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世界の中の日本 捨てたものじゃない日本の「使いこなしの文化」「使い勝手いい商品技術・良質なサービス」 [JHM]

[ 2012/10/16 ]
欧州旅行で



あえて私的なご報告をさせて頂くことをお許し頂きたい。
この夏、私はオリンピックの真っ只中・ロンドンに旅立った。旅程はあわせて10日間、ロンドンに数日滞在したあと、ヨーロッパ大陸を南下しながら伊ベニス、独ミュンヘンに足をのばした。欧州はおよそ10年振りで、今年大学に入学したばかりの長男を連れての二人旅でもある。専攻学科がドイツ語ということもあり、彼にとって3都市の中でもミュンヘンはことのほか思い入れが強い。
憧れのミュンヘンに到着し、彼が最初に受けた洗礼は大学授業とは違う「生のドイツ語」だった。そんな彼が受けたカルチャーショックは言語だけではない。

もう一つのカルチャーショックは「負のカルチャーショック」でなく「日本との差異を感じさせない類似の文化・生活様式・サービス」に対する共感と安心感だった。
3都市を通じて宿泊は、割安なビジネスホテルを選んだが、その3都市それぞれのホテルサービスや宿泊ルームの使い勝手に大きな違いを感じ取っていた。とりわけ彼が関心をもったのがフロントの対応である。
『日本のサービスに近い』と彼が漏らしたとおり、 Munich Courtyard Marriottの フロントスタッフは他の2都市のそれに比べ、きめ細やかさ、心配りが際立っていた。たとえば外食に出ようと地元ミュンヘン料理や日本食も含めた他国のレストランなどの照会を求めると、国別・お奨めメニュー・地図と細かな道順が整理されたスタッフ手作りのファイルを差出し、やさしい英語で詳しく説明する。無線Lan回線の質問にも丁寧な答えを返し、Macのパソコンを持ち込むと接続の操作も厭わない。
ミュンヘンのビジネスホテルはロンドン、ベニスに比べて最も割安の宿泊費にも関わらずだ。
そして部屋の家具、バスルーム、トイレ、冷房・空調設備に至るまで、その使い勝手はほとんど日本と変わらない使い。

日本へと帰途につく中、彼は「やはり日本の使い勝手が一番。日本では商品、サービスの提供者がユーザーの気持ちを第一に考えているような気がしてならない」とつぶやいた。海外にきて日本の良さを再認識する日本人は多い。かつて画壇、文壇の世界で多くの画家、作家が留学先の外国から帰国後、日本特有の芸術、作風を生み出したことは象徴的な事例であろう。
いずれにしてもこの旅が彼にとって「異文化、民族と直接出会い、その違いや共通性を見出した」ことこそ、最大の収穫だったと思う。


使いこなし文化こそ日本が勝つ源泉


さて話しは巷で盛んに叫ばれる「グローバリズム論」に移る。ここに日本と韓国の相違を論じた近著『グローバリズム経済に殺される韓国 打ち勝つ日本』(三橋 貴明著)がある。 
サムソン、LG、現代そしてポスコなどと名だたるMade in Koreaの大企業が世界マーケットを席巻し、一躍韓国経済の成長が注目されている。かつてJapan as No1を自負した日本企業の凋落ぶりからか、財界、マスコミが「韓国に見習え」「韓国経済のグローバル化を参考にTPP交渉を急げ」などと旗をふる。
しかし、この著者・三橋氏はこうした議論に真っ向から反論しているからおもしろい。彼は、「韓国はグローバル化資本で経済植民地化していく。新自由主義経済学を基本とした株主優先の資本主義が格差社会を生み、借金漬けになる韓国国民。そもそもGDP比50%に迫る輸出依存度をもつ韓国に比べ、日本は超内需国である。

TPP参加による自由貿易は愚の骨頂!デフレを進行させるだけ。デフレを解消し円高に向かわせるのは、国が国債発行で財政出動し、日銀は通貨発行をすべき」というである(詳しい論点については本書をお読みいただきたい)。

そしてデフレを脱却してから国内市場を拡大させることを優先しなければならない、という。内需拡大でまず日本企業が利益をだし、それが従業員(生活者)の貯蓄を増やし、その家計の貯蓄を企業が銀行から借りて投資にまわし成長していくことが、資本主義の健全な発展でもあると著者は強調する。
この提唱が果たしてすべて正しいかどうかは、読者それぞれのお立場、お考えに任せたい。しかし本書で興味深い指摘があるので紹介したい。

内需を捨てグローバル化をめざすことは、かつてソニーなど多くの日本企業が輝いていた「使いこなし」のできる1億人の消費者を失うことになる。こう指摘しながら、世界に類を見ないほど目が肥え品質にうるさく「使いこなし」のできる国内消費者によって、企業は新製品を開発し技術に投資してマーケットを拡大してきたという。そしてソニーを例に、「国内の使いこなしスキルの高い消費者を相手にしながら、その高い品質と技術が海外での競争力の源になった」と指摘する。 

この日本特有の「ガラパゴス文化・市場」を捨てて海外に勝負を挑んでも、さすがに円高では勝てない。だからその前に前述のデフレ対策をまず進めよ!ということになる。
「使いこなし」に長けた日本の消費者から鍛えられつくりだされる「使い勝手」がいい日本の技術と商品マーケットとは、歯科インプラントや美容医療の世界でも当てはまることは違いない。

この秋開催された11回目のJAASの解剖学実習(中国大連)に参加した、あるインプラント歯科医はこう話していた。
「かつて欧州で最先端のインプラント研修をした折、著名な欧州の歯科医のライブをみた。術式は参考になったが、オペの技術は思いのほか驚くことはなく、どちらかといえば大ざっぱで、日本人のきめ細かな技術を改めて見直したほどです」

日本人だからこそできるきめ細やかな歯科インプラントや、美容形成術はまさに「ガラパゴス技術」であろう。しかも対象は人間の歯であり顔であることはいうに及ばない。だからこそ、日本で鍛錬された技術は間違いなく世界で勝ち抜くことができる。

そのためにもまずは技術の習熟が欠かせない。そして歯科インプランや美容形成術のボトムアップをして、まずは「内需」の拡大をはかっていきたい。
弊紙が一貫して主張してきた「治療術をOPENにしてお互いに切磋琢磨しながら技術の向上をはかることが、需要を結果的に拡大する」
ことになる。だからこそ今JAASの役割がある。


(JHM106号より)
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