4年に1度の医学会総会盛況のうちに終わる
100年超の歴史上初、アンチエイジング企画
JSCAM協賛の公開プログラムも好評
医師だけでなく一般参加者にもアンチエイジングが浸透
先日、1週間にわたって、〃生命と医療の原点—いのち・ひと・夢〃をテーマにした、EXPO 2007第27回日本医学会総会が大阪で開かれた。4年に一度開催する日本医学界の"オリンピック"ともいえる、今回の大阪大会では、100年を超える歴史上、初めて「アンチエイジング企画展示・フォーラム」が医療関係者だけではなく、一般参加者にも開放されることになった。来場はすべて無料で、医療従事者はもちろん、製薬、機器、健康・美容関連に携わる人たちが大挙して、大阪に集まる一大イベントとなった。企画展示ホールには、若返り・アンチエイジングをテーマにした出品物が数多く出揃い、また同時進行で行われる協賛ステージプログラムでも最新の話題が、著名人などから投げかけられた。
とかく話題が集まった「アンチエイジング企画ホール」(ツイン21アトリウム・多目的ステージ)には、「目」「毛髪」「皮膚」「血管」「骨」「脳」など、からだの各部位とエイジング(加齢)の仕組みをテーマにしつつ、脳年齢テスト、骨密度、血管年齢、体力年齢などの測定機器などが並んだ。さらに、若返りに向けた美容、健康製品や施術、さらには「こころ」のリフレッシュ、リラクゼーションや笑いの効用を出す機器、住環境、インテリアなどユニークな企画コーナーが会場に設置された。
医学会の主流に、アンチエイジング医療(抗老化医療)をテーマとした企画が盛り込まれたのかについて、企画を統括したプロジェクトリーダー・森 啓 大阪市立大大学院教授(医学研究科・老年医学)は「医学部で教育するものにとって、老化は重要な視点であっても、アンチエイジング(抗老化)はそれほど身近なテーマではありませんでした。しかし、最近、社会にとって大きな関心事となり、医療現場を支える医療人の立場としても生死や疾患について、よりよいアンチエイジング医療・医学を考えることが大切だと思います。こうしたことから、この医学会総会で一般参加者の方々を交え共に考えていければと、企画を実効することになったわけです」ということからだという。
この企画展示と協賛ステージプログラムに参加をしたJSCAM(日本臨床抗老化医学会)をはじめ、メディカルトリニティー、川井ナチュラルヘルスアンチエイジングコンサルタンツ、サイエンスサプリ、ピーエス、レーベン製薬、SSI、科薬、ビービーラボラトリーズ、リヴェール、サンレックなどの出展社をまとめ、「JSCAMアンチエイジング・ゾーン」を会場で演出した。以外にも一般参加者の来場が多く、平日にも関わらず興味深くブースを見て回る姿が印象に残った。
また、ツイン21アトリウムで行なわれた無料の公開ステージプログラムの中では、JSCAM協賛の「臨床アンチエイジングと若返り社会をめざして」をテーマに、「臨床アンチエイジング学の実際」(JSCAM理事長 松山 淳医師)、「環境と自律神経制御:アロマ精油、食品や音楽とアンチメタボエイジング」(大阪大学名誉教授 永井 克也博士)、「効果的なアンチエイジングの対処法」(㈱SAWAKO 日比野 佐和子医師)の3題が講演された。平日の昼過ぎということもあり、アンチエイジング・抗老化に興味や関心を持った一般の参加者が、普段では中々聞くことの出来ない実践アンチエイジングの生の声が聞けた、貴重なセミナーであった。
それぞれの講演の要旨を解説すると、松山MDはいまや一人歩きをしつつある“アンチエイジング”という真の意味を一般参加者にも分かりやすく解説。アンチエイジング医学とは抗老化医学のことであり、積極的な予防医療であると説いた。また、「病気にならない」、「年をとらない」、「死なない」のアンチエイジング医学の3原則についての説明も行った。
続いての永井教授の講演では、「環境と自律神経制御」というテーマであった。健康維持のためにヒトは様々な生理的指標の恒常性、体内恒常性(ホメオスターシス)、を維持する仕組みを持ち、体内外の環境変化に対して、生存に必須な体温、血圧、血糖、などの体内環境を維持している。
ラットを用いての試験では、体内外の環境(照度、温度、音楽、匂い、食物など)刺激が自律神経系や内分泌系などの働きを介して体内環境に影響を与える仕組みに体内時計が関与することを示した。新島旭新潟大学名誉教授と共同で行ったこの研究で、筋肉で合成されるカルノシンが運動時に血中に放出され、交感神経を抑制して血糖や血圧を低下させる因子(運動がなぜ糖尿病や高血圧に良いのかを説明する因子)として機能することを明らかにした。
また、グレープフルーツ精油とラベンダー精油による匂い刺激は自律神経活動に相反的な影響を与えて、前者は脂肪分解、熱産生(エネルギー消費)、血糖や血圧などを上昇させ、食慾を抑制して体重を減少させること、後者は脂肪分解、熱産生(エネルギー消費)、血糖や血圧などを低下させ、食慾を促進して体重を増加させること、などを示す結果を得たということを話した。
最後の日比野 佐和子MDは「効果的なアンチエイジングの対処法」をテーマに、アジア、ヨーロッパ、アメリカといった世界のアンチエイジング医療の最新情報を交えながら、日本における今話題のプラセンタ療法や様々な抗酸化成分に関連する治療法、栄養補助食品や化粧品について、世界で活躍するエイジングケアの専門家、商品研究開発者として、また医師としての立場から、最も効果的なアンチエイジングの対処法についてわかりやすく話された。
冒頭に述べたように、医学会総会100年の歴史の中で初めて行なわれたアンチエイジング企画であったが、プロジェクトリーダーの森教授の思惑通り、医師だけでなく一般参加者にもアンチエイジングの役割や意義が分かってもらえたのではないだろうか?前回の福岡で行なわれた医学会総会では全くアンチエイジングの関心は無かったのだが、たった4年で目玉企画となるほどとなった。4年後は東京で行なわれる予定であるが、その時アンチエイジング医療はどれほどまで社会に浸透しているのだろうか?