JAASアカデミー
TEL
お問い合わせ
一般社団法人 JAAS日本アンチエイジング外科学会

JAASアカデミー

一般社団法人 JAAS日本アンチエイジング外科学会

TEL

お問い合わせ

第2回マルチビタミンの日常摂取で乳がん発症を19%増加 [JHM]

[ 2011/1/5 ]
学術論文、研究報告にはさまざまな研究者の視点と多くの識者の考察が欠かせない。時には、その研究課題が純粋な探求目的から逸脱し、あらかじめ想定される何らかの意図的な仮説に符号するような結論を導き出す大規模試験もあるようだ。アンチエイジングや補完代替医療、さらには美容医療における研究発表、報告ではそうしたことがあってはならない。本稿では、AIFN*(1)の協力を得て、この研究分野に焦点をあて最新のレポートに対する真摯な議論の場として研究主題に対するコメントを取り上げていく。第2回目は、マルチビタミン摂取と乳がん発症の研究報告がテーマとなる。

摂取による乳がん発症の直接的な原因は証明できず

自己記入質問票は不正確な情報の解析になる

7万人のフォローアップ追跡試験WHI(The Women’s Health Initiative)など多くの大規模試験で、相関は示されていない



【研究報告】
 マルチビタミンの日常的な摂取は乳がん発症を19%増加

【著者】
 Larsson SC, Akesson A, Bergkvist L, Wolk A

【掲載誌】
Am J Clin Nutr. 2010 March

【研究報告の要旨】
マルチビタミン剤と乳がん発症率に関してスウェーデン女性を対象にした予知的 (前向き)コホート研究 において、35,329名のスウェーデン女性を対象にしたマルチビタミン剤摂取と乳がん発症の関係を調査したところ、予知的観察研究(the Swedish Mammography Cohort)、マルチビタミン剤摂取およびその他の乳がんリスク因子に関するデータが、質問票への自己記入方式で集積された。
これらのデータを解析した結果、平均9.5年のフォローアップ期間中に、マルチビタミン剤摂取によって乳がん発症が統計学的に有意な19%の増加を示した。乳がんの多変量相対リスクでは、乳がんのホルモン受容体状態別での有意な差はなかった。

【反論: ADSA *(2)科学グループ アラート・サービス(ISAS)】:
既報の他の大規模研究では、マルチビタミン剤の日常的摂取とガン発症の増加を示す報告はない。
68,132名の女性を対象にした中間期間として8年のフォローアップ研究であるWHI(The Women’s Health Initiative)iは、マルチビタミン剤摂取とがん発症リスクの間に多変量調整解析手法では相関性を示していない。2009年に発表された集団を対象にした症例対照研究でもマルチビタミン剤摂取と乳がん発症リスクとの間に相関を示していない。
また、37,920名の米国女性を対象にした平均10年の米国におけるフォローアップ研究の結果でも同様の結果を示した。
著者によると、マルチビタミン剤摂取が乳がん発症の増加原因であることは証明されていない。すなわち、研究によっては、いくつかの制限要因があり、摂取されたマルチビタミン剤の種類に関する詳細な情報は不明である。
また、マルチビタミン剤情報に関するデータを得るための自己記入質問票を使うことは、不正確な情報による解析の原因となりバイアスを起こしやすい。
不健康な生活習慣や個人的素因など、女性で増加するがんリスクに影響するような多様な因子の組み合わせがあることが推定される。
読者は、 個人個人でリスクは小さく、マルチビタミン剤を摂取している女性の大部分は、がんを発症していないという研究者が強調した点を、認識しておくべきである。
マルチビタミン剤は、栄養バランスが悪い現代の日々の食事を補完できるものである。実証された科学の観点から言えば、健康的な生活習慣と食事を基本に、各栄養素(ビタミン)の安全な上限量以下の摂取量でマルチビタミン剤摂取は継続されるべきである。


【出典】
 Neuhouser ML, Wassertheil-smoller S, Thompson C, et al. Multivitamin use and risk of cancer and cardiovascular disease in the Women’s Health Initiative cohorts. Archives of Internal Medicine 2009;169:294-304.
Meulepas JM, Newcomb PA , Burnett-Hartman AN, et al. Multivitamin supplement use and risk of invasive breast cancer. Public Health Nutrition 2009; Dec.3:1-6.
 Isitani 

 *(1)AIFN:消費者に対して栄養補助食品の正しい知識と科学的根拠を発信する団体で、国内外の企業が加盟する。
*(2)IADSA:健康補助食品業界団体国際連合会の略称で、世界の栄養行政や制度の決定に、多大な影響をもつRegulatryscienceを求めていく団体である。
3. 不健康な生活習慣や個人的素因など、女性で増加するがんリスクに影響するような多様な因子の組み合わせがあることが推定される。
4. 読者は、 個人個人でリスクは小さく、マルチビタミン剤を摂取している女性の大部分は、がんを発症していないという研究者が強調した点を、認識しておくべきである。
5.マルチビタミン剤は、栄養バランスが悪い現代の日々の食事を補完できるものである。実証された科学の観点から言えば、健康的な生活習慣と食事を基本に、各栄養素(ビタミン)の安全な上限量以下の摂取量でマルチビタミン剤摂取は継続されるべきである。
2010年4月15日
i Neuhouser ML, Wassertheil-smoller S, Thompson C, et al. Multivitamin use and risk of cancer and cardiovascular disease in the Women’s Health Initiative cohorts. Archives of Internal Medicine 2009;169:294-304.
ii Meulepas JM, Newcomb PA , Burnett-Hartman AN, et al. Multivitamin supplement use and risk of invasive breast cancer. Public Health Nutrition 2009; Dec.3:1-6.
iii Isitani 



(JHM97号より)
Copyright (C) JAAS ACADEMY. All rights reserved.