JAASアカデミー第1回 春季公開講座を振り返って アカデミー学長 山本 豊MD
自費診療といかに向き合うか?」テーマに活発な質疑応答
21世紀の社会的基盤を構成する新たな医療の仕組み。この分野を担う全ての医療従事者と関連産業にとって、責任の重さはさらに増している。とりわけアンチエイジング医療や補完代替・統合医療などの予防型医療に重点をおく新たな医療の枠組みは無視できない。だからこそ、そうした診療体系と新たな医療技術が求められてくる。一方、こうした医療に対して健康・美容・診断技術などがさらに密接な関りをもつこともまた明らかである。本稿では医療・健康・美容分野のオピニオン達に論説をいただいている。62回目の提言は、JAASアカデミー学長の山本 豊医師に、先ごろ盛況のうちに幕を閉じた第1回春季公開講座を振り返っていただく。
『しみ』の治療にも落とし穴! 皮膚外科専門医が講演
5月25日、JAASアカデミー初の公開講座が行われた。今回のテーマは、「自費診療といかに向かい合うか」を掲げ、JAAS会員やアカデミー塾生の他に、新たな参加者が多数来場していただいた。
振り返っての参加者からのコメントを頂くと『どれも見逃せない内容であった』ということである。
講座の最初に登壇した私から総括的な内容について説明をさせてもらい、今後どのように自費診療を考えていくのかというテーマに絞ってお話しをさせていただいた。続く皮膚外科の柴田 真一医師(SSクリニック)からは、開業に関し、どのように自費診療を導入し、レーザー等の機器をどのように増やしていくかという貴重な話を聞くことができた。
単にレーザー照射と考えがちな『しみ』のような疾患にも治療の落とし穴があるということを他院の修正医症例を例にとり説明が加えられたことは興味深い。日常診察において、頻度が高く出会う疾患であっただけに、会場の関心は強かったようだ。さらに、本会の風通しの良さも感じられる雰囲気で、和気あいあいと質疑応答をまじえながら進められていたことは、特筆すべきことである。
また、「眼瞼下垂における名医図鑑」に掲載された際には大いなる集客を期待したが、実際には、ほとんど効果が無かった等の体験談も注意を引いていた。こうした内容とリンクしたかのごとく桑畑 弘道税理士(旭日税理士法人)の話が続き、いかに媒体効果の高いものを選び集患に結び付けていくかが、とりわけ美容医療では必要不可欠であるかが浮き彫りになった。
また桑畑氏は「一般診療各科別の経営の現状と自費部門の導入による経営試算」について、同税理士事務所が関わってきた事例を出しながら解説していった。午後からの講演では、「エステサロンに学ぶ院内物販」(POLICY Eethetic College藤 章人氏)を演題に、院内での化粧品販売(自費診療範囲内での解釈)、それに付随する顧客満足度の上げ方、リピータの作り方などが取り上げられ、美容医療では縁遠い「顧客管理ノウハウ」に対して、参加した医師らには「目から鱗の内容」だったに違いない。
開業検討する医師も来場
『ためになる講演プログラム』の声多数
本講座では、昨年のJAASライブフォーラムに続いて法務対策についての演題を用意した。自費診療、とりわけ美容医療ではクレーム対策は避けられない。こうしたことから、「近年増加しているクレームや訴訟に対していかに備えるか?」というコアな話を、演者の鈴木 英之弁護士(京橋法律事務所)から聞くことができた。講演が終わった後には活発な質問が多く出され関心の高さが伺いしれた。
参加医師の中には、これから開業考えているドクターもみられた。そんな医師たちに参考になる講演が渡邊 千春医師(千春皮フ科クリニック)から行われた。女性の美容医がどのように開業を考え、どのように準備を進め、どのような方向性を考えれば良いのかという点で、大いに参考になったことは疑いようもない。
公開講座プログラムの終盤では、近年関心の高いサプリメントに対し、斉藤 糧三医師からの最小コストで行う具体的な方法についてのご講演をいただいたが、微量元素不足での症状、その補い方、ダイエットに関する食事療法の分かりやすい解説には、私自身もすばらしい勉強の機会を与えられたと感謝に絶えない。
このように活発な質疑応答と共に進行した本会であったが、ラフな質問や講演者の本音が飛び交い、会場では笑いも聞こえるなどし、初参加の方々からは、『面白くてためになる』という評価を頂くことができたことは主催側にとってこれ以上の喜びはない。
講座最後には、私から現実的な問題として開業をする際のJAASアカデミーの支援体制を紹介させていただいた。他に類を見ない画期的な内容だとの声もいただき、具体的なお問い合わせも会場でいただくことができた。終了後、懇親会が催され終始和やかな雰囲気の中で進行していった。
(JHM120号より)