながらゲーム感覚でやっています。
参加してみたいと思われる方は遠慮なく、ご連絡を。終わった後の打ち上げ会も楽しめます。
(JHM121号より)