経結膜的下眼瞼形成術の治療成績 久保 隆之MD.PHD.
[ 2013/10/7 ]
下眼瞼の凹みや眼瞼下垂も改善へ
序章
老化現象として視力が衰えると同様に、外見上の老化も眼周囲に初発することが一般的である。眼周囲脂肪は加齢とともに、その容量や位置(ポジショニング)が変化するため、この現象により若年時代とは違った外見上の変化、すなわち老いの兆候が目元に出現し始める。こういった老いの兆候は、いわゆる目の下のくま(クマ)、たるみとして認識され、本人にとって多大な劣等感をもたらすことが少なくない。
そこで当院ではこれらの症状を外科的に解消する方法を開発し、2007年4月1日から2008年3月31日までの1年間に1044名(女性936名、男性108、平均年齢、41.2歳、範囲19〜75歳、標準偏差9.88)の経結膜的下眼瞼形成術を行った。再診患者200名の主観的満足度はFig-3に示される如く、全体数の28%で大変満足、56%で満足、13%でおおむね良好、3%で不満足との結果が得られた。大変満足、満足、おおむね良好群で、治療結果に満足した理由を尋ねると、〝長年、劣等感となっていた目の下のくま(クマ)、たるみが大幅に解消した〟とのことだった。
従来まで中高年層以降や、症状の強い目の下のたるみ症例は、皮膚切開を用いた下眼瞼形成術でなければ改善しないとされていた。だが経結膜的下眼瞼手術にて、こういった症状の強い症例でも十分良好な結果が得られることがわかった。また中高年層におこなった多くの症例で、目の下のくま(クマ)、たるみ症状のみでなく、上眼瞼の凹みや眼瞼下垂症状が改善された。
はじめに
当クリニックでは、原則的にすべての下眼瞼形成術に結膜面からのアプローチを行い、ほぼ良好な結果を得ることに成功した。またこの手法が認知されるにつれ、治療を求める顧客はFig-1の如く全国から当クリニックに訪れるようになった。この事実は、当クリニックの皮膚切開法を用いない治療が普及するまで、下眼瞼皮膚切開法のみしか目の下の(クマ)、たるみを改善する手段がなく、治療をためらっていた患者さんが多数いたことを示す結果となった。
目の下のくま(クマ)、たるみ症状の原因である下眼瞼の解剖構造を検証すると、眼窩周囲脂肪は上眼瞼脂肪と下眼瞼脂肪から構成される。上眼瞼脂肪は加齢とともに縮小するといわれるが、下眼瞼脂肪は必ずしも加齢とともに萎縮せず、むしろ膨張する場合が多い。下眼瞼脂肪の膨隆は、いかにも下眼瞼皮膚が下垂したかの如く、典型的な外見上の老化兆候として認識され、この症状はいわゆる〝目の下のたるみ〟として客観的にも明らかとなる。
これらの原因は、高密度組織である眼球組織の荷重と、下眼瞼支持組織であるLockwood suspension ligament や下眼瞼皮膚、眼輪筋、眼窩隔膜等の加齢に伴う弛緩が原因とされる。すなわち目の下のたるみとは、これらの複合的要因により、下眼瞼がヘルニア状態となり、下眼瞼皮膚前部方向に逸脱することで目の下のたるみを形成し、この状態が不可逆的となった状態を示す。この症状はLockwood suspension ligament 等の下眼瞼脂肪支持組織が、皮膚を下垂位に固着させることがその主な原因である。したがって、この支持組織を解離し、皮膚を挙上位に改変させることで、目の下のくま(クマ)症状が大幅に解消されることがわかった(一部抜粋)。
方法
手術は仰臥位にて鎮静剤(セルシン10㎎)を静注し、沈静化をはかった上で局部麻酔として下眼瞼に1%キシロカイン(10万分の1アドレナリン)を片側3〜6mlを注入し、麻酔が効力を発揮するまで5分程度経過してから治療を開始した。下眼瞼結膜面への進入は、高周波レーザーメス(エルマン社の電気メス)を用い、出力27Jにて水平方向に10㎜程度割を入れ、下眼瞼遠位端に向かって剥離を行った。進入は(以下略)
結果及び考察略(日美外会誌 第49巻第2号を参照)
結語
目の下のたるみは余剰下眼窩脂肪が、その支持組織の加齢に伴う弛緩によって前方脱出することがその主な原因である。したがって、その治療はこの余剰脂肪を除去する〝脱脂〟が主体となる。
目の下のくま(クマ)は、目の下の色素を強調する下眼瞼皮膚の下垂を引き起こす解剖学的構造の不具合が原因であり、その治療は〝脱脂〟のみならず、下眼瞼皮膚を挙上させるための下眼瞼構造の改変が必要とある。
従来まで中高年層以降や、症状の強い目の下のたるみ症例は、皮膚切開を用いた下眼瞼形成術でなければ改善しないとされていた。だが経結膜的下眼瞼形成術にて、こういった症状の強い症例でも十分良好な結果が得られることがわかった。また中高年層に行った多くの症例で、目の下のくま(クマ)、たるみ症状のみでなく、上眼瞼の凹みや眼瞼下垂症状が改善された。
経結膜的下眼瞼形成術に伴う合併症について検証したところ、下眼瞼の凹み、しわの発生を認めた。だがこれらの症状は一時的であり、治療後3ヵ月以内にほぼ自然治癒した。
