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JHM Benefit & Risk

[ 2007/8/6 ]
 

 

世界は食品のリスクと有益性も同時に評価・討議する時代へ

 

安全性確保の制度づくりは歓迎、しかし食品中成分にはリスクと有用性が共存

 

EU食品安全委員会の科学者会議では、双方の定量、評価、分析を検討する

 

 

 

 

 NNFAジャパン専務理事

   末木 一夫

 

「健康食品」の安全性確保に関する制度づくりが加速されている。このことは消費者を品質等で問題のある「健康食品」による健康被害影響から保護するという観点から当然の事であろう。

他方、「健康食品」に比較して有害性が強い医薬品では、様々な点で制度が整備されている。もちろん、医薬品の場合は整備された制度があっても元来毒物的な特性を持つ物質成分が含有されている場合が多く、しかも、利用者はなんらかの疾病罹患者であることから健康被害の影響を含めた有害作用は頻繁に発生しているだろう。したがって、当然ながら市販後有害調査、報告制度、副作用被害者救済制度等が整備されている。

さて、以下に話を示すが、「健康食品」には多様な成分が単独かつ、あるいは複数配合されており、成分毎で安全性確保の最も基本となる規格整備度合いが多様であることは否定できないし、その特質上(天然物からの抽出物)規格設定が困難な場合もある。そこで、食経験なるものをキーワードにしてその評価の流れが考察されており、すでに欧米では実施されている。そこで、今年度中の策定を目指した錠剤、カプセル状等食品の原材料に関する自主点検フローチャート(厚生労働省が2005年に提案したが実際に運用されたケースはほとんどないというようである:現在調査中)の再整備および、このことに関連づけて大義名分を付した第3者認証制度の確立をすすめようとしている。

これらの動きにつき、冒頭に当然であると記したが、手放しで当然と考えている訳ではない。まず、こうした制度づくりに先立って、下記に示すような疑問が消費者的観点からでも自然とでてくる。

・「健康食品」とは?なぜ、法律で定義しないのか?

・本当に「健康食品」の必要な場面は?

・なぜ、ビタミン含有商品に「一般用医薬品」、「新医薬部外品」、「栄養機能食品」、「いわゆる健康食品」と多様な商品群が必要?あるビタミンが同量含有されている商品の中で、ある商品群は有効性表示が可能。さらにそれらは、異なった表示内容で33様である。他の商品群は有効性表示が不可。信じられなーい。通常人には理解不可能。

・「健康食品」を含む食品に使用できる原材料と医薬品にしか使用できない原材料のリストがあるが、どのようにして決めているのか?

・なぜ、食品添加物であることが「健康食品」の原材料に使用できる条件なのか?

・最良の疾病予防は日頃の生活習慣と食事習慣であると思うが、これすなわち食品あるいは食品中成分の適切な摂取量による。これらが適切に含有された商品が、なぜ疾病予防を説明できないのでしょうか(これだけは世界共通)?

・食品であれ、医薬品であれ、いつ、どれくらい、どのように摂取するというのはそれらの利用者が知らなければならない最低情報であるにもかかわらず、なぜ、「健康食品」は、これらのことを明記することが不可なのか?

さて、健康食品を含む食品には、ヒトの健康にたいして摂取量等の様々な要因によって良い場合と有害である場合が多くの場合に共存している。例えば、油分の多い魚を例にとってみよう。

魚および魚に含まれる多価不飽和脂肪酸、その内でもDHAEPAは血管系疾病発症等の疾病発症リスク低減に有益であるというデータの報告が増えると共にその消費量が世界的に増加しており、マグロ等の魚が不足気味になると共に価格も上昇気味である。 

一方、魚の中でも、特に油分の多い魚ではダイオキシンの蓄積。あるいはメチル水銀の蓄積問題が報告されている。   

この例はまさしくリスク・有益性を評価するに際して量的(推奨摂取量、安全量等)データが求められる。単純に体に良いあるいは悪いという判断だけでは、消費者はせっかくの機会を逃すことになることになる。同じ食品、食品群および/あるいは食品中成分であってもヒトの健康に対するリスクと有益性が共存しているということは、それらの成分の規格、ヒト体内での動態(吸収、分布、代謝、排泄)、推奨摂取量、上限量等が必要となってくる。

昨年開催されたEU食品安全委員会主催の科学者会議での討議事項を下記に示す。

1.どのようなヒトの健康に対するリスクと有益性が考えられるか?

2.どのようなヒトの健康に対するリスクと有益性が定量化されるべきか?

3.ヒトの健康に対するリスクと有益性を定量化するために、現在どのような手段/データをもっているか?

4.ヒトの健康に対するリスクと有益性を定量化するために、どのような手段/データが必要であるか?

5.どのような形のリスク /有益性分析が必要であるか?(系統的な定性的評価、半系統的な定量的評価、完全な定量的評価)

6.異なる地域集団に関してのリスク /有益性分析は必要か?

7.いつ、リスク /有益性分析を実行するのが有効であるか?

8.ヒトの健康に対するリスクと有益性を比較し測定するための共通尺度はどのようなものであるか?

9.リスク /有益性評価とリスク管理の間の境界線はどこであるか?

このように、世界は単なる食品によるリスクばかりを討議する時代は去り、有益性も同時に評価・討議する時代へとすすんでいる。

「健康食品」の定義ももちろん法律で公式にされている。さらに、これらの討議に関して知る限りにおいては、少なくとも欧米ではもっと公開で透明性のある場が設けられ議論が十分になされた後に、制度化へとすすんでいる。不透明な場(形だけは透明性があるが、そこまでの過程が不透明)における議論を基に作成された、つぎはぎだらけのやり方は、そろそろおしまいにしなければならないと思う。

主役は消費者である。恩恵を受けるのも影響を受けるのもまず、消費者である。それから、大・中・小の企業体である。それぞれの大きさのまじめな企業体が共存できる体制も必要である。行政が主役では決してないことは今後の我が国のあり方として常に念頭において置く必要がある。 

変わりつつある機関もでてきていることは歓迎される状況であるが、残念ながら健康行政においては???と感じている次第である。

 

 

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