クローズアップ医療②
アンチエイジングは複雑な検査に基づく診断・治療が必要
2007年はアンチエイジングにとって飛躍の年であったと言える。
TVメディアではこれまでのようなバラエティ的な扱いのアンチエイジングではなく、報道番組に取り上げられ、実際行なわれているアンチエイジングとは決して一般消費者が手の届かないものや絵空事ではないということが認知され始めた。テレビによって認知度が高まっただけではなく、2008年4月からの特定健診・保健指導制度の準備期間としても、試行錯誤が繰り返された年であった。
健診や保健指導だけではビジネスチャンスとしてそれほど大きくはならないと以前予想したことがあるが、今回の健診・指導の肝であるメタボリックシンドロームを“病気”として捉えるか、メタボになる前に“予防”として捉えるのかによって話は大きく変わってくる。“病気”として捉えてしまうと、医療費は年間5兆円上乗せされるとの予測もあり、健康保険を使えば医療制度自体が崩壊する恐れもある。一方、“予防”として捉えた場合、患者自身が自己責任でメタボ対応の動きもあるということから、消費者レベルの危機感を、アンチエイジングクリニックが的確にキャッチすることが2008年では重要になってくると思われる。
アンチエイジングを医療として捉えれば、検査・診断・治療という柱の中で、検査として大きく普及し始めたのが、遺伝子診断であろう。クリニックレベルでの遺伝子診断が定着し、既存の検査と組み合わされることで、より診断の精度を増していく、08年はそうした年になるといえる。
先日、自閉症児を持つ家族を対象に、医療法人 三廉会及び銀座サンエスペロ大森クリニックの大森隆史院長が講演を行なったが、大森MDが長年続けてきた毛髪ミネラル検査のデータに、尿中有機酸分析や遺伝子検査を組み合わせ、病態の原因がどこにあるのかを推測するという、デトックスのプロトコルが体系化されていた。
大森MDは仮説として、自閉症や健常人の不定愁訴の原因として有力視されている有害ミネラルが、細胞間の物質交換を行なうイオンチャンネルや合成酵素の阻害により、ATP合成を阻害しているとし、その考えの元となった数々のデータを示した。
そのため、クエン酸回路や電子伝達系のどこにトラブルがあるのかを有機酸分析により解析することで、適切なサプリメンテーションを行えるのだという。
さらにCOMTやMS、MTHFRなどの一塩基多型をみる遺伝子検査を加えることで、その診断をさらに補強する。
毛髪分析では分からなかった、毛髪中の有害ミネラル濃度と症状の重さの相関関係が、これらの検査が組み合わされることで、より鮮明になって行くのだという。
こうして診断されたトラブルに対して、大森MDは主にサプリメントを活用して対処しているが、医療用医薬品の適用外使用でもほぼ同様の効果が得られるのだという。
このプロトコルについては近日中にもJSCAM(日本臨床抗老化医学会)で講演していただく予定だ。
(JHM 第71号より)