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JHM紙上座談会「2013年美容アンチエイジングの展望」

[ 2013/2/22 ]
山本クリニック(JAAS理事)山本 豊医師
「美容医療の需要は、侵襲性が低いか、高いかは問題ではない。医師自身がスキルの向上をはかり、あらゆる治療ニーズでも対応できるかが大事」










銀座CUVO(JAAS理事)
久保 隆之医師

「失敗症例から学ぶ教訓も多い。経験者だって解剖実習で学ぶ意義は大きい。











東京皮膚科・形成外科(JAAS理事)池田 欣生医師
「老化を病気として捉えるのなら、術後症例を長いスパンで検討しあうことが必要」










赤坂ACTクリニック(JAAS理事)中間 健医師
「中国はやがて症例数も世界1になる。韓国は人口比で圧倒。だから少ない分日本はもっと症例交流を」











「美容医療を取り入れた一般医療の先生たちこそ、リピーターを生みやすい」(久保医師)

「医師のレベル、そしてエキスパート性が身に付く。それが患者の共有につながる」(山本医師)

「2013年美容アンチエイジングの展望」をテーマに、これから求められる美容医療、抗加齢医学としての役割をもつアンチエイジング美容術は、どういう方向に進むのか?本紙JHMでは久しぶりの紙上座談会を企画した。その水先案内人には、JAAS日本アンチエイジング外科・美容再生研究会の理事4人を指名した。JAASの雰囲気そのままに、そして理事たちの肩肘はらない人柄と単刀直入にして明晰な主張、提言にぜひ耳を傾けて頂きたい。美容アンチエイジング医療をより良い方向に進め、業界全体が共に切磋琢磨しながら発展、成功していく。そしてそれがひいてはユーザーの満足と利益につながっていく、とする思いは4人の理事が共有すると本紙は確信する。共鳴する人、あるいは異論・反論をもつ人さまざまだろう。しかし、業界に関わるすべての関係者が、ぜひ何らかのヒントをこの座談から得られることを、願ってやまい。

本紙 お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。座談のテーマは「展望」としていますがまずは美容アンチエイジング医療の現状をお聞かせください。忌憚のない意見を。

山本 ともすると、美容医療を「施す医療」ではなく、押しつけ、時には押し売りのごとく患者さんに〝治療を迫る〝ところが見受けられます。こうしたことが美容医療業界そのもののイメージを低下させてしまう。

本紙 そんなケースは稀でしょうが、とかく美容医療に対しては外から、時には業界内から「いわれなき誹謗中傷」がある。残念ですね。

山本 本来、医療は患者さんのために医師が親身になって考え、治療し、患者さんの利益をもたらさなければならない。医師である以上、当然の責任と義務です。

久保 自由競争ゆえの弊害と言えば弊害?美容医療は。

山本 そうですね。経営的な事情がついつい先行して、診察段階で不必要な治療を勧めてしまうことも否めない。

本紙 新聞でも報じましたが、他科診療たとえば婦人科の医師が美容医療をJAASのライブ講習で研さんするが、切開系オペなどは難しい。それではと、専門外の治療はJAASの中のそれぞれのスペシャリスト・ドクターに紹介し、自らは「美容医療のプラットホーム」としての役割を担っています。競合ではなく、共存の道、つまり美容医療のセカンドオピニンもあるのではないでしょうか?

山本 一般診療であれば、この疾患は当院の範ちゅう外だから、他の専門機関に紹介するということは当たり前ですが、多くの場合美容医療では成り立たない。患者さんからすれば、信頼を寄せる医師との関係性が強い。患者さんの治療に対する責任と満足度を考えれば、他院を紹介することは稀です。

中間
 ただ、他科保険診療の先生が美容部門をつくり、でも自らができない美容形成術を紹介することは、美容クリニックにとってはありがたい話でしょう。

山本 もちろんです。

池田 この議論とはちょっとずれますが、わたしも指導するJAASのライブ講習で参加した先生方が、その後、弊院に治療に来られます。ヒアルロン酸注入で。受講した先生たちも患者さんとし、私は受け入れています。先生たちがやがてクリニックの施術メニューとして開始した時に、時には患者さんの紹介があるかもしれません。

中間 老兵は…(マッカーサー)じゃないけど、私は患者さんを他院にどんどん紹介してますが。

久保 先生は、そろそろ引退の年齢でしょ?(笑い)というより今は、幹細胞の研究で忙しい?

中間 老醜をさらす前に後進に道を譲るべし、です。美容医療の世界もそろそろ我々の年代は、後継のために技術を教えていかないと。
言いづらいですが、私よりさらに年齢が上の先生で〝老醜〝をさらすだけならいいんですが、後継を育てるどころか、足を引っ張って〝老害〝まき散らしている人もいます。もちろん技術は「秘伝」として決して外にはみせまん。

本紙 だからこそ、JAASの役割と責任がある?

