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歯科にもエステ 美容医療は「医科・歯科」連携が突破口!?に [JHM]

[ 2011/6/13 ]
医療は安定経営という「神話」はもはや崩れ去った

長期低迷がつづく日本経済、市場はデフレスパイラルから抜け出せない。そして購買力はますます弱まる傾向にある。美容医療もまた例外ではない。本紙の取材網としてたびたび報じている韓国ではその経済成長ぶりや、活発化する医療ツーリズムを受けて美容医療業界も上げ潮ムードだと思われるがちだが、決して好調というわけではない。美容整形を受診する裾野は日本より広いが、以前に比べ需要の伸びが鈍化していると聞く。評判のいい医師たちは、月曜から金曜は国内で、週末はその技術を見込まれて中国へと「出稼ぎ」に行く。またソウルなど都会では、競合激化とテナント代など固定費の高さから収益性が思いのほか悪く、地方へとクリニックを移転する美容形成医もあらわれている。一方、日本でも内需から外需へと一部転換しようとする動きもあり、海外からの患者誘致の取り組みや、巨大市場Chinaにクリニックを進出させる大手美容外科も現れてきた。果たして国内の美容医療、アンチエイジング外科・内科の市場は先細りになっていくのだろうか?本紙では潜在需要はまだまだあるとみている。2011年の動向を占うこの連載、第3回目は美容医療・アンチエイジングにおける今年の市場性を、各論編として前半、後半と分けて述べてみる。


自費診療部門を開設するクリニックが増える

美容医療・アンチエイジングの分野に、保険診療から転身あるいは一部の診療を導入しようという動きは今年さらに加速する。つまり他科からの医師が自費診療をめざしその参入ラッシュは高まると本紙はみる。
77号の提言ページ・山本クリニック院長・山本 豊医師の論説をお読みいただきたい。
「保険診療では医療費は国が払ってくれるという認識のもと、医師も経営をあまり真剣に考えず医療行為ができた。算術はなくても経営は充分成り立つ仕組みでした。しかし医療費削減を至上命題に掲げる国はもはや、診療報酬を下げざるを得なくなった。医療機関は国が定める報酬に従い、減収を余儀なくされる。結果、コスト削減、人件費のカットが行われ医療の質までも影響が及ぶ局面さえある。この現状を打破できるのは言うまでもなく、混合診療ではない、自費診療の導入である」
多少長いコメントの引用であるが、本紙が指し示す予測に対する根拠の一つではないだろうか?
シリーズ(上)で示した統計だが、美容整形の市場順位は、一位がアメリカ、2位がメキシコ、3位ブラジルと続き、日本は4番目につける。最新のデータでこの順位に変動はあるものの、日本マーケットが閉そく感を持ち続ける中、美容医療はまだまだ潜在需要が見込めるはずだ。
とはいえ、景気低迷そして震災のダブルパンチが11年日本を叩きのめしている。美容医療にかける出費もまた抑える傾向にある。そこでクリニックでは治療費をさげる。自ずと一人当たりの単価はさがり、勢い治療メニューを増やさざるを得ない。そこには医師の勉強とそして投資がかかる。だが経営上ますます無駄な投資は控えることになっている。


美容医療機器に価格破壊の波


一台1000万円、2000万円もするフォト、レーザーなどの美容医療機を次々と揃えてきた「バブル期」はもはや遠い昔となった。導入する装置にかける投資額はできるだけ安く、そして治療効果のさらに高いものを求める傾向をみせる。その上、消耗品などイニシャルコストもクリニックでは抑えることは言うまでもない。
こうした美容医療機器に対するニーズから、フォトフェイシャル、超音波、キャビテーション、RFさらには、Yag、CO2フラクショナルレーザーはここ最近、価格破壊の波が起きている。
加えて一台の装置で多機能の操作性をもつ機器が市場に投入されてきた。また本体につくハンドピースを交換せずに使えるものもある。
フォト、レーザーなどでは波長と照射法によってターゲットとなる治療部位、症状に作用させるが、フォト系で不可能だった深部のシミや刺青の消去にも治療効果が期待できる機種もあらわれた。さらにキャビテーション、RF、超音波など登場により深達度が高まった。これにより組織、細胞への「創傷治癒」効果が高まるため、リフティング、引き締め、脂肪除去などが可能となる。もちろんレーザーも技術改良が進みさまざまな治療ニーズに対応できる機種も増えた。そしてその価格も従来機種に比べ低い。
いずれにしても、こうした装置類に求められている最大の要因は、「投資額をできるだけ早く回収して治療効果の高い性能」だ。そのためには装置価格が最も重視される傾向にある。
非医療として使える美容機器に対する関心は相変わらず根強い。
メディカルエステを併設する医療機関やデンタクリニックが都心を中心に増えているが、こうした施設で必ずと言っていいほど導入されるのが、美容機器である。エステティシャンや看護師が非医療の範囲内でこうした施術マシンを使いこなせれば、医師が自らの診療を有効に使うことができる。ハンド術も含め熟練のエステティシャンを週何日か雇うだけで、クリニックの収入が大きくあがったところもあるくらい。
医療という痛みを伴うイメージをエステによって少しでも払しょくし、癒しの空間を演出することで患者からの支持は高まる。そして何よりも医療施設でのエステは、患者からの信頼が高い。美容機器の市場に医療機関という新たな流通が生まれていることは間違いなさそうだ。


