提言 幹細胞医療に携わる臨床医(匿名)の心情
[ 2013/7/12 ]
なぜ?幹細胞治療はバッシングされる
ネガティブ報道ありきの新聞各紙には違和感
NHK取材に応えて
2003年—2008文献
に基づいた幹細胞療法の足跡など症例実績、動物・ヒト安全性試験などすべて明らかに
再生医療法案の審議入りが今国会の6月26日までに不可能となり、参議院選挙入りします。おそらく、地域ごとの再生医療審査会のメンバーについても各派閥の勢力争いの現実もあり、厚労省も、先送りせざるを得ないでしょう。
アベノミックスの三本目の矢は、エネルギー問題、新産業構築のための権益の撤廃、少子高齢化対策、さらには女性の社会参加推進、福祉と医療と年金の経費の抑制などに及び、一方で消費税率を上げるという至難な課題が山積みです。
しかし日本は、長いものに巻かれ群れて、長老の意見を尊重しつつ国内バランスを維持することが、コモンセンスという国柄ということもあり、言いたい事ややりたいことに足を引っ張る国内事情があります。
特に、医療の分野であれば、安全性はもちろん、倫理問題、個人の情報保護、学会の指針や厚労省の指導など、大きな問題を抱え大病院で新たな先端医療と取り組むためには倫理委員会や派閥の大きな壁をクリアーしなければなりません。
そこでは、常に指針や法令のニッチ(隙間)を模索しつつ、医療の中で前衛的(アヴァンギャルド)と言われたり、学会を無視していると言われたり、果ては「人体実験」とまで批判されるのを覚悟で患者様と向き合うことの困難さは、医師免許証をかけくらいの覚悟も必要となります。
まさに金も地位も名誉も失うような切羽詰まった状況になることさえあるといってもいい。
正直、私自身、2008年から2009年にかけて、韓国や延吉に見学に行かなければ幹細胞医療と向きあわずに済んだという思いにかられることもしばしばです。なぜなら、あるジャーナリストを介してR社をZ先生に紹介した経緯があるからにほかなりません。
Z医師はここ最近、正義という名のもとに一部、真実を曲げ、時にはあろうことか患者さまのプライベートまで足を踏み入れる大手新聞社などマスコミから追われ、ネガティブ報道の主人公にまでされています。最近の読売系出版本「幹細胞医療の光と闇」にも、Z医師への事実誤認も含めた歪曲した記述がされていることを思うと、他人事として看過できません。
臨床医として真面目に向き合ってきたドクターが、こうした良識を欠いた一部の報道、メディアによって翻弄されている一方、「幹細胞ビジネ」に群がる怪しい人物がドクター周辺を取り巻き、結果、旧知のB先生が2億円の投資被害まで引き起こす始末。
まさに幹細胞医療に関わる臨床医としてはWパンチを食らわされたというのが実感です。
なにも私だけが聖人君子面をするつもりはありません。ネガティブ報道のきっかけをつくった毎日はもとより、朝日も読売も取材のみで少しも私の発言を記事にして貰えないところを見ると、彼ら「大新聞社」は、ネガティブな筋書きありきの取材を目指したものかと想像しています。
この5月から6月にかけてNHKの取材依頼を受けました。協力に踏み切ったのは、10年前、同局の番組『クローズアップ現代』で、男性更年期の家族を含めた、グループ治療の取材を受けた経緯もあったこと。加えて、NHKの取材のきめ細かさは分かっていたからです。
今回も患者様の協力を初めとして、倫理委員会実施の過去の記録や、症例の実績や、海外の動物モデル実験や幹細胞投与(動物とヒト)の安全試験の論文など、私が参考にした文献で、2003-2008年つまり私が幹細胞療法を踏み切ったきめ細かな足跡を全て要求され、丁寧に答えつつ協力をしました。
患者様は快く幹細胞療法に対する希望、心のよりどころについても自分の言葉で話してくれNHKの取材班も目頭を熱くしていました。ここが臨床医ならでは—医師と患者様の信頼関係の強さーによるものだと思います。
先述のZ医師もNHK側からの誠実な対応に取材に応じたと聞いています。本稿が発刊される頃には、同番組が放映されていることと思います。
マスコミの報道により、一般のヒトは色眼鏡で幹細胞療法を見るでしょう。マスコミに誘導されたことも気づかずに、「幹細胞医療の光と闇」の著者・坂上氏の取材協力に応じた方々は、自身の目論見があるかと疑心暗鬼に陥るのも私だけでしょうか。
坂上氏は、あえてZ医師を悪者にしなければ成立しえない読み物を書いただけなのでしょうか。
私は臨床医ですから80点ぐらいが満点だと思います。
ネガティブな症例ばかり取材されればZ医師と同じ結果になったかもしれません。
しかしながら、再生医療がiPS で成功するか失敗するか分かっていない現在、幹細胞医療を拒んだり批判する
時期ではないと思います。
マスコミ各社には、医学的な論点を展開しつつ社会的な、歴史的な見解を検証しながら、後日、エビデンスを基に責任ある論調を展開して欲しいと切に思います。
いつか真実が分かる日が来ても、過去については反省する記事を載せないのもマスコミの常道です。
もっといえば、厚労省や日本再生医療学会などの判断が間違えば、日本が再生医療後進国となるやもしれません。我々が、軍隊でいえば先兵の役割だとすれば、後方部隊が援護射撃をしてくれる日はいつなのでしょうか(多少、不適切な表現であることをお許し願いたい)。
刀尽き矢折れる前に、また、無駄死にする前に後方支援を願うばかりです。
