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グルタチオン米国でGRAS取得 [JHM]

[ 2010/3/12 ]
グルタチオン、生体内抗酸化物質であり、日本では医薬品、米国ではサプリメントとして流通している。日本でも数年前より、食薬区分の変更により、サプリメントとして使用されるようになることが期待されている物質だ。このグルタチオンが、米国では一般的な食品、菓子や飲料などに使える物質としての承認、GRASを取得し、一般食品原料として使用することが出来るようになった。


GRAS=Generally Recognized As Safeとは、すなわち食品及び飲料として用いる上で、一般に安全と認められるものとして、米国の厚生労働省にあたるFDAが食品素材について定める安全基準だ。

今回、承認を受けたのは、日本の興人が製造する食用酵母を出発原料として製造されたグルタチオン。同じグルタチオンでも、出発原料や製造方法が違う場合、GRAS承認には、改めて申請が必要になる。

同社は日本国内にも同様の酵母から抽出した酵母エキスを流通するが、日本ではグルタチオンの含有量は15%にとどめている。

一方で、米国で承認されたグルタチオンは医薬品原料に近いものだ。日本国内でも、興人はグルタチオンの医薬品原料を製造している。また、同社のグルタチオンは近年、美白効果のある素材として、飲料や化粧品として、タイやフィリピンなどで、ブームとなっている。

話しをGRASに戻そう。GRAS承認とは、米国の政府機関が、食品素材として安全ですよ、というお墨付きを与えるものだ。ここで重視されるのは、動物毒性試験、変異原性試験、薬物動態試験、アレルギー反応試験など、安全性のデータだ。

実は今回のGRAS承認に対して、興人は新たな安全性試験を行なったわけではない。グルタチオンについて、これらの安全性試験は、医薬品原料として、十分すぎるほどに準備されている他、世界的にも文献資料が整っている。

一例を挙げれば、急性毒性試験としてよく知られる半数致死量LD50という試験がある。投与したマウスの50%が致死する投与量を示すデータだが、体重1kgあたり2gを超えると国際的には測定範囲外の安全なものといわれているが、グルタチオンのLD50 は5g以上といわれている。体重60kgのヒトでいえば摂取量は300gとなる。サプリメントや錠剤で300gの摂取を行なうのは、不可能に近いことが、理解できるであろう。

米国ではすでにサプリメントとして、年間10数トンが消費されているといわれているが、米国でのGRAS承認を受けて、日本でも近い将来グルタチオンがサプリメント素材(=食品として)流通が可能となることが、期待される。

日本の健康食品業界では、CoQ10、L-カルニチン、α‐リポ酸などに続く、OTCサプリメントとして、グルタチオン待望論があり、その一方で、日本で食薬区分の変更が、理由は不明だが不当に引き伸ばされていると感じるきらいもある。先述したように、グルタチオンの安全性は、現在流通しているサプリメントの中でも高いにも関わらず。

ここで生体内でのグルタチオンの役割について、おさらいしてみる。その役割は主に2つ。抗酸化と解毒だ。
グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンがペプチド結合したトリペプチドで、生体内で合成される生体内物質だ。もともと生体内にあるが故に安全な物質ともいえる。

そしてグルタチオンの機能、抗酸化と解毒共に大きな役割を担っているのが、システインの持つチオール基だ。グルタミン酸とグリシンに比べ、システインは体内で欠乏しやすいアミノ酸で、単独でも酸化され、シスチンに変化してしまう。その為、安定的なシステインおよび細胞内チオールの供給源として、グルタチオンが必要なのだ。

しかし、日本において、グルタチオンは既に安価な医薬品として、アンチエイジング医療に用いることが出来るので、サプリメントとして認められる必要は無い、とお考えの読者もいるかもしれない。すでに点滴までも行なわれている。

しかし、実はアンチエイジング医療にとっても、大きな意味があると本紙は考える。考えてみてほしい、点滴療法研究会は、高濃度ビタミンC点滴と共に、マイヤーズカクテルやEDTA、グルタチオン点滴など、様々な点滴の手法を広めてきた。その中で、最も話題となったのは、高濃度ビタミンC点滴であることに異論のある方は少ないのではないだろうか。

これには高濃度ビタミンC点滴ががん治療に使えるなどの側面があるかもしれないが、他の点滴に加え、ビタミンCという名称の認知度があるのではないだろうか?

話をサプリメントに戻すと、現在サプリメント業界は、空前の不況であるが、その中に売り上げの落ちていない商品群がある。それがコラーゲン飲料だ。コラーゲンという名称が美容と結びついて、健康食品全体が売り上げを大きく減少させている中、好調の売り上げを維持している。

現在の日本で、グルタチオンは医薬品であるため、広報の手段が限られるが、食品やサプリメントとして認められれば、その名称の広告宣伝は活発に行なわれるはずだ。そうすれば、消費者でのグルタチオンの名称は定着し、クリニックでも、グルタチオンは恐ろしい医薬品ではなくなる。グルタチオンという名称だけで、説明の必要の無いものとなり、体に良いものなんだろうな、と消費者は勝手にイメージを膨らませてくれる。そうなれば、ビタミンC点滴に加え、グルタチオン点滴も盛んに行なわれるようになることは必須だ。

抗酸化と解毒は、アンチエイジング医療にとって、大きなテーマであることは間違いない。その両方に効果が期待でき、入手も容易なグルタチオンは、日本のアンチエイジングクリニックにおいて、もっと見直されてもよい素材といえる。



(JHM91号より)
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