アンチエイジングで数少ない体感療法「オゾンクレンジング」


アンチエイジングそして美容医療の世界で、内科的なメニューと言えば、高濃度ビタミンC点滴そして、血液オゾンクレンジングやUV照射による血液フォトセラピーである。これらは自費診療を導入するにあたり比較的採用しやすい。医師はもちろんだが、看護師でも基礎知識と要領さえ覚えれば処置ができるため、医師が治療に拘束される「時間というコスト」を抑えられるためだ。
血液オゾン療法は、昨年から美容医療、そして歯科にまで導入が始まり、治療というよりむしろアンチエイジングとしての体感で患者からの支持を得ている。医療用酸素を使いオゾンジェネレーターさえあれば、医師そして看護師にも使えるため、手を出しやすい。ジェネレーターと附属品、酸素などが経費負担となるが、都心の相場2万円〜3万円の治療費をとれば導入後100人の患者で減価償却は終わる。
一方、内科系の医師でも入りやすい美容医療のメニューに、プラセンタ注射やにんにく注射などの注射術。またヒアルロン酸やPRP、PPPプラズマフィラー、ヒアルロン酸などのフィラーやBOTOX注射などがある。いわば美容医療術の入門コースといっていい。
プラセンタやBOTOX製剤はその適用で、一部保険がきくため美容に縁のない医師でも安心してやることができる。始める医療機関は年を追うごとに増えており、今年もその動きは加速する。
眼瞼、フェイスリフト、鼻形成、輪郭形成術、脂肪吸引、豊胸術など、オペ難易度が高く、トレーニングを積まないとリスクも高い美容形成術はもちろん、こうした「プチフィラー整形術」でも、一見簡単そうに見える施術だが、理論と施術の講習、トレーニングを怠れば、事故の元になる。
くれぐれも導入する前は、信頼できる指導医に習うことをお勧めしたい(JAAS日本アンチエイジング外科・美容再生研究会で一年を通じてハンズオンセミナーを実施)。


院内物販の収入は決してバカにできない


先述の注射術と共に、美容医療、アンチエイジング医療の勉強を始める保険医で常に関心が高いのが「サプリメント外来」である。
血液検査による診断、カウンセリングをすることによって、より信頼度の高い栄養指導、サプリメント指導が可能だ。この分野で先駆的な療法を始めた溝口医師の「分子整合栄養療法」は、今やアンチエイジング診療を実践する多くの医師の定番的メニューといえよう。
栄養療法の本場アメリカの「機能性医学」を学びつつ、一方で先の溝口医師の考えを取り入れながら、新たなサプリメント療法を打ち出したのがアンサークリニック総院長・斎藤 糧三医師である。
現代人の慢性栄養欠乏に対して「病気に対する医学」でない、「病態に対する治療」としてアプローチしていく。この治療で対象となる疾患は幅広い。
そして栄養療法を施すにあたって斎藤医師が独自に見出したのポイントが検査データの見方。BUN、GOT-GPT、ALPとMgZnとの関係性、フェリチンなど、病態との関係性について多くの読み取り方をする。
自らが代表を務める日本機能性医学研究所からは、外来で提供されるサプリメント「mdFood」も揃えており、昨年からクリニックに理論の普及と共に流通が開始された。徐々にではあるが採用する施設は増えているという。
もちろんクリニックには、医師が処方するサプリメントだけが流通しているわけではない。
JSCAM日本臨床抗老化医学会で唯一の検定マークを取得するピーエスのコラーゲンサプリンメント「DACC-01」は、医療機関でとりわけ認知が進むブランドで、評価は高い。
また、歯科医院で使われるサプリメントを供給する会社も増えており、CICフロンティア、トレードピア(製品の概要は本紙既報)から発売される「歯周病」対応の製品には、施設からの注目が高い。この種の製品に今まで欠けていたエビデンスが揃っていることがその要因である。
ビタミン、ミネラルなどベースサプリメント以外で美容、アンチエイジングに受け入れやすい素材は、プラセンタ、ヒアルロン酸、コラーゲン、さらに抗酸化活性をもつ機能性素材などである。比較的、認知が高く美容効果としても訴求できる内容成分が多い。今後、第2、第3の有力素材が生まれてくることを期待したい。
いずれにしても、サプリメント外来の利点は、患者からクリニックが信頼されれば後はリピーターとなり受付の対応だけでコンスタントに物販が進むこと。治療単価が下がる傾向にある最近では、クリニックの物販収入は決してバカにできない。


新たな歯科診療の「業態転換」をはかる時代

歯科経営が苦しいと言われる。審美歯科そしてインプラントなど今や競合の時代に突入し、価格破壊さえ起っているようだ。
しかし点滴、血液オゾン、サプリメント外来などの新たな歯科治療としての付加価値を見出しているところもある。
一方、一昨年後半歯科医に向けて投げかけられてきた、ヒアルロン酸による口唇周辺の治療は、歯科治療が要因となるシワなどであっても、口唇外側は医科の範囲とする見解が一部の医療分野から出され、治療範囲を巡っては議論が絶えない。
しかし前号16面でも紹介したように、歯科クリニックが新たに美容医療を併設すれば全く問題ない。
いま、こうした「医科・歯科」連携の動きが活発化している。
また、エステを導入するデンタルクリニックもあらわれてきたことから、現状の保険診療だけでは到底その経営が成り立たない歯科診療にとって、新たな歯科診療の「業態転換」をはかる時代になった。


次号の(下‐No.2)では、美容医療、メディカルエステにおける治療、診療、施術内容を具体的に紹介しながら、クリニックそして歯科、さらにはメディカルエステを標ぼうする施設が患者を獲得していくためのヒントを投げかける。


(JHM99号より)
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