ＪＨＭ異論、反論！ アンチエイジング研究成果 [JHM]
[ 2011/6/20 ]
第4回 葉酸、V.B12の摂取は非摂取群に比べガン発症で21％、死亡数で38％増加する
虚血性心疾患患者6,837人に葉酸、V.B12など39カ月投与で、ガン発症、死亡増に
そもそも試験計画が、「葉酸とガンの関係」ではない
被験者の選択に、ライフスタイルや職業的な問題を考慮すべき
学術論文、研究報告にはさまざまな研究者の視点と多くの識者の考察が欠かせない。時には、その研究課題が純粋な探求目的から逸脱し、あらかじめ想定される何らかの意図的な仮説に符号するような結論を導き出す大規模試験もあるようだ。アンチエイジングや補完代替医療、さらには美容医療における研究発表、報告ではそうしたことがあってはならない。本稿では、AIFN＊（１）の協力を得て、この研究分野に焦点をあて最新のレポートに対する真摯な議論の場として研究主題に対するコメントを取り上げていく。第4回目は、虚血性心疾患患者におけるガン発症、死亡リスクの上昇と葉酸/ビタミンB12の関係についての研究報告がテーマとなる。
【研究報告】
葉酸、V.B12の摂取は非摂取群に比べガン発症で21％、死亡数で38％増加する
【著者】
Ebbing M, Bonna K, Arnese E, et al.
【掲載誌】
Journal of theAmerican Medical Association 2009;
302(19):2119-2126
【研究報告の要旨】
2 件の無作為対照比較試験のフォローアップ結果の解析報告である。
虚血性心疾患患者 6,837 名に、平均して39 カ月間、B 群ビタミンを投与、および6,291 名に対して、投与試験後観察的フォローアップ試験を38 カ月実施した。患者は、無作為に抽出され、下記のうちから1 種の治療法を受けた。
１．葉酸（0.8mg/日）、ビタミンB12(0.4mg/日)とビタミンB6（40mg/日）
２．葉酸（0.8mg/日）とビタミンB12（0.4mg/日）
３．ビタミン B6 単独
４．プラセボ
葉酸(Folic Acid)は工業的に生産されたもので、ビタミンB12はシアノコバラミン、ビタミン B6は塩酸ピリドキシンとした。
その結果、葉酸に加えビタミン B12 を摂取したグループ（第２群）は、ガン発症が非摂取群よりも21％
増加、ガン死亡数において
は38％増加し、すべての死
亡例で18％増加している。
【反論: ADSA ＊（2）科学グループ アラート・サービス（ISAS）】：
研究後のフォローアップとして得られたこの結果は、確証されたものとはいえな
い。
明らかにしておかなければならないことは、前記39 カ月間実施された投与試験2件が、葉酸とガンの関係を調査するように計画されたものではないことである。
葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6 を非喫煙者に投与した研究、及び地理的に異なる場所で行われた研究が、今後の課題として望まれる。
著者は、コメント欄で「この結論は、他の対象者で確認されることが必要である」と述べている。
結論として、この研究結果によって、多くの信頼できる既報の、葉酸の有益な効果に対する見解が否定されるものではない。
一方、人々の健康という視点からこの研究は、喫煙が肺ガンのリスクを高めるというもうひとつの確証を提示している。葉酸を多く摂取した患者群が、なぜコントロール群より肺ガンの発症が高いのかは明らかではない。
葉酸投与群には、例えば、ライフスタイルや職業的な問題で、ガン発症が高率となってしまうような要因があり、そのために結果が悪くなったとも考えられる。
重要なことは、これらの結果が、より大規模に行
われた既報の結果とは矛盾していることである。実際、著者自身が「疫学研究においては、食品由来の葉酸及び葉酸と肺ガンとの間の関係を報告したものはない」と指摘している。
もうひとつの矛盾点は、葉酸が、結腸・直腸や前立腺のガンには効果がないとしている点である。
明確にはいえないが、既存の科学データを参照するに、消費者や健康に携わる専門家が葉酸を健康食品として日々適量を摂取することの有効性や安全性に問題はないだろう。
IADSA では、論文に併記されているJAMA1 の論説にある「この結論は、葉
酸の強化が人々の健康に与える長期的な有益性を無効にするものではない。」という記述をもって結論とする。
＊（１）AIFN：消費者に対して栄養補助食品の正しい知識と科学的根拠を発信する団体で、国内外の企業が加盟する。
＊（２）IADSA：健康補助食品業界団体国際連合会の略称で、世界の栄養行政や制度の決定に、多大な影響をもつRegulatryscienceを求めていく団体である。
（JHM99号より）
虚血性心疾患患者6,837人に葉酸、V.B12など39カ月投与で、ガン発症、死亡増に
そもそも試験計画が、「葉酸とガンの関係」ではない
被験者の選択に、ライフスタイルや職業的な問題を考慮すべき
学術論文、研究報告にはさまざまな研究者の視点と多くの識者の考察が欠かせない。時には、その研究課題が純粋な探求目的から逸脱し、あらかじめ想定される何らかの意図的な仮説に符号するような結論を導き出す大規模試験もあるようだ。アンチエイジングや補完代替医療、さらには美容医療における研究発表、報告ではそうしたことがあってはならない。本稿では、AIFN＊（１）の協力を得て、この研究分野に焦点をあて最新のレポートに対する真摯な議論の場として研究主題に対するコメントを取り上げていく。第4回目は、虚血性心疾患患者におけるガン発症、死亡リスクの上昇と葉酸/ビタミンB12の関係についての研究報告がテーマとなる。
【研究報告】
葉酸、V.B12の摂取は非摂取群に比べガン発症で21％、死亡数で38％増加する
【著者】
Ebbing M, Bonna K, Arnese E, et al.
