アンチエイジング研究成果 [JHM]
[ 2011/4/15 ]
第３回 グルコサミンは変形性膝関節症の軟骨損傷を軽減しない
摂取期間や評価法など問題
既報の科学的根拠を覆すものではない
学術論文、研究報告にはさまざまな研究者の視点と多くの識者の考察が欠かせない。時には、その研究課題が純粋な探求目的から逸脱し、あらかじめ想定される何らかの意図的な仮説に符号するような結論を導き出す大規模試験もあるようだ。アンチエイジングや補完代替医療、さらには美容医療における研究発表、報告ではそうしたことがあってはならない。シリーズ3回目では、グルコサミンの変形性膝関節症における軟骨損傷の悪化防止に対する効果への評価について研究レポートを検証する。
【著者】
Kent Kwoh その他.
【報告】
American College of Rheumatology (ACR) 年次科学会議・ 2009年10 月20 日
【試験の目的】
グルコサミンの変形性膝関節症における軟骨損傷の悪化防止に対する効果の評価。
【摂取期間・方法】
24 週間・塩酸グルコサミン含有飲料を、１日１回、1500mg 摂取。無作為対照比較試験による。
①塩酸グルコサミン含有飲料：98 名
② プラセボ飲料：103 名（膝に軽度から中程度の痛みがある集団）で行う。
【試験結果】
軟骨の痛みや骨の損傷は 2 群間で同等であり、臨床的徴候で有意な差は認められなかった。
【反論: IADSA ＊（2）科学グループ アラート・サービス（ISAS）】
今回の研究発表はグルコサミンの24 週間摂取では変形性膝関節症の構造的悪化を軽減しないという結果であった。 一方、グルコサミンが関節に有効であるとする研究は、総体的にみて数多くある。また、世界骨関節症会議（The OsteoArthritis Research Society
International: OARSI）は、「グルコサミンは骨関節症の痛みの緩和の治療におけるひとつの選択肢として推奨している」との声明を発表している。
グルコサミンは、軟骨組織に不可欠な生体内構成成分であり、関節の衝撃緩和の役割を果たしている。変形性膝関節症の患者に硫酸グルコサミンを経口投与後、グルコサミンが関節及び全身に分布して活性を示すという明確な科学的根拠もある。
この研究の、膝軟骨関節損傷の進行を遅らせることはないという主張に対して、数件のコメントが提出されている。
それによると、 健康食品で軟骨損傷の軽減による組織的な利点をみるには、24 週間以上の摂取期間が必要である。また、関節の筋肉の状態や可動性などの機能的側面も、研究上、重要な指標として同等に評価・検討するべきである。
さらに、 毎日1 回1500mg という多量摂取が、1 回の摂取量は少なくても1 日に2 回、3 回と分けて摂取した群に比べてより良い摂取方法になるとは限らないのではないか。
従って、この研究結果は、既報の研究結果から今まで蓄積されてきた科学的証拠を覆すものではなく、グルコサミンが関節機能の補助食品として摂取されてきたことを否定するものではな
い。
【出典】
1 Zhang W et al. OARSI recommendations for the management of hip and knee
osteoarthritis, Part II: OARSI evidence-based, expert consensus
guidelines.
Osteoarthritis and Cartilage 2008; 16: 137 . 162
2 Yoshimura M et al. Evaluation of the effect of glucosamine administration on
biomarkers for cartilage and bone metabolism in soccer players. Int J Mol Med. 2009;
24(4): 487-94
3 Petersen SG et al. Glucosamine but not ibuprofen alters cartilage turnover in
osteoarthritis patients in response to physical training. Osteoarthritis Cartilage. 2009
Jul 15. [Epub ahead of print]
4 Scarpellini M et al. Biomarkers, type II collagen, glucosamine and chondroitin
sulfate in osteoarthritis follow-up: the "Magenta osteoarthritis study". J Orthop
Traumatol. 2008; 9(2): 81-7
5 Lee YH et al. Effect of glucosamine or chondroitin sulfate on the osteoarthritis
progression: a meta-analysis. Rheumatol Int. 2009 Jun 21. [Epub ahead of print]
6 Persiani S et al. Synovial and plasma glucosamine concentrations in osteoarthritic
patients following oral crystalline glucosamine sulphate at therapeutic dose.
