医科・歯科の連携強まる [JHM]
[ 2011/4/11 ]
デンタルクリニックに美容医療の併設の動きが顕著に
先ごろ行われたJAAS日本アンチエイジング外科・美容再生研究会主催による、「歯科医のための美容医療併設とメディカルエステ術の導入」セミナーが高い関心を呼んだ。経営改善の方策を現役の歯科医の立場から投げかけた小出DDS、そして美容皮膚診療部門をデンタルクリニックに併設した横浜ルミーナクリニックの原DDSと、増患・自費診療のUPを図るための興味深い提案と事例が示された。10万を超える歯科医のうち実に開業する歯科クリニックは6万軒以上と、医師に比べてその開業率は圧倒的に高い。しかしその経営は決して楽ではない。背景には、診療報酬のマイナス改定、レセプトの審査強化そして高点数指導の導入など現行の保険制度がもたらす厳しい経営環境が横たわる。もはや旧来のやり方では通用しない歯科診療の現実がある。こうしたなか、医科歯科連携のモデルケースとして明らかにされたルミーナクリニックの取り組みは、多くの歯科医が参考にできる「歯科業態の転換」をはかるヒントだと言えよう。そして今、さらに一歩踏み込んだ医科・歯科提携のモデルクリニックが大阪に誕生した。
本紙94号の1面トップで報じた、阪大(医)形成外科大学院・美容医療講座の高田 章好教授の掲載記事をご記憶であろうか?
国立大学の医学系としては数少ない美容医療の専門講座を設け、医学生に教鞭をとる傍ら、阪大附属病院で美容相談などのセカンドオピニオン外来をこなす。来院患者に対して美容医療の正しい情報や、美容整形など民間クリニックを受診した患者に対するアフターケア、そして場合によってはクリニック選びの第3者機関としてもこの外来が機能している。
しかし民業圧迫のための大学の専門講座では決してない。事実、高田教授自ら民間クリニックに対して治療の技術指導や顧問医師として尽力している。形成の専門医として先天奇形の再建術や、顔面神経が走る耳下腺腫瘍、眼下底骨折など極めて難しいオペを大阪警察病院などで経験を積んだ後、民間の美容整形クリニックに迎え入れられた。豊胸術はじめおよそ考えられる美容医療の「技」は、そのレベルからしても国内でも数少ない美容医療のスペシャリストと評価は高い。
大阪 尾崎クリニック
阪大・高田教授を形成美容外科分門の顧問医師に迎える
そんな高田教授が、昨年今までにない経営スタイルを持つクリニックから顧問医師として招聘された。デンタルクリニックに内科診療を併設していた尾崎クリニックである。大阪の中心街(中央区備後町)で一般内科はもちろん、周辺の大手企業などから特定健診や胃・食道などの癌診断のための内視鏡検査など行う。そしてもう一つの診療科目が美容形成外科で、高田医師をその担当医として迎い入れた。
歯科クリニックが、内科、美容形成を併設したまさに歯科・医科連携の究極のモデルクリニックである。クリニック理事長の尾崎 雅征歯科医とは、内科医の野呂MDそして高田MD共に、大阪警察病院時代の同僚ということもあり、かねてからこの併設プランが話し合われてきたという。
「何も時流に乗って、こうしたクリニックを始めたわけではありません」と尾崎院長。
もともとデンタルインプラントの手術を行う中で、より安全で確実なオペを行うために高田教授や脳外科医らに術中の全身管理を手伝ってもらっていたことが事の発端だったという。またインプラントの治療は自ずと年齢が高い人が多く受診する。80歳を超える患者もめずらしくない。そんな人たちは骨移植をするケースも少なくないため、形成の専門医としての高田医師の力が必要となった。
尾崎院長
一方で尾崎院長が恩師として尊敬する河村洋二郎阪大名誉教授の学説「口は大切な臓器、だからこそ歯科であっても身体全体を見ていかなければならない」とする口腔生理学を学び、自らの治療学に取り入れてきたことから、加齢に伴い歯科口腔の疾病は身体全体としての疾患と関わりをもち、その診療にはQOLの向上が重要だと考えていた。
口元からの若返りだけではQOLは上げられない。同時に顔面のアンチエイジングが不可欠だと痛感する。これが、高田教授本来の科目である美容形成外科部門を開設するはじまりだったという。
当初、『月1回程度の応援で』、と任された美容形成の診療は現在、隔週に1回となっているが早晩、その評判の良さからコンスタントに予約は埋まるとクリニックでは自信をみせる。クリニック全体でおよそ100坪と都心ではめずらしい広さで、各診療の導線や患者のプライベートを重視してそれぞれの部屋割は機能的に配置される。部屋数は優に10部屋を超す。美容形成のメニューには、低侵襲のフィラー注入、ボトックス、しみ、しわ、毛穴治療のための治療や美容内科としてのにんにく注射、IVC点滴などがあるが、もちろん高田教授の“真骨頂”ともいうべき眼瞼、鼻、フェイスリフトなどの美容形成術を用意していることは言うまでもない。
背景にはUCLA仕込みのインプラント治療で、すでに「チーム医療」を実施
医科歯科の連携は、先に述べたように尾崎院長自身が行うインプラント治療に対する需要もまた加速度的に高めている。今でも世界のスタンダードから5年、10年は遅れていると言われる日本のデンタルインプラントの技術にいち早く目を向け、91年アメリカUCLA歯学部インプラントセンターに単身足を運び、その技術が世界的にも認められるPeterK.Moy教授直伝の治療法を学んだ経験をもつ。日本にないインプラントロジーという学問としても確立されるアメリカでの修行が尾崎院長を驚愕させ、一方でUCLではたとえば皮膚がんなどに形成、口腔外科などが「チーム医療」としてその疾患に向き合っていることにカルチャーショックを覚えたという。まさに身をもって、医科歯科連携の必要性をその当時から感じていた。
尾崎院長のインプラント治療の技術力と、高田医師の類まれな形成美容術のテクニックが、患者からの評価と双方向からの需要を生むことは間違いない。
(JHM98号より)