山本 JAASのライブ講習、そして解剖学実習のようなトレーニングでは、スキルの底上げです。決して最先端の技術を磨いたり、ましてや周りに自慢したりするためのものではありません。低襲襲から襲襲性の高い施術や手術をあくまでスタンダードな治療術として教えていくことです。一般的なレベルできちんとこなせる医師の育成は、やがて、それぞれのドクターのエキスパート分野に必ずつながっていきます。誰しも得意不得意はあるものだから。

本紙 先生の整形塾はJAASの看板シリーズですね。〟入塾〝する医師が絶えません。

山本 お褒めいただき光栄です。エキスパート性を生かせるようになれば、患者さんをそれぞれが紹介しあえる。そして患者さんから信頼を共に得て、結果的に共有できるんじゃないでしょうか?

久保 その通りですね。私のところに受診にくる患者さんで、他院の修正症例は山本先生に紹介しています。

本紙 やはり競争、競合の中、美容クリニック間で患者さんの奪い合いをするという「負の連鎖」は断ち切りたいですね。お互いが疑心暗鬼になって、それが〝足の引っ張り合い〝というかたちになる。

池田 アンチエイジング美容外科。JAASが発足から掲げている標ぼうです。わたしは「老化を病気として捉える」という考えに賛成です。場合によっては外形だけではなく内面のアンチエイジングも必要です。つまり、この前提に立てば、一般医療と同じように、もっと美容に関わる医師たちがそれぞれの症例、情報を交換すべきだと思っています。

山本 失敗症例も含めて?

池田 そのとおりです。本音トークで。老化を病気と捉えるなら、BeforeAfterの症例だって、長いスパンで検討しあうことも必要です。治療した後、加齢に伴ってまた戻るはずで、では何年経って戻るのか?とか。

久保 大事な視点だね。CUVOは今でこそEyeDesignが「売り」になってますが、開業当初、もちろん失敗症例だってあった。そうした患者さんには、丁寧にフォローして修正もしましたが。ある意味、私の財産です。失敗から学ぶ教訓が、やがて生きてくる。

中間 中国の人口は半端じゃない。その症例数は経済と同じように、あっという間に世界No1になる。私が医学生時代を過ごした韓国では、その人口比に対する治療頻度は日本を圧倒しています。それに比べて日本の美容医療業界は症例数が少ない分、もっと症例交流を増やした方がいい。

本紙 すでに現状から展望に入ってますが、代表してJAASについてさらに山本先生からご発言を。

山本 JAASが既存の学会と大きく違うのは、異業種でも入会できるということです。たとえばエステ産業。美容医療側が、こうした同じ「美容産業」の仲間と付き合わずして、その人たちはわかるはずがありません。にも関わらず、エステを否定してしまう。悲しいことです。医師が他業種と交流し、お互いを認め合いながら、共に発展を望めば、「美容産業」全体が成長していきます。

池田 重要です。私も今年のJAAS第二期目のエステティシャン養成講座の講師を務めさせていただきます。

久保 今後の課題は、そうした会員間の交流と親睦を図り、ネットワークの構築をさらに強固にしていくことが大事ですね。

本紙 JAASとしての役割もそうですが、さて、とりわけ今年2013年の美容アンチエイジング医療はどういう方向に進むでしょうか?

久保
 御紙が調査したアンケート結果(本号1面10面参照)はおもしろい。まさに今多くの美容クリニックが抱え、そして集客を考えた治療の方向性が如実にあらわれた回答結果です。
確かに、美容医療のニーズはますます、「痛みを伴わない」傾向にある。

池田 弊院の患者さんはここ最近、手術よりフィラーなど低侵襲の治療を望む傾向が強く、その方が満足してもらえるんです。本来、私自身、形成の出身だし、できることなら治療効果が高く、持続性も保障できる形成術をしてあげたいのですが。

中間 確か、御紙だったか?あの韓国でも、今や「フィラー」や「糸スレッド」の方が受診率が高い。私がいたころは切った!はった!全盛の時代でした。だからいかにオペレーションの技術を習い、習熟するか、そして症例を数多くこなすか、あるいは初心者は解剖実習にも積極的に参加しました。

本紙 でも一方で、シニア層の需要からくる眼瞼形成術も、今年は高まるとする予想も結果から推察されます。

山本 美容医療の基本は、過去、現在そして未来にわたり、切開術だと思います。そのためのライブ講習会であり、年間数回の解剖実習です。手術ができない美容医療医は美容医療のスペシャリストではない、といいたい。低侵襲術ひとつとっても、解剖の知識と実際を知らなければ必ず、落とし穴がある。そして手術体験せずして、美容医療の上達はない!というのが、私の美容整形塾のモットーでもあります。