【掲載誌】
Journal of theAmerican Medical Association 2009;
302(19):2119-2126
【研究報告の要旨】
2 件の無作為対照比較試験のフォローアップ結果の解析報告である。
虚血性心疾患患者 6,837 名に、平均して39 カ月間、B 群ビタミンを投与、および6,291 名に対して、投与試験後観察的フォローアップ試験を38 カ月実施した。患者は、無作為に抽出され、下記のうちから1 種の治療法を受けた。
１．葉酸（0.8mg/日）、ビタミンB12(0.4mg/日)とビタミンB6（40mg/日）
２．葉酸（0.8mg/日）とビタミンB12（0.4mg/日）
３．ビタミン B6 単独
４．プラセボ
葉酸(Folic Acid)は工業的に生産されたもので、ビタミンB12はシアノコバラミン、ビタミン B6は塩酸ピリドキシンとした。
その結果、葉酸に加えビタミン B12 を摂取したグループ（第２群）は、ガン発症が非摂取群よりも21％
増加、ガン死亡数において
は38％増加し、すべての死
亡例で18％増加している。
【反論: ADSA ＊（2）科学グループ アラート・サービス（ISAS）】：
研究後のフォローアップとして得られたこの結果は、確証されたものとはいえな
い。
明らかにしておかなければならないことは、前記39 カ月間実施された投与試験2件が、葉酸とガンの関係を調査するように計画されたものではないことである。
葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6 を非喫煙者に投与した研究、及び地理的に異なる場所で行われた研究が、今後の課題として望まれる。
著者は、コメント欄で「この結論は、他の対象者で確認されることが必要である」と述べている。
結論として、この研究結果によって、多くの信頼できる既報の、葉酸の有益な効果に対する見解が否定されるものではない。
一方、人々の健康という視点からこの研究は、喫煙が肺ガンのリスクを高めるというもうひとつの確証を提示している。葉酸を多く摂取した患者群が、なぜコントロール群より肺ガンの発症が高いのかは明らかではない。
葉酸投与群には、例えば、ライフスタイルや職業的な問題で、ガン発症が高率となってしまうような要因があり、そのために結果が悪くなったとも考えられる。
重要なことは、これらの結果が、より大規模に行
われた既報の結果とは矛盾していることである。実際、著者自身が「疫学研究においては、食品由来の葉酸及び葉酸と肺ガンとの間の関係を報告したものはない」と指摘している。
もうひとつの矛盾点は、葉酸が、結腸・直腸や前立腺のガンには効果がないとしている点である。
明確にはいえないが、既存の科学データを参照するに、消費者や健康に携わる専門家が葉酸を健康食品として日々適量を摂取することの有効性や安全性に問題はないだろう。
IADSA では、論文に併記されているJAMA1 の論説にある「この結論は、葉
酸の強化が人々の健康に与える長期的な有益性を無効にするものではない。」という記述をもって結論とする。
＊（１）AIFN：消費者に対して栄養補助食品の正しい知識と科学的根拠を発信する団体で、国内外の企業が加盟する。
＊（２）IADSA：健康補助食品業界団体国際連合会の略称で、世界の栄養行政や制度の決定に、多大な影響をもつRegulatryscienceを求めていく団体である。
（JHM99号より）