(JHM111号より)
ネガティブ報道ありきの新聞各紙には違和感
NHK取材に応えて
2003年—2008文献
に基づいた幹細胞療法の足跡など症例実績、動物・ヒト安全性試験などすべて明らかに
再生医療法案の審議入りが今国会の6月26日までに不可能となり、参議院選挙入りします。おそらく、地域ごとの再生医療審査会のメンバーについても各派閥の勢力争いの現実もあり、厚労省も、先送りせざるを得ないでしょう。
アベノミックスの三本目の矢は、エネルギー問題、新産業構築のための権益の撤廃、少子高齢化対策、さらには女性の社会参加推進、福祉と医療と年金の経費の抑制などに及び、一方で消費税率を上げるという至難な課題が山積みです。
しかし日本は、長いものに巻かれ群れて、長老の意見を尊重しつつ国内バランスを維持することが、コモンセンスという国柄ということもあり、言いたい事ややりたいことに足を引っ張る国内事情があります。
特に、医療の分野であれば、安全性はもちろん、倫理問題、個人の情報保護、学会の指針や厚労省の指導など、大きな問題を抱え大病院で新たな先端医療と取り組むためには倫理委員会や派閥の大きな壁をクリアーしなければなりません。
そこでは、常に指針や法令のニッチ(隙間)を模索しつつ、医療の中で前衛的(アヴァンギャルド)と言われたり、学会を無視していると言われたり、果ては「人体実験」とまで批判されるのを覚悟で患者様と向き合うことの困難さは、医師免許証をかけくらいの覚悟も必要となります。
まさに金も地位も名誉も失うような切羽詰まった状況になることさえあるといってもいい。
正直、私自身、2008年から2009年にかけて、韓国や延吉に見学に行かなければ幹細胞医療と向きあわずに済んだという思いにかられることもしばしばです。なぜなら、あるジャーナリストを介してR社をZ先生に紹介した経緯があるからにほかなりません。
Z医師はここ最近、正義という名のもとに一部、真実を曲げ、時にはあろうことか患者さまのプライベートまで足を踏み入れる大手新聞社などマスコミから追われ、ネガティブ報道の主人公にまでされています。最近の読売系出版本「幹細胞医療の光と闇」にも、Z医師への事実誤認も含めた歪曲した記述がされていることを思うと、他人事として看過できません。
臨床医として真面目に向き合ってきたドクターが、こうした良識を欠いた一部の報道、メディアによって翻弄されている一方、「幹細胞ビジネ」に群がる怪しい人物がドクター周辺を取り巻き、結果、旧知のB先生が2億円の投資被害まで引き起こす始末。
まさに幹細胞医療に関わる臨床医としてはWパンチを食らわされたというのが実感です。
なにも私だけが聖人君子面をするつもりはありません。ネガティブ報道のきっかけをつくった毎日はもとより、朝日も読売も取材のみで少しも私の発言を記事にして貰えないところを見ると、彼ら「大新聞社」は、ネガティブな筋書きありきの取材を目指したものかと想像しています。
この5月から6月にかけてNHKの取材依頼を受けました。協力に踏み切ったのは、10年前、同局の番組『クローズアップ現代』で、男性更年期の家族を含めた、グループ治療の取材を受けた経緯もあったこと。加えて、NHKの取材のきめ細かさは分かっていたからです。
今回も患者様の協力を初めとして、倫理委員会実施の過去の記録や、症例の実績や、海外の動物モデル実験や幹細胞投与(動物とヒト)の安全試験の論文など、私が参考にした文献で、2003-2008年つまり私が幹細胞療法を踏み切ったきめ細かな足跡を全て要求され、丁寧に答えつつ協力をしました。
患者様は快く幹細胞療法に対する希望、心のよりどころについても自分の言葉で話してくれNHKの取材班も目頭を熱くしていました。ここが臨床医ならでは—医師と患者様の信頼関係の強さーによるものだと思います。
先述のZ医師もNHK側からの誠実な対応に取材に応じたと聞いています。本稿が発刊される頃には、同番組が放映されていることと思います。
マスコミの報道により、一般のヒトは色眼鏡で幹細胞療法を見るでしょう。マスコミに誘導されたことも気づかずに、「幹細胞医療の光と闇」の著者・坂上氏の取材協力に応じた方々は、自身の目論見があるかと疑心暗鬼に陥るのも私だけでしょうか。
坂上氏は、あえてZ医師を悪者にしなければ成立しえない読み物を書いただけなのでしょうか。
私は臨床医ですから80点ぐらいが満点だと思います。
ネガティブな症例ばかり取材されればZ医師と同じ結果になったかもしれません。
しかしながら、再生医療がiPS で成功するか失敗するか分かっていない現在、幹細胞医療を拒んだり批判する
時期ではないと思います。
マスコミ各社には、医学的な論点を展開しつつ社会的な、歴史的な見解を検証しながら、後日、エビデンスを基に責任ある論調を展開して欲しいと切に思います。
いつか真実が分かる日が来ても、過去については反省する記事を載せないのもマスコミの常道です。
もっといえば、厚労省や日本再生医療学会などの判断が間違えば、日本が再生医療後進国となるやもしれません。我々が、軍隊でいえば先兵の役割だとすれば、後方部隊が援護射撃をしてくれる日はいつなのでしょうか(多少、不適切な表現であることをお許し願いたい)。
刀尽き矢折れる前に、また、無駄死にする前に後方支援を願うばかりです。
(JHM111号より)