生活習慣病の予兆マーカーにd-ROMs、BAPテスト活用へ [JHM]
[ 2011/8/11 ]
今年で9回目となる「酸化ストレス・抗酸化セミナー」が先ごろ開催された。定員200名を超える聴講者が詰めかけたこのセミナー、回を重ねるごとに参加者が増加した背景には、主催・ウイスマーのフリーラジカル分析装置『FRAS4』が、さまざま分野で活用されてきたことが大きい。『d‐ROMsテスト」と『BAPテスト』は、生体内の酸化ストレス度と抗酸化力を簡便・短時間にそして高い再現性により計測できる測定法として、その臨床応用が進む。生活習慣病の予防さらには、アンチエイジング診療へと、今やこの評価値が重要な”健診マーカー”として位置づける臨床医さえ少なくない。国内外9名の演者の多くが、この分析システムを用いた最新の知見や臨床成果を発表して、詰めかけたFRASユーザーから高い関心を集めた。
セミナーではまず、『FRAS4』の製品開発元となるディアクロン社の専務取締役 製品開発部長のフィリッポ・カラテッリ氏が挨拶、今までの開発経緯、その歴史を述べた後、新しいd‐ROMsおよびBAPテストについて紹介した。特別演者として9度目の来日となったE.L.Iorioローマ大学医学部教授(国際酸化ストレス研究機構会長)の研究支援を得ながら、ウイスマー社と共同開発した酸化還元分析装置(現在国内の医療機関などでスクリーニング試験を行っており今秋、carrio200,400として発売される)である。
中でも4チャンネルは、血液のd-ROMsとBAPテストを、1種類のテストを4検体同時に、または2種類のテストを各2検体づつ5分で正確に測定してしまうという。すでに医療機器申請を出しており、日本国内生産として出荷を待つ。
セミナー演目はいよいよこの分析システムを用いた最新の知見や臨床報告が行われたが、その専門分野は、循環器、高齢者医療、腫瘍学、口腔外科、心身医療、予防医学、総合健診、疲労など多岐に及んだ。
とりわけ注目を集めたのは、「高血圧性血管障害の新規サロゲートマーカーとしてd‐ROMsの健診への応用」と題して報告を行った山門 實・三井記念病院 総合健診センター所長(昭和大医学部 衛生学客員教授)。
かねてからd‐ROMsの健診への応用を検討してきたが、高血圧性血管障害の初期的な状態をとらえる新たな予兆マーカーになりえることを確認した。
山門教授らの臨床研究チームは、まず米国NCCLSの基準個体の設定に沿ってインフォームドコンセントが得られた人間ドックの受診者2355人(男性1477人、女性878人)を対象に、d‐ROMs、BAPテストを測定、統計的に検討した。その結果、女性で
d‐ROMs値が高く、d‐ROMs、BAP値共に男女差が認められた。
そしてd‐ROMs、BAPテストが従来マーカーとの有意な相関関係があることを見出している。その上で、頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)の増加に伴って、d‐ROMsは有意に増加傾向を示し、BAPは低下することがわかった。
山門教授は、「IMTで異常が出る前に、d‐ROMsテストで値が高い群には積極的な介入を行っていくことで臨床的な対処ができる」として、人間ドックの重要なマーカーであることを示唆した。
高血圧、動脈硬化、糖尿病など生活習慣病の予兆マーカーを知る手段として、この評価システムが充分に活用できることが立証されたといってもいいだろう。
一昨年に演者として「血液にオゾンを添加する血液クレンジング療法を行うと、1回の施術でもBAPの値が低い人は改善し、継続して行った患者では、その値が保たれている」とその臨床報告をした故・伊藤 壱裕医師は、FMDについても同様の傾向を示すと述べていた。
つまりBAPの数値が悪い人は、血液クレンジングでその値は改善して、血管内皮の状態が改善される効果を明らかにしている。健診の有力なマーカーとして評価され、そしてオゾンクレンジングなどの治療術で積極的に介入していくことでBAPは低下し、症状の改善をみる。
この分析装置が、予防医学、アンチエイジング診療にまずます欠かせない存在となりつつあることは、間違いなさそうだ。
その他の演者は次の通り
・「特別講演 活性酸素と脳免疫統合系の生存戦略」大阪市立大学大学院医学研究科 井上正康教授
・「疲労の客観的な評価法‐酸化ストレスの変化」関西福祉科大学健康福祉学部 倉恒弘彦教授
・「糖尿病における酸化ストレス測定の意義」京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室室長 坂根直樹先生
・「脂質診療における酸化ストレス測定の意義」自治医科大学臨床検査医学講師 小谷和彦先生
・「日本人一般市民の酸化バランス防御系」財団法人国際全人医療研究所 永田勝太郎理事長
・「酸化ストレスが唾液の分泌を抑制する」日本歯科大学生命歯学部口腔外科学口座准教授 松野智宣先生
・「非ホジキンリンパ腫の悪性度を評価する新たなバイオマーカー酸化ストレス度」山口大学大学院医学系研究科生体情報検査学 野島順三教授
・「高齢者診療におけるd-ROMs testの測定意義」ひつもと内科循環器科医院院長 櫃本孝志先生
・「心血管病における酸化ストレス/抗酸化力測定の意義」名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科特任講師 柴田玲先生
(JHM100号より)