最新医療の検証めざす クリニック・プラットホーム
加速するアンチエイジング美容外科 その一
転換期迎える美容医療Keep look young願望を満足させる治療術にシフトする
ヒアルロン酸注入で「昔の自分を復元させる」抗加齢美容医療を
人は年とともに若く、疑惑とともに老いる。そして自信とともに若く、恐怖とともに老いる(サミュエル・ウルマン)、またロシュフコーはこんな格言を残す。『女たちにとっての地獄は老いである』。古今東西、良きにつけ悪しきにつけ「老いていく」宿命に対して珠玉の名言を人々は残し、また受け継がれていく。老化を前向きに捉えるか、はたまた忌み嫌うものと感じるかはその人の人生観に委ねるほかはない。しかしロシュフコーが言い残した言葉には理屈ぬきで納得できる女性も多いはずだ。こうした老いていく容姿に対して微かでも挽回できる可能性はないのか?いま、この問いかけに美容医療が応えようとしている。アンチエイジング美容外科、医療の取り組みである。本稿ではその答えを、一般社団法人JAAS日本アンチエイジング外科・美容再生研究会の理事長に就任した池田 欣生医師そして総院長を務める東京皮膚科・形成外科(旧銀座いけだクリニック)の取り組みを通じて、明らかにする。シリーズ2回目は、若さをキープする美容医療術の中で、池田院長がとくにこだわるみせる眼瞼周囲へのヒアルロン酸注射について投げかけてみたい。
前号でも触れたが、東京皮膚科・形成外科は『最新医療の検証めざすクリニック・プラットホーム』の役割を担っているといっていい。
そして今、クリニックが掲げるテーマを『美容医療をコンプレックス産業から若さをキープする市場に転換』するとしている。鍵は、安全性を優先し、患者を喜ばせ、わかりやすい経過と結果をみせることだ。そしてできるだけ多くの患者が手の届く治療価格にさせることもポイントだという。
ただ一方で難しさもある。
それは、単に美しくなりたいとするニーズではなく、憧れの女優、男優、歌手に近づけてほしいという「そっくりさん」願望の台頭だ。そのための施術を、「ヘビーな切開法としての美容形成術ではなく、低侵襲でなおかつ修正がきく美容医療術にしていく」ことこそ、これからの美容医療の進むべき道であると池田医師は言ってはばからない。
なぜなら、いかな上手な医師でもあるいは経験豊富な執刀医でも、患者が求める顔かたちに仕上がらなければ、場合によって医療クレーム訴訟は避けられない(注:しかるべき治療計画と同意書があれば、美醜の訴訟リスクは低い)。つまり侵襲性の高い手術には医療側のリスクはつきものである一方、低侵襲術ではそのリスクは低い。
さらに、侵襲性の低い美容医療術なら、気に入らなければ「元に戻せる」メリットをもつ。その象徴として糸を使った埋没術があり、この術式の改良と幅広い術野の見極めを池田医師は、この数年行っている。
とりわけ画期的な術式と言われているのが、糸埋没式の鼻翼縮小術で、引き締まった鼻翼に仕上がる。もちろん永続性に優れていることはいうに及ばない。
さて池田医師が長年追い求めてきた低侵襲術の中で最もこだわりをみせる施術がある。徹底してディテールにこだわり平面でない3Dのデザインに仕上げるヒアルロン酸注入術だ。
いまやヒアルロン酸といえば池田医師の施術の代名詞ともいってもいいほど、患者はもちろん美容ドクターからも絶大な支持を得ている。JAASで実施した「DR池田のヒアルロン酸注入術」ライブ講習は数えきれない。さらに14回を数えたJAASアカデミーの「美容外科解剖・執刀トレーニング」(中国大連)では、30名にも及ぶ美容形成、皮膚科の医師たちに、寄贈検体を使って、その注入術のお手本をみせ指導もしているほどだ。
ひるがえって昨今の美容医療の市場トレンドをひも解いてみよう。
2000年から10年の間に脂肪吸引(-43%)、鼻形成(-35%)、眼瞼形成(-36%)といって切開系(inscisional surgery)は減少傾向をみせ、これは世界的な潮流となっている。一方低侵襲術(non insisional surgery)の勢いは強い。アメリカではこの間、BOTOX(584%増)やヒアルロン酸注射(172%増)が爆発的な伸びをみせている。
とりわけヒアルロン酸注射はヒアルロニダーゼで元に戻せることが需要増の一つの要因となっていることは先述の通りだ。
憧れの女優、男優、歌手に近づけてほしいという「そっくりさん」願望を、こうしたヒアルロン酸注入術で試行錯誤の末にかなえてきた池田院長。その完成品はここでは個人情報ゆえに、残念ながらお見せできない。著名人のそっくりさんに仕上げた症例の数々は「見事!」というほかはない。
そして行きつく先にたどり着いたのが、自らを〝実験台〝として挑戦してきたヒアルロン酸による若返り術だ。
自分と違うそっくりさんをつくるのではなく、昔の若かりし自分を復元する美容医療術といっていい。まさに池田医師がこれからの美容医療の姿として提唱する、アンチエイジング美容外科そのものである。
「加齢を解剖学的にみれば眼窩は拡大して、眼輪筋は薄く広がっていく。美容医療の視点から考えればエイジングに対抗する方法は、眼瞼周囲とりわけ眼窩周辺の3Dデザインにこだわり施術していくことです」
自ら実験台となった池田医師の23歳の顔と最近の顔(43歳)の症例をお見せする(写真2)。
まさに、Keep look young願望を満足させる治療術を、身を以て実践したといえよう(復元計画はまだ途上です)。
Impersonator of Age 23
23歳当時の自分のそっくりさんづくりを完成させていくことになる。
クリニックではこの院長のこだわりを、在籍する多くの顧問医師が学び、患者に実践しているという。
池田院長はじめ美容医療のスペシャリスト集団を自他とも認めるクリニックでは、それぞれの知識、経験そしてスキルを担保した上で、医療トラブルにならないための約束事をつくっている。
それはヒアルロン酸製剤のこだわり、患者には鏡で常に観察してもらう、丁寧な注入、注射量は1回0.1ccまで、日々の解剖学の研さん、術直後の皮膚状態の観察、24時間以内の対処などだ。
その上で、技術に負けず劣らず「道具」にもこだわりをみせる。それが池田式ヒアルロン酸術のもう一つの代名詞ともいえるエンジェニードル(ナノ)とマイクロカニューレで、前者は針の外径0.15mmで、埋入時の痛みを最大限に抑える注入針で、特殊製造からその内径を通常の針に比べ広げていることから、注入しやすく注入圧も少ない。また内出血が極端に減るためダウンタイムを抑えることができる。後者は血管を避けながら注入を行えるのが特長で、粘性の高いヒアルロン酸も精巧な内径と孔の加工で流動性を上げている。
さらに、眼窩周辺に打つ際、時として注入圧の加減が難しいケースがあるが、自動注入器を用いることによって、そのリスクをカバーしている。
注射針、カニューレと同じように自動注入器も、池田医師が臨床の積み重ねからアイデアを出し、オリジナルで作りあげた「道具」である(他院にも供給する体制をとっており、メディケードがその窓口となっている)。
(JHM118号より)