(JHM113号より)
序章
老化現象として視力が衰えると同様に、外見上の老化も眼周囲に初発することが一般的である。眼周囲脂肪は加齢とともに、その容量や位置(ポジショニング)が変化するため、この現象により若年時代とは違った外見上の変化、すなわち老いの兆候が目元に出現し始める。こういった老いの兆候は、いわゆる目の下のくま(クマ)、たるみとして認識され、本人にとって多大な劣等感をもたらすことが少なくない。
そこで当院ではこれらの症状を外科的に解消する方法を開発し、2007年4月1日から2008年3月31日までの1年間に1044名(女性936名、男性108、平均年齢、41.2歳、範囲19〜75歳、標準偏差9.88)の経結膜的下眼瞼形成術を行った。再診患者200名の主観的満足度はFig-3に示される如く、全体数の28%で大変満足、56%で満足、13%でおおむね良好、3%で不満足との結果が得られた。大変満足、満足、おおむね良好群で、治療結果に満足した理由を尋ねると、〝長年、劣等感となっていた目の下のくま(クマ)、たるみが大幅に解消した〟とのことだった。
従来まで中高年層以降や、症状の強い目の下のたるみ症例は、皮膚切開を用いた下眼瞼形成術でなければ改善しないとされていた。だが経結膜的下眼瞼手術にて、こういった症状の強い症例でも十分良好な結果が得られることがわかった。また中高年層におこなった多くの症例で、目の下のくま(クマ)、たるみ症状のみでなく、上眼瞼の凹みや眼瞼下垂症状が改善された。
はじめに
当クリニックでは、原則的にすべての下眼瞼形成術に結膜面からのアプローチを行い、ほぼ良好な結果を得ることに成功した。またこの手法が認知されるにつれ、治療を求める顧客はFig-1の如く全国から当クリニックに訪れるようになった。この事実は、当クリニックの皮膚切開法を用いない治療が普及するまで、下眼瞼皮膚切開法のみしか目の下の(クマ)、たるみを改善する手段がなく、治療をためらっていた患者さんが多数いたことを示す結果となった。
目の下のくま(クマ)、たるみ症状の原因である下眼瞼の解剖構造を検証すると、眼窩周囲脂肪は上眼瞼脂肪と下眼瞼脂肪から構成される。上眼瞼脂肪は加齢とともに縮小するといわれるが、下眼瞼脂肪は必ずしも加齢とともに萎縮せず、むしろ膨張する場合が多い。下眼瞼脂肪の膨隆は、いかにも下眼瞼皮膚が下垂したかの如く、典型的な外見上の老化兆候として認識され、この症状はいわゆる〝目の下のたるみ〟として客観的にも明らかとなる。
これらの原因は、高密度組織である眼球組織の荷重と、下眼瞼支持組織であるLockwood suspension ligament や下眼瞼皮膚、眼輪筋、眼窩隔膜等の加齢に伴う弛緩が原因とされる。すなわち目の下のたるみとは、これらの複合的要因により、下眼瞼がヘルニア状態となり、下眼瞼皮膚前部方向に逸脱することで目の下のたるみを形成し、この状態が不可逆的となった状態を示す。この症状はLockwood suspension ligament 等の下眼瞼脂肪支持組織が、皮膚を下垂位に固着させることがその主な原因である。したがって、この支持組織を解離し、皮膚を挙上位に改変させることで、目の下のくま(クマ)症状が大幅に解消されることがわかった(一部抜粋)。
方法
手術は仰臥位にて鎮静剤(セルシン10㎎)を静注し、沈静化をはかった上で局部麻酔として下眼瞼に1%キシロカイン(10万分の1アドレナリン)を片側3〜6mlを注入し、麻酔が効力を発揮するまで5分程度経過してから治療を開始した。下眼瞼結膜面への進入は、高周波レーザーメス(エルマン社の電気メス)を用い、出力27Jにて水平方向に10㎜程度割を入れ、下眼瞼遠位端に向かって剥離を行った。進入は(以下略)
結果及び考察略(日美外会誌 第49巻第2号を参照)
結語
目の下のたるみは余剰下眼窩脂肪が、その支持組織の加齢に伴う弛緩によって前方脱出することがその主な原因である。したがって、その治療はこの余剰脂肪を除去する〝脱脂〟が主体となる。
目の下のくま(クマ)は、目の下の色素を強調する下眼瞼皮膚の下垂を引き起こす解剖学的構造の不具合が原因であり、その治療は〝脱脂〟のみならず、下眼瞼皮膚を挙上させるための下眼瞼構造の改変が必要とある。
従来まで中高年層以降や、症状の強い目の下のたるみ症例は、皮膚切開を用いた下眼瞼形成術でなければ改善しないとされていた。だが経結膜的下眼瞼形成術にて、こういった症状の強い症例でも十分良好な結果が得られることがわかった。また中高年層に行った多くの症例で、目の下のくま(クマ)、たるみ症状のみでなく、上眼瞼の凹みや眼瞼下垂症状が改善された。
経結膜的下眼瞼形成術に伴う合併症について検証したところ、下眼瞼の凹み、しわの発生を認めた。だがこれらの症状は一時的であり、治療後3ヵ月以内にほぼ自然治癒した。
(JHM113号より)