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韓国、歯科治療の範囲広がる [JHM]

[ 2010/4/8 ]

ホワイトニング治療で導入したフラクショナル・レーザー「sellas・evo」は、今やフェイシャル治療にも使われている(デモンストレーションのため、ゴーグルはあえてかけていない)

昨年来、歯科口腔における新たなアンチエイジング治療術に歯科医から高い関心が寄せられている。きっかけは、こいで歯科医院の小出 一久DDSからの「歯科領域からのフィラー注入」の投げかけだった。いわゆる口唇周辺のしわに対するヒアルロン酸注入を、歯科医の裁量権の範囲で治療が可能とする解釈である。JSCAM日本臨床抗老化医学会で講習会そして年次学術総会あわせ、すでに5回に及ぶ講演と実技指導が行なわれ、同医学会に数多くの歯科医が入会した。こうした中、本紙取材班はお隣、韓国の歯科した事情を探るため先ごろ、ソウルに飛んだ。そこで出会ったある歯科医からは、歯科診療が美容皮膚にまで治療範囲を広げる動きが加速しているという新たな事実がわかった。その治療範囲は口唇周辺に限らずフルフェイスにまで及び、200名ほどの会員数を要する歯科医の集りが数団体できていることも明らかになった。


「歯学部では医科と同じ解剖学の講義、実習に重点をおいたカリキュラムがあり、とくに顔の解剖の知識と実技は医師の経験とほとんど遜色はない」
こう強調するのは、ソウル郊外に開業するNewyork Deantal Clinicの李(Seong-HeonLee)歯科医である。診療における非保険(自費診療)の比率はわずか5%。インプラントを中心にほぼ100%を自由診療に依存する歯科医院だ。そして、何よりここNewyork Dental Clinicが特徴的なのは、スキンレジュビネーション、フェイシャルサージェリーを歯科診療に来院する患者に積極的に施す点だろう。



院内にかかるヒアルロン酸注入の看板。
RECEPTIONの周辺にはボトックス、PRP、レーザーなど歯科クリニックとは思えない院内掲示が至る所にある



ヒアルロン酸やボトックス、PRPそしてフォト、レーザーを使った美容皮膚の治療というから驚く。歯科用のYagレーザーでホクロとりをしたり、韓国で人気のあるフラクショナル・レーザー「sellas・evo」を使って皮膚の若返りを行なったりと、もはやその治療範囲は美容整形・皮膚科の領域にまで及んでいる。

李DDS、フラクショナルレーザーを導入した背景には当初、審美歯科としてのホワイトニングが目的だったというが、歯科部門でこうした高額の機械を入れる以上「何か他の使い道がないか?」と考え、歯科治療できれいになった患者のために、フェイシャルまでやるようになったという。

そもそも美容皮膚で使われるようになったPRP自体、すでに歯科ではインプラント治療後に歯肉への注入法として多用されており、日本でもこの手技は変わらない。また、歯槽膿漏の治療にビタミン注射などを日常的に行なっていることも、日本と同じだ。

しかし口唇周辺をこえ、韓国の歯科医は全顔に対する皮膚治療を行なっていることから、日本の歯科治療範囲の解釈を明らかに飛び越えている。韓国でもこうした歯科医の治療に対して、医科からの軋轢はあるとするものの、李先生のみならずいくつかの「美容皮膚・歯科診療術」を実践する歯科医同士の集り、研究会、団体ができつつあるという。

李先生のグループには200名の歯科医が参加して、「顎顔美容・歯科研究会Maxillo Facial Aesthetic Surgery 」という集まりをつくる。定期的に、症例報告会や後継の育成を目的にTrainingを行なっているようだ。

「我々韓国そして日本の歯科医が同じように、歯科診療の未来のために活動していくことは意義のあることです。共に医学会、研究会として交流を深めていきたい」と、日本のアンチエイジング歯科の活動に賛同のエールをもらった。

【日本における歯科口腔外科の診療領域に対する解釈】
小出DDSの講演から抜粋した治療範囲の解釈によれば、平成8年(当時 厚生省)の「歯科口腔外科に関する検討会」の議事内容での結論に従っている。

検討会は、歯科において標榜科目として歯科口腔外科を設置するにあたり、その診療範囲を歯科、医科との協力関係をどのようにしていくかが議題となったが、議論の過程で医科の委員から口唇に関しては歯科の診療範囲であるという見解がだされ、最終的に口唇は歯科治療の範囲とする結論に至った。

ただ、口腔における診療の対象はあくまで歯科治療が要因となることが前提として、小出DDSは、加齢に伴うシワと、歯科治療によって変化に伴いできたシワとは一線を画している。

なお、口唇とは、上方は鼻底、側方は鼻唇溝、下方はオトガイ唇溝までをその範囲としている。解釈上、口唇がいわゆる赤唇に限定しているわけではない。



(JHM92号より)
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