久保 JAASが唯一、続けている海外美容外科解剖・執刀トレーニング。発足前に中間先生とわたしが同行したよね。僕ら、経験者でも手術で不安の時がある。それを確認する意味で非常に解剖実習の意義は大きい。

中間 低侵襲のフィラー注入でもいい。スレッドリフトだっていい。解剖実習で確認すればいいと思います。場合によって、自分のオリジナル施術を考案するきっかけにもなるかもしれない。

山本 要は侵襲性が低いか高いかは問題ではない。いかに医師のスキルをあげて、どんな治療ケースでも、またどんな治療ニーズにも対応できるかが大事だと思います。そうすれば自ずと、美容医療全体のレベルがあがり、医療事故も減少していきます。

本紙 話しは変わりますが、久保先生、開業そして現在まで、患者さんの集客にはご苦労があったと思いますが?開業間もない、あるいはこれから開業する、もしくは一般医療から美容医療部門の併設を考えている先生方にぜひ、ヒントを。

久保 確かに最初はネットなどさまざまな方法を考え、実行して集客しました。もちろん時間とお金は使いました。しかしおかげさまで、今現在、患者さんの多くがリピーターです、ありがたいと思っています。

本紙 リピーターにする秘訣は?

久保 それはありません。まず患者さんに人物として気に入られることです。何も人格者ということではありません。自分のキャラの中で。つまり患者さんは、その医師のキャラにあう、あるいは縁のある人しか最後は来ません。あとは得意分野をつくることだと思います。

本紙 一般医療から美容医療をはじめる先生たちにとって、そもそも保険診療の受診者がリピーターになりますね?

久保 ある意味、一般医療の先生たちのほうが、リピーターを生み出しやすい。
ぜひ、美容医療の修学をしていただき、新たな需要を生み出していただきたいですね。そして専門外はJAASの先生方に紹介して頂ければ「いい循環」になります。実際にわたしのところにも、関西の整形外科の先生から、眼瞼形成の患者さんの紹介を受けたことがありますから。

本紙 そうですか。JAASではこの春からライブ講習会をレベルアップした、マンツーマン指導を行う「大学校」をスタートします。指導して頂く山本先生にそのあたりの話をお願いします。

山本 ライブ講習には年を重ねるごとに多くの先生たちが集まってきました。しかし現実的に講習会のみでは手術トレーニングが十分とは言い難い。上達するためには、症例を多くこなし、経験を積む必要があります。現在の日本の医局、あるいは教育病院での手術研修がこれにあたりますが、研修医や医師としてまだ日の浅い先生にはある意味このシステムは優れています。しかし経験値が高い医師やすでに開業している、あるいは勤務している医師にとっては、現実的にトレーニングを受ける場所、機会は皆無といっていいでしょう。
そこで開校するのが、症例を用意し、臨床経験を積みながら術者としてのトレーニングができる「大学校」です。

本紙 本当の人材養成としての段階ですね。技術アップは、これから世界市場で日本の美容医療が勝負するためにも、大きなアドバンテージを生むはずです。

山本 またJAASでは開業への必要な知識を勉強する講座なども今年、つくっていきたいと思います。他の理事の先生たちと知恵を絞って。そして、JAAS会員には優先的に弁護士、税理士など経営や医療クレームに対する専門家の日常的な相談や紹介などをしていきます。会員の先生方が現実的にも恩恵が受けられるように。

本紙 もう一つ、美容医療の技術研さんをして真摯に患者さんに向き合う会員の先生方が、適正な評価と患者さんの集客をしてほしい、ということでJAAS版のポータルサイトが昨年稼働しました。

久保 ぜひ多くの先生たちの集客をお手伝いするためにも、さらにポータルのアクセス数を増やしたいと思っています。

本紙 いずれにしても、2013年の展望と方向性は、今年一年もまずはJAASからの情報と多岐にわたる講習会や研修に参加いただき、参加する先生方が身近に感じとって頂きたいですね。

山本 久保 池田 中間
私たちも可能な限り、お手伝いしていきます。

本紙 今日はお忙しいところありがとうございました。

*あえてお断りさせていただきたい。JAASの理事および指導医の先生方への個人的な技術指導や「派遣医師」としての養成はお断りしています。ご希望や質問などがあれば、必ず事務局03-6222-3121か公式サイトhttp://www.jaas-online.comの問い合わせ欄からご連絡ください。



(JHM108号より)
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