再生医療 臨床応用に新たな制度づくり着手[JHM]
[ 2011/8/1 ]
iPS細胞を、山中京都大学教授が世界に発表した後に、2008年、厚生労働省がヒト幹指針を決め、今も日本の再生医療の基本的な指針となっている。この指針には、ES細胞や、iPS細胞が含まれているためもあって、臨床試験の全体のハードルが高いという見解もある。
しかし、iPS細胞の発癌因子の問題がまだ解決されていない。海外での研究者、ことにアメリカなどの研究者は臨床での応用には、否定的である。また、ES細胞ではその倫理的問題や、奇形腫の発生が問題視されている。しかしながら今年からアメリカでは、脊髄損傷に対し、ES細胞の臨床試験が始まっている。
こうした中、韓国のRNLBio社が行ってきた医療ツーリズムで昨年秋、脂肪由来幹細胞の静脈注射による死亡事故を二箇所のクリニックで起こしたことが、韓国の国会で取り上げられた。クライアントの集客方法についても問題があることも指摘された。
死亡原因としては幹細胞による肺塞栓の可能性が示唆された。
そのため、今年、開催された日本再生医療学会で、海外での幹細胞の培養と治療を含め、安易な治療を禁止し、安全かつ、患者への安全性を確保し、かつ、厚生労働省のヒト幹指針の遵守が声明文として警告された。
一方、海外での骨髄由来の培養した幹細胞治療では、局所投与(小児の腎局所投与)で発癌した為に死亡した症例報告がなされ、ここにきて海外でも、骨髄由来幹細胞から脂肪由来の幹細胞治療に本格的に参入する機運が高まった。
そして、厚生労働省の班会議では「日本の再生医療の技術がヨーロッパに流出している事実」があり、ヒト幹指針を、平成二十三年度中に見直す意見交換がなされた。文科省、経済産業省、科学技術省、内閣府など、広く高い見地で再生医療の臨床試験のあり方を議論せねばならないという意見が示唆された。基本的には、国策としての再生医療のあり方が議論されたうえで、臨床試験のあり方も、海外の制度を参考にしつつ見直すべきと言う意見もあがっている。
現時点では、国際的にも再生医療の幹細胞の主流は、脂肪由来間葉系幹細胞にシフトして来た感が強い。
いずれにしても日本における本格的な再生医療が今年スタートするといってもいい。
本紙編集アドバイザーのお一人、医新会グループ理事長の横山 博美医師は「ビトロ(試験管内)で作成された細胞、採取した直後の幹細胞、培養した幹細胞を含め、iPS細胞,ES細胞、,骨髄由来、脂肪由来幹細胞のそれぞれの特徴、メリット、デメリットが早急に解明される事が最も重要であり、それぞれの研究者が胸襟を開き、それぞれの細胞を理解しあう事が肝要です」と話す。
本紙では2年前から、幹細胞治療そして美容医療への応用について、前述のRNLBio、さらには日本での医療施設における臨床試験、美容医療としてのステムセルセラピーなどの動向を報道してきた。
しかしここにきて、政府、行政がさらに厳格なガイドラインを整備していく動きもあり、今までのようにクリニックの安易な幹細胞治療の導入や培養細胞の委託による医療連携は難しい。
ましてや「幹細胞療法」をファンドビジネスの好機ととらえ、医療を金融商品とさえ割り切って活動する行為など言語道断と言わざるを得ない。
日進月歩で新たな技術が生まれるアンチエイジングや美容医療の世界にあって、「標準医療」ではない新たな治療術を見出し実践していくことは大切だが、あくまでも「医術の目的」を忘れてはならない。そして何よりも目の前の患者を救い、その医療行為によって患者がより幸福感を味わっていくことこそ大切なのではないだろうか。
(JHM100号より)
しかし、iPS細胞の発癌因子の問題がまだ解決されていない。海外での研究者、ことにアメリカなどの研究者は臨床での応用には、否定的である。また、ES細胞ではその倫理的問題や、奇形腫の発生が問題視されている。しかしながら今年からアメリカでは、脊髄損傷に対し、ES細胞の臨床試験が始まっている。
こうした中、韓国のRNLBio社が行ってきた医療ツーリズムで昨年秋、脂肪由来幹細胞の静脈注射による死亡事故を二箇所のクリニックで起こしたことが、韓国の国会で取り上げられた。クライアントの集客方法についても問題があることも指摘された。
死亡原因としては幹細胞による肺塞栓の可能性が示唆された。
そのため、今年、開催された日本再生医療学会で、海外での幹細胞の培養と治療を含め、安易な治療を禁止し、安全かつ、患者への安全性を確保し、かつ、厚生労働省のヒト幹指針の遵守が声明文として警告された。
一方、海外での骨髄由来の培養した幹細胞治療では、局所投与(小児の腎局所投与)で発癌した為に死亡した症例報告がなされ、ここにきて海外でも、骨髄由来幹細胞から脂肪由来の幹細胞治療に本格的に参入する機運が高まった。
そして、厚生労働省の班会議では「日本の再生医療の技術がヨーロッパに流出している事実」があり、ヒト幹指針を、平成二十三年度中に見直す意見交換がなされた。文科省、経済産業省、科学技術省、内閣府など、広く高い見地で再生医療の臨床試験のあり方を議論せねばならないという意見が示唆された。基本的には、国策としての再生医療のあり方が議論されたうえで、臨床試験のあり方も、海外の制度を参考にしつつ見直すべきと言う意見もあがっている。
現時点では、国際的にも再生医療の幹細胞の主流は、脂肪由来間葉系幹細胞にシフトして来た感が強い。
いずれにしても日本における本格的な再生医療が今年スタートするといってもいい。
本紙編集アドバイザーのお一人、医新会グループ理事長の横山 博美医師は「ビトロ(試験管内)で作成された細胞、採取した直後の幹細胞、培養した幹細胞を含め、iPS細胞,ES細胞、,骨髄由来、脂肪由来幹細胞のそれぞれの特徴、メリット、デメリットが早急に解明される事が最も重要であり、それぞれの研究者が胸襟を開き、それぞれの細胞を理解しあう事が肝要です」と話す。
本紙では2年前から、幹細胞治療そして美容医療への応用について、前述のRNLBio、さらには日本での医療施設における臨床試験、美容医療としてのステムセルセラピーなどの動向を報道してきた。
しかしここにきて、政府、行政がさらに厳格なガイドラインを整備していく動きもあり、今までのようにクリニックの安易な幹細胞治療の導入や培養細胞の委託による医療連携は難しい。
ましてや「幹細胞療法」をファンドビジネスの好機ととらえ、医療を金融商品とさえ割り切って活動する行為など言語道断と言わざるを得ない。
日進月歩で新たな技術が生まれるアンチエイジングや美容医療の世界にあって、「標準医療」ではない新たな治療術を見出し実践していくことは大切だが、あくまでも「医術の目的」を忘れてはならない。そして何よりも目の前の患者を救い、その医療行為によって患者がより幸福感を味わっていくことこそ大切なのではないだろうか。
(JHM100号より)