豊胸手術を受けた患者の自殺率が3倍!?
昨年、米国では過去最高の美容外科手術数
この研究は、米テネシー州バンダービルト大のローレン・リップワース氏のチームが行なっており、1965年から1993年までの28年間に豊胸手術を受けた女性3527人を追跡調査し、その死因を調べたところ判明した結果である。
現在のところ豊胸手術と自殺の間の因果関係は解明されたわけではないが、リップワース氏らのチームは「豊胸手術を受けた女性の多くが心理的な病的状態を抱えていて、手術後も精神医学的な病的状態が改善されなかったためではないか」とコメントしている。同チームはこの研究結果をもとに、豊胸手術を行う医師に対して注意を促しているのだという。
元々、美容外科手術を受ける人は、若返りたい・よりキレイになりたいという人たちや、自分のコンプレックスを解消したいという人たちであろう。自殺してしまった人たちというのは、このコンプレックスを深く抱えた人なのではないだろうか。コンプレックスが、深いがゆえに、豊胸手術など、大きく変化する手段を用いているのかもしれない。
しかし、医療の提供者から見て美容外科手術が成功したにもかかわらず、患者自身のコンプレックスは解消していないということも、あるのではないだろうか。
美容外科手術はそうそう何度も行なうものではないため、医師との接点もそれだけ少ない。そのため、アフターケアを行なうにも難しいと言える。
しかし、化粧のでき一つで一日の気分が変わるほど、女性は外観の変化が内面に大きな影響を及ぼす。高齢者介護施設などで、お年寄りに化粧を施すなどの試みも、各所で行なわれているが、表情が明るくなったり、外交的になったりという内面の変化が報告されている。より大きな変化を及ぼす、外科手術であれば、その影響は押して知るべしであろう。
欧米だけでなく日本でも“自殺”は大きな問題となってきている。日本での自殺の現状として、警視庁の発表によると、2006年度は32155人が自ら命を絶ってしまっている。そのうち、男性は20000人を超えるなど、現在は男性のほうが圧倒的に多い。
美容だけでなく心のケアも一層求められる時代に
その一方で、昨今プチ整形の一般化など、これまで欧米と比較して、日本人はあまり重視していなかった外面的な美しさの比重が大きくなってきたようにも思える。
プチ整形で外面を手軽に美しくした世代が、中高年となったときに、今美容外科手術を受けている世代よりも手軽に豊胸などを行なうことも推測できよう。
米国では、外見的なアンチエイジングを求め、日本で言う団塊の世代であるベビーブーマーと、出産後に体型を出産前に戻したいと考える母親らが中心に美容外科が人気であり、昨年の美容外科手術数は過去最高の1100万件に達したのだという。その中でも豊胸手術が最も多かったというデータもある。日本でも団塊の世代を中心に、今まで以上の美容外科ブームが到来する可能性は高い。
しかしながら、今後は美容だけでなく心のケアも行なえるようなシステム構築が必要となってくるであろう。
患者のメンタル的な資質をカウンセリング時に捉え、アフターケアなどのサポートも万全な体制が、これからの美容医には求められるのではなかろうか。
(JHM 第67号より)