Osteoarthritis Cartilage. 2007 Jul; 15(7): 764 -72
＊（２）IADSA：健康補助食品業界団体国際連合会の略称で、世界の栄養行政や制度の決定に、多大な影響をもつRegulatryscienceを求めていく団体である。
（JHM98号より）
摂取期間や評価法など問題
既報の科学的根拠を覆すものではない
学術論文、研究報告にはさまざまな研究者の視点と多くの識者の考察が欠かせない。時には、その研究課題が純粋な探求目的から逸脱し、あらかじめ想定される何らかの意図的な仮説に符号するような結論を導き出す大規模試験もあるようだ。アンチエイジングや補完代替医療、さらには美容医療における研究発表、報告ではそうしたことがあってはならない。シリーズ3回目では、グルコサミンの変形性膝関節症における軟骨損傷の悪化防止に対する効果への評価について研究レポートを検証する。
【著者】
Kent Kwoh その他.
【報告】
American College of Rheumatology (ACR) 年次科学会議・ 2009年10 月20 日
【試験の目的】
グルコサミンの変形性膝関節症における軟骨損傷の悪化防止に対する効果の評価。
【摂取期間・方法】
24 週間・塩酸グルコサミン含有飲料を、１日１回、1500mg 摂取。無作為対照比較試験による。
①塩酸グルコサミン含有飲料：98 名
② プラセボ飲料：103 名（膝に軽度から中程度の痛みがある集団）で行う。
【試験結果】
軟骨の痛みや骨の損傷は 2 群間で同等であり、臨床的徴候で有意な差は認められなかった。
【反論: IADSA ＊（2）科学グループ アラート・サービス（ISAS）】
今回の研究発表はグルコサミンの24 週間摂取では変形性膝関節症の構造的悪化を軽減しないという結果であった。 一方、グルコサミンが関節に有効であるとする研究は、総体的にみて数多くある。また、世界骨関節症会議（The OsteoArthritis Research Society
International: OARSI）は、「グルコサミンは骨関節症の痛みの緩和の治療におけるひとつの選択肢として推奨している」との声明を発表している。
グルコサミンは、軟骨組織に不可欠な生体内構成成分であり、関節の衝撃緩和の役割を果たしている。変形性膝関節症の患者に硫酸グルコサミンを経口投与後、グルコサミンが関節及び全身に分布して活性を示すという明確な科学的根拠もある。
この研究の、膝軟骨関節損傷の進行を遅らせることはないという主張に対して、数件のコメントが提出されている。
それによると、 健康食品で軟骨損傷の軽減による組織的な利点をみるには、24 週間以上の摂取期間が必要である。また、関節の筋肉の状態や可動性などの機能的側面も、研究上、重要な指標として同等に評価・検討するべきである。
さらに、 毎日1 回1500mg という多量摂取が、1 回の摂取量は少なくても1 日に2 回、3 回と分けて摂取した群に比べてより良い摂取方法になるとは限らないのではないか。
従って、この研究結果は、既報の研究結果から今まで蓄積されてきた科学的証拠を覆すものではなく、グルコサミンが関節機能の補助食品として摂取されてきたことを否定するものではな
い。
【出典】
1 Zhang W et al. OARSI recommendations for the management of hip and knee
osteoarthritis, Part II: OARSI evidence-based, expert consensus
guidelines.
Osteoarthritis and Cartilage 2008; 16: 137 . 162
2 Yoshimura M et al. Evaluation of the effect of glucosamine administration on
biomarkers for cartilage and bone metabolism in soccer players. Int J Mol Med. 2009;
24(4): 487-94
3 Petersen SG et al. Glucosamine but not ibuprofen alters cartilage turnover in
osteoarthritis patients in response to physical training. Osteoarthritis Cartilage. 2009
Jul 15. [Epub ahead of print]
4 Scarpellini M et al. Biomarkers, type II collagen, glucosamine and chondroitin
sulfate in osteoarthritis follow-up: the "Magenta osteoarthritis study". J Orthop
Traumatol. 2008; 9(2): 81-7
5 Lee YH et al. Effect of glucosamine or chondroitin sulfate on the osteoarthritis
progression: a meta-analysis. Rheumatol Int. 2009 Jun 21. [Epub ahead of print]
6 Persiani S et al. Synovial and plasma glucosamine concentrations in osteoarthritic
patients following oral crystalline glucosamine sulphate at therapeutic dose.
Osteoarthritis Cartilage. 2007 Jul; 15(7): 764 -72
＊（２）IADSA：健康補助食品業界団体国際連合会の略称で、世界の栄養行政や制度の決定に、多大な影響をもつRegulatryscienceを求めていく団体である。
（JHM98号より）