受け継がれる技術とオリジナルスキル Vol.4
プロテーゼによる隆鼻術(他院の修正含む)
新宿ラクル美容外科クリニック 山本 厚志医師
美容形成、美容医療の技術は新旧の世代によって継承されていく。いや受け継がれていってほしいと言うべきか!残念ながら商業色が強い業界ゆえ、その技術伝承の道は時として困難を極めるといっていい。本紙が機関紙としての役割をもつJAAS日本アンチエイジング外科・美容再生研究会そして、ドクタースクールとしての役割を担うべくトレーニング団体として独立したJAASアカデミーの発足は、こうした障害を取り除くために活動をしていることは周知のとおりである。その命題こそ、美容医療の新旧のスキルを比較検討しながら、メンバー同士が症例を報告することで最良の施術、手術法を取り入れて市場に普及することだ。侵襲性の伴う外科的な形成術さらには内科的なアンチエイジング療法でさえ、なおさらこうした「情報の共有」は避けられない。そのためには、侵襲性の度合いに関わらず美容形成、美容皮膚科そしてアンチエイジング内科などのライブ供覧は避けて通れない。こうした機会を通じて、経験と知識を積む年長者から後継の若き美容形成医に、スキルは受け継がれていくことは疑いない。教え、教わり、新たなスキルが生まれ、それがまたオリジナリティーになる。そして再びその医師が伝搬者になっていく。美容アンチエイジング医療の技術伝承はこの「連鎖」によって、やがて市場の拡大と高い信頼性を勝ち得るはずだ。本稿では、こうした受け継がれた技術に対して、症例を重ね試行錯誤の末に進化させたオリジナルのスキルを紹介していきたい。シリーズ4回目は新宿ラクル美容外科クリニック 山本 厚志医師の「プロテーゼによる隆鼻術」ついて紹介したい。
プロテーゼは、心臓手術や人工関節でも使われる人間の軟骨に近いシリコン性の医療材料でできており、個々の鼻の形にあわせ加工したものを骨膜下に挿入する隆鼻術だ。注入術と異なり、一度挿入すると半永久的に鼻筋を維持することができる人気の施術である。
写真(1)はプロテーゼ挿入1か月経過の症例である。この症例では、元来鼻筋がほとんどなく眼鏡がずり落ちるため、高い鼻にするよりも自然な鼻筋を通すことを重視した。特に鼻根部がかなり低かったためプロテーゼを絶妙なラインで挿入することで、プロテーゼが入っているのが分からない程度の自然な鼻筋を作っている。
鼻は人間の顔の中心にあるため少しでも形や高さが変わると大きく印象が変わる部位である。また他のパーツとのバランスもあるため、高くすればいいというものでもない。理想の高さや鼻筋を事前に医師としっかり話し合うことが特に重要だ。
半永久的に鼻筋を維持できる魅力的な隆鼻術であるものの、プロテーゼ挿入後の相談も実は多いという。
写真(2)はある大手美容クリニックで2年前にプロテーゼ挿入を行ったものの、次第にずれて鼻筋が曲がってしまった症例だ。
このようにプロテーゼの位置がずれる原因は、プロテーゼを骨膜下に挿入できてないからだという。
鼻は鼻骨、骨膜、皮下組織、皮膚という断面になっているが、この骨に張り付いている骨膜下に入れることでプロテーゼが固定される。逆に皮膚の下に挿入するだけでは前後左右に動いてしまうためこの症例のように鼻筋が変形してしまう。なお本症例では、本人の希望でアングロサクソン風の高めの鼻を希望している。
日本人なので100%同じような形にはできないが、事前に理想形や術後のイメージなども時間をかけて話し合った上で施術を行っているため術後の満足度も高い。
安価なキャンペーンで集客するケースも見受けられ、医師がしっかりとカウンセリングを行い、且つ正しい施術を行わないとこのような修正が必要になることもある。
価格が安ければよいと思わずにしっかり比較検討した上で医師選びを行ってほしい。
◎本稿は、美容アンチエイジング医療の名医サイト Doctor’s Labo(http://www.jaas-labo.com)に掲載中です。
(JHM118号より)