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ビタミンCの大量投与は栄養療法を統合医療の時代の主役の座に復権した[JHM]

[ 2011/8/2 ]

㈱ヘルスビジネスマガジン社
代表取締役会長 木村 忠明氏

2度のノーベル賞を受賞し20世紀を代表する化学者といわれたライナス・ポーリング博士が亡くなって17年が経つ。
博士がビタミンCの大量投与による分子矯正医学を提唱したのは今から45年前の1968年のことだ。きっかけは、カナダの精神科医のエーブラム・ホッファー博士とオズモンズ博士がニコチン酸やニコチン酸アミドを大量に使って、統合失調症治療の論文を読んだことだ。

ホッファー博士の療法は驚くべきものだった。ニコチン酸はビタミンB3やナイアシンともいわれるビタミンB群の一つとして知られるが、このニコチン酸を1日3gから18gも投与して、精神分裂病患者の治療に成果を上げていた。通常、ニコチン酸は国の食事摂取基準の推奨量では成人男性15mg、女性12mgで、極少量で必要量を満たすビタミンだと信じられていた。 
過剰の危険がある上限量でも300mg程度であることを見ても、ホッファー博士の治療で使われていたニコチン酸が従来の栄養の概念に当てはまるものでないことは明らかだ。

こうした研究に着想を得て1968年にポーリング博士が分子矯正医学を提唱した。これは「元々人間の体内に無ければならない、不足している必要な栄養素を大量に摂取すると、体内での生理作用から薬理作用に変化し、病気が治る」という考えを基盤とした栄養を中心の新しい医学で、ポーリング博士は特にビタミンCの大量投与を主張した。

現在の食事摂取基準では人が一日に必要な栄養素はこれ以下になると欠乏の危険がでてくるといういわゆる下限を「推奨量」、これ以上摂ると過剰症の危険がある上限を「耐用上限量」としている。この範囲をいわゆる栄養の生理作用のレベルとして、欠乏を防ぐ栄養の必要から生活習慣病の予防の量までの幅広い範囲を定めている。だが、過剰症の危険のある「耐用上限量」を遥かに超えた量を投与すると、栄養が薬理作用を発揮するということは意外に知られていない。この量を薬理投与(Pharamacologic doses)という。

ポーリング博士による「グラム単位のビタミンCの摂取が風邪やインフルエンザ、さらにがんの予防や治療に役立つ」とした考えを、当時の医学界は受け入れようとはしなかった。
メーヨークリニックでの追試は、ビタミンCの大量投与ががん細胞を殺すというポーリング主張を否定して見せた。

ところが2005年に国立衛生研究所(NIH)の研究者らによるビタミンCががん細胞だけを選択的に殺すことを明らかにした論文を国立科学アカデミーの紀要に掲載されて、大きな話題になった。さらに2006年にカナダの研究者らが3名のがん患者にビタミンCの大量投与で延命効果があることが明らかにした。

ポーリング博士のビタミンCの大量投与説が正しかったことを裏付けたかたちになった。アメリカではすでに1万人を上回る医師が患者へのビタミンCの投与を始めている。方法は静脈への点滴で、多い場合1回に100gという大量投与を行っている。日本でも多くの医師が点滴療法を始めている。

この薬理投与量による大量投与はビタミンCだけでなく、魚油(DHA・EPA)などの他の栄養素にも広がりを見せている。
新たな栄養を重視した療法の時代が到来し始めている。

■編集部から
木村 忠明氏は、首尾一貫して「サプリメントによる栄養教育、健康増進の必要性」を業界紙の記者という立場から訴えてきた。本紙JHM発行人は、若き時代その木村氏に育てられたと言ってもいい。独り立ちしてアンチエイジング、美容医療という世界に軸足を置いた本紙ではあるが、はからずも栄養療法が「もう一つ医学(Alternative Medicine)」を支える時代を迎えた。本紙報道そして運営する医学会、研究会が続けてきたIVC(ビタミンC点滴)など多くの診療、治療術がやがて主流医学になっていくことを強く望む。そして100号の佳節にあたり寄稿いただいた木村氏に感謝したい。



(JHM